北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる(貫成人著・角川文庫2019刊)」を読んだ。貫成人(ぬきしげと1956生れ)氏は、東大(哲学科)卒、同大学院(人文科学研究科)博士課程を単位取得退学し、埼玉大学助教授を経て、現在は専修大学(哲学科)教授である。日本哲学会編集委員などを務めると共に、一般向け哲学啓蒙書の著書多数。------
「大学4年間の哲学が10時間でざっと学べる」は、小難しい哲学の論考を超簡単に書き下している。有名哲学者1人に対して1ページで片付けており、ギリシャから現代哲学、東洋もインドも日本も全て一絡(ひとから)げに、縛り上げて有無を言わせずにそのエッセンスをピン刺しにして私たちの眼前に示してくれている。これまで日本の哲学者は西洋など外国の哲学の論旨をとても難しく誰も理解出来ない様な酷さで紹介されることが多かったようだが、貫成人氏はそれを幼稚園児に説明するかのように、とても卑近な事例を上げて説明してくれていて、哲学ってこんなに簡単なのかと思わせてくれる本となっているのだ。デカンショ(デカルト/カント/ショーペンハウエル)でも、現代哲学のサルトルやフッサールでも兎に角地べたに落とし込んで、読者の目線にまで下げまくって教えてくれているので、本当にそれで良いのかと心配にもなるくらいであるが、読めばわかった気になれる本である。これは流石に東大出のインテリの書いた本であるからこそ信頼できるのであると、文系学問の世界の構造を分からせてくれるのである。