奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その737)

2018-08-31 08:15:00 | 奈良・不比等
「工作員/西郷隆盛~謀略の幕末維新史(倉山満著・講談社α新書2017刊)」を読んだ。倉山満(くらやまみつる1973生れ)氏は、中央大学大学院(日本史学専攻)博士単位取得後、国士舘大学を経て、現在は倉山塾塾長とか、ネットチャンネルくららを主宰するなどし、執筆活動も旺盛に行っている。専門は憲政史の研究を中心として幅広い。-----
「工作員・西郷隆盛」は、NHK大河ドラマ”西郷(せご)どん”の放送に合わせて、出版されているその他多くの西郷隆盛本の一つではあるが、日本史の学者の目線で書かれた良質さが感じられ、中々に内容の充実した本であると思った。----
なぜ工作員としているかと云うと、最初はお庭番として島津斉彬や久光の下働きをして最終的には、倒幕勢力のトップテンを構成するメンバーの中に残ったと云う訳だそうである。-----
倉山満氏は西郷隆盛を嫌いではないようだが、明治維新を成立させたのは大久保利通の力も大きいと、学者らしい冷めた目で西郷隆盛ファンに睨みを利かす様な、事例を挙げて解説してくれている。丁度、キューバ革命のカストロとゲバラのように、カストロが大久保利通であり、ゲバラが西郷隆盛であるのだと明快な解釈を与えてくれている。-----
大村益次郎と西郷隆盛は合わなかったとか好き嫌いの話しにまで及んでいるので、歴史の裏を知ると理解しやすく面白い。兎に角、倉山満氏が知る限りの西郷隆盛の実像を余すことなく書いてくれているので、他の西郷隆盛本とは一線を画すレベルに仕上がっていると思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その736)

2018-08-30 08:15:00 | 奈良・不比等
「バカだけど日本のこと考えてみました(つるの剛士著・ベスト新書2018刊)」を読んだ。つるの剛士(つるのたけし1975生れ)氏は、ウルトラマンダイナのアスカ隊員役を演じたり、アルバム「つるのうた」「つるのおと」をヒットさせたり、芸能界にて活躍している。多趣味なようで、一時期イクメンを実際に行ったりしたこともあるとのこと。----
「バカだけど日本のこと考えてみました」は、40歳代に入ったつるの剛士氏が、常日頃考えていることを、素直にテーマとして取り上げて、優しく論じている。まるで自身の5人の子供さんに語りかけるかのように。-----
洗練されてはいないが、百田尚樹氏と同じ大阪育ち(高槻市で小6の途中まで)のつるの剛士氏は、感覚的に似ている部分が多そうであり、「バカだけど日本のこと考えてみました」は百田尚樹氏の「永遠の0」に通ずるものがあるのではと思った。-----
丁度団塊ジュニアの世代に当たるので、この世代が日本の進む方向を決めていくのだろうとも思った。そして、インテリではなくて庶民感覚の真ん中に居る人達の代表として、これからもつるの剛士氏には、発信を続けて貰いたいとも思った。例え炎上が終わらなくても。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その735)

2018-08-29 08:15:00 | 奈良・不比等
「逃げる力~つまらないストレスを安心して捨て去るための一冊、日本人には逃げる力が足りない(百田尚樹著・PHP新書2018刊)」を読んだ。百田尚樹(ひゃくたなおき1956生れ)氏は、同志社大学中退にて、TV局の番組制作の仕事をして来られたようだ。探偵ナイトスクープのメイン構成作家を務めていた。その後、“永遠の0(ゼロ)”にて作家デビューし今日に至る。-----
「逃げる力」は、百田尚樹氏の此れまでの生き方を開陳し、皆もそんなに思い詰めなくても人生は楽しくやれるのだと説いている。そして、堀江貴文氏の様な天才の言うことを信じるのは凡人には無理と云うものだが、百田尚樹氏自身のように世間の落ちこぼれであった者が云うことを聞くのも悪くは無いのであり、何かの拍子に世間に出られるのであるから、コツコツと小さなことを積み上げていけば良いと云う。-----
一見、右翼的な発言の多い方だと思ったが、そうではなくて、売れる本を書いて居られるのだなと思った。お父上が大阪市の水道局の臨時職員をして一生を務められた真面目な方なので、その子の百田尚樹氏は自分の主義主張で本を書いている訳ではないのであると、各処に書いて居られて本当にそうだと「逃げる力」を読んで思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その734)

2018-08-28 08:15:00 | 奈良・不比等
「地元の力を生かすご当地企業~ビッグデータで読み解く47都道府県(帝国データバンク&中村宏之共著・中公新書クラレ2018刊)」を読んだ。中村宏之(なかむらひろゆき1967生れ)氏は、慶應大学(経済)卒にて、読売新聞に入社している。調査畑を歩かれていて、帝国データバンクとは昵懇(じっこん)の中の様である。------
「地元の力を生かすご当地企業」は、丁度、小学校の社会科、中高の人文地理の教科書のようであり、地元調査の入口となる様な、可也大掴(おおづか)みな把握をするにはピッタリの本であるが、仕事に使うにはもっと詳細なデータが必要となるだろう。帝国データバンクはビッグデータの取り扱いも商業化しているようであり、企業の信用調査など明治の創業以来地道にその社業に勤(いそ)しんで来ている。-----
奈良県のページを見ると、漢方薬・売薬の地元産業から、靴下などの繊維産業と地理の産業のお勉強かと思うばかりである。一体この本が何の目的のために出版されたのか、読んでいて不審を抱いた。そして考え付いたのは、地方創生のヒントを得るために全国47都道府県を横並びにして、ビッグデータと称する近隣地域との流通の様子を表す地図などを示して、類型化を図ろうとしたものであるようだ。大学受験で地理を専攻した者ならば当たり前に知っている事ばかりだろうから、本棚の飾りくらいにはなるだろうが、必携必読の本ではない。然しながら荒井正吾・奈良県知事の様に、他府県のデータと比較して目標達成度を評価なさるような場合には、座右に置くと少しばかり安心できるかもしれないだろう。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その733)

2018-08-27 08:15:00 | 奈良・不比等
「町を住みこなす~超高齢社会の居場所づくり(大月敏雄著・岩波新書2017刊)」を読んだ。大月敏雄(おおつきとしお1967生れ)氏は、東大(建築学科)卒、同大学院博士単位取得後、横浜国大、東京理科大を経て、現在、東大教授である。専攻は建築計画学、ハウジングとのこと。卒論は“同潤会アパートの住みこなされ方(1991)”であったそうで、「町を住みこなす」のテーマをそのままをずっと続けて来られた稀有な教授であるようだ。-----
日本経済のバブル崩壊(1991~1993)以降、ニュータウン建設などの華々しい都市計画は沙汰止みとなって久しい。地方都市は閑散とし、大都市でもタワーマンションのみが交通至便の地に目立つ。-----
大月敏雄氏曰く、経済発展期に建設されたベッドタウン、新興団地、住宅団地はその後どのようになって来ているのかを、逐次追い掛けて調べてきたが、今やゴーストタウン化したり、何とか代替わりして生き延びていたり、当初の計画時の青写真はぼやけてしまって、空家が増えてその役目が終わって仕舞いかねないゾーンも数多く見受けられる。-----
日本の制度は、新築には親切だが、中古物件には法的なカバーが行き届いていなくて、住替えの対象として優良な中古物件の流通をもっと盛んにさせるべきだが、出来ていない。阪神大震災や東北大震災の被災者住宅でもましな処は少ない。日本の政治の貧しさを感じざるを得ないと云う。-----
タイトルの副題に“超高齢社会の居場所づくり”とあるが、この課題の解決はこれからであると、少ない成功例を示す共に嘆いて居られる。この方面の第一人者の東大教授であるが、ご自身の例も書かれているように、中々に難しいことが多いのだと云うことが分かって来たくらいの状況であるそうであり、先進諸外国の事例は余り参考にならないとも云う。超高齢社会に突入したのであれば、住宅双六の上がりが庭付き一戸建てではなくなっている現実を直視せよと書いていて、解決策は後進の努力を期待してバトンタッチするのが関の山の様である。
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