北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「一神教と戦争(橋爪大三郎&中田考共著・集英社新書2018刊)」を読んだ。橋爪大三郎(はしづめだいさぶろう1948生れ)氏は、東大(文学部)卒、同大学院博士課程修了で、社会学者として活躍してきた。現在は東工大名誉教授である。中田考(なかたこう1960生れ)氏は、東大(文学部)卒、同大学院修士課程修了、カイロ大学大学院博士課程修了し、現在は同志社大学客員教授で、イスラーム学者である。-----
「一神教と戦争」は、日本人の不得意な“イスラム教”に付いて、キリスト教側の話者として橋爪大三郎氏が、イスラム教側の話者としては中田考氏が二人で激論を交わす対談本である。読んだからと言ってイスラム教がすっきりと理解できるものではないが、兎に角21世紀を生きる地球人としては日本人たりとてお勉強しておかねばならない時代となっているのだから、嫌いでも否でも橋爪大三郎氏と中田考氏の議論に付き合いなさいと忠告してくれている訳である。-----
対談の時期はシリアのISがほぼ殲滅された時点だから、お二人の議論を見ると、橋爪大三郎氏は落ち着きを取り戻し、中田考氏は些か誇大妄想の域を脱していないように見えるのだが、何とか噛み合わないながら、各論を戦わせて頂いているのは編集者の苦労の甲斐があったと言う事かも知れない。-----
世紀単位で世界史を眺めると、キリスト教世界がフランス革命から民主主義を発明し、自然科学を発展させてきたのだが、第2次大戦後は、米ソ2大国の監視下で世界経済の発展を見たのだと言う。自信をなくしてトラウマ状態の西欧だが、キリスト教世界の中核であることには変わりがなく、しかしながら今後の世界は中国、インド、イスラム世界の活動を抜きにしては将来を予測出来ないとお二人は結論付けているのだ。そのためにも日本人なら先ずはイスラム教を学びなさいと。「一神教と戦争」は纏まりのない本だが、イスラムの知識を僅かばかり得ることは出来るようだ。全く足りないのだが、知らないよりはましとも書いている。