北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「ノモンハン責任なき戦い(田中雄一著・講談社現代新書2019刊)」を読んだ。田中雄一(たなかゆういち1979生れ)氏は、2005年、ディレクターとしてNHKに入局した。NHKスペシャルなど戦争関連の番組制作に多く携わっている。------
司馬遼太郎は自身が満州の戦車部隊に出征していた関連もあり、第2次大戦の契機として重要なノモンハン事件を調べたが、人を人とも思わない陸軍/関東軍の余りの酷さに執筆を断念したと言われている。-----
戦後日本は東京裁判を是認して国際社会へ復帰したが、自身の手で戦争裁判を行ってこなかった。寧ろその体制を戦後も温存してきたかに思われるほどである。田中雄一氏は、放送ジャーナリスト/番組ディレクターとして、日本人自身の目で捉えて、あの戦争を始めた政府/軍部の戦争責任者を焙り出す仕事を、されているかのようである。勿論、その活動は微々たるものであり、そして多くの生き残りの証人はとても数少ないのだが、手を尽くして遺族訪問をしたりして、その裏付けをとり、番組で描き切れなかった内容をこの本「ノモンハン責任なき戦い」に書いている。-----
章立ては次の通り。“陸の孤島(絶望の塹壕戦)”、“関東軍VSスターリン”、“参謀/辻政信(大権干犯)”、“悲劇の戦場(夜襲突撃)”、“責任なき戦い(自決勧告)”、“失敗の本質(瀬島龍三の証言)”、“遺された者たち(実にすまんことをした)”、“いま戦争を語るということ”------
日本は機密文書を終戦時に焚書しているが、ソ連やアメリカは保存しており、今では諸外国にも閲覧を許可している。日本の自分勝手な文化とは大違いだ。田中雄一氏は解禁されている公文書アーカイブを読み解き、NHKらしい丹念さで正確な事実を明らかにしてくれているのだ。------
日独伊防共協定を結びながら、ソ連と不可侵条約も結んだ日本政府の頓珍漢の理由の一つがノモンハン事件のショックによる迷妄であったことは確かだろう。