北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「麦酒とテポドン~経済から読み解く北朝鮮(文聖姫著・平凡社新書2018刊)」を読んだ。文聖姫(ムンソンヒ1961生れ)女史は、青山学院大学卒で、朝鮮新報記者を経て、現在は“週刊金曜日”編集部に在籍している。2008年東大大学院(韓国朝鮮文化研究専攻)に入学し、2017年に博士号を取得した。-----
「麦酒とテポドン」は、東大で取得した博士論文“北朝鮮における経済改革/開放政策と市場化”の内容を誰にでもわかるようにやさしい表現で本にしたものであると言う。-----
在日2世なので、北朝鮮での特派員体験や数度にわたる取材旅行から北朝鮮の社会の実像を描き出したのである。取っつきは週刊誌の記事と変わらないように思ったが、読み進むうちにそうではなくて、文聖姫女史の変わらぬ北朝鮮への思いやりが感じられて、ヘイトスピーチの溢れている今日の日本の週刊紙とは一線を画しているのだなと分からせて貰った。-----
タイトルにある“テポドン”の話は巻末に少しあるだけであり、大半が“麦酒”の方面の話に流れていると思った。どうしても北朝鮮の庶民の生活を思いやる際に、“満足な食事にあり付いているのだろうか”との心配が先だってしまうのであろう。-----
北朝鮮が日本人拉致を認めた時点で、文聖姫女史は北朝鮮へのある種の信頼を失ってしまって、東大大学院でお勉強をやり直そうと思ったのだそうであり、その挫折を乗り越えた先に見えたものが描かれていて、中々に現在の北朝鮮の経済の実情を知る上で良い本に仕上がっているのだと思った。底本は東大の博士論文なのだから当然ともいえるのだが。