奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その584)

2018-03-31 08:15:00 | 奈良・不比等
「ファンベース~支持され愛され長く売れ続けるために(佐藤尚之著・ちくま新書2018刊)」を読んだ。佐藤尚之(さとうなおゆき1961生れ)氏は、早稲田大(政経)卒で電通に務めた後、2011年に独立しマス広告・ネット広告・コミュニケーションデザインに携わった経験を売りにして、宣伝広告業界で活躍している。著書も多いようだ。-----
主に日本国内の広告宣伝業界の来し方について概観し、行く末についての処方箋を提示している。実際に電通にてその仕事をなさって来たのだから秘中の秘を教えてしまって良いものかどうかと思うが少しづつ開陳されている処がミソである。電通の受注する宣伝広告の内部ノウハウであるのだから横槍もありそうだが、とても分かり易く事例を持って説明している。------
TV・CMを使った宣伝からネット広告に仕事を奪われてきた電通などは自らもネット広告に進出し、売り上げの確保を行ってきたのだろう。「ファンベース」ではマス広告で新規顧客の獲得ばかりを目指していると後で痛い目に会うぞと脅かしもしている。従来からのコアなファンをこそ大切にしなければいけないと云うのだ。「釣った魚にえさを遣らない」と云う言葉があるけれども、それではダメであり、アフターケアを続けなさいと云う。そしてそのファンの口コミを通してこそ顧客を死守できるのであるとのこと。これからの人口減少社会では今の顧客を逃すようなことは絶対にしてはならないのであると。------
で、実際の処方箋はどうかと云うと、当方にご相談下さいと最後はなるのだろうけれど、幾つかの成功例を挙げている。ファンクラブの設立や製造過程の物語を発信するなどメーカーの外見だけでなく内部で働く人間模様を上手に発信せよと云う。丁度、スポーツの有名選手が企業の広告塔になるような感じであるが、そこまででなくとも人当たりの良い社員を紹介しても良いのだと云う。そうすれば好きになってファンとなる人々が増えてその企業は盤石の営業を続けられると云う。----
「言うは易し、行うは難し」の例のようであるが、人口減少社会ではあらゆる企業の総数が不要となり減って行くのであるから生き残れる企業になるにはファンを集めるしかないのだろう。-----
地方公務員も人口減少に伴って早晩人員削減の対象となるが、矢張りその対策は今から練って置くべきだろうと思った。地域住民から運営の上手さを頼りにされる自治体でなければ夕張市のように破綻してしまうだろう。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その583)

2018-03-30 08:15:00 | 奈良・不比等
「東大から刑務所へ(堀江貴文&井川意高著・幻冬舎新書2017刊)」を読んだ。堀江貴文(ほりえたかふみ1972生れ)氏は東大文学部中退で、在学中に起業したライブドアを急成長させたが世間からバッシングを浴び証券取引法違反の罪で実刑判決(2年6ヶ月)を受け刑務所暮らしをした。井川意高(いかわもとたか1964生れ)氏は東大法学部卒で、大王製紙創業家三代目として社長に就くが、カジノに100億円超を使い込み特別背任罪で検挙され実刑判決(4年)を受け入獄した。-----
「東大から刑務所へ」は幻冬舎・見城徹氏の絶対売れる新書企画の一冊だろうと思われる内容であり、庶民の日頃の鬱憤を晴らす意味で格好の書籍だろう。内容的にはある程度トーンを押さえているのだろうが、どの箇所も興味津々となること請け合いである。-----
韓国ドラマに「検察」「弁護士」や「警察」「新聞記者」「TVメディア」を主人公に据えたものが多いので何時も楽しませて貰っているけれど、韓国は日本と違って極端な展開が多過ぎると感じていた。しかしながら堀江貴文氏や井川意高氏の生の声を「東大から刑務所へ」を読んで知るにおよび、日本の司法関係も結構古い体質が残っており、世論に流されて犯罪者に仕立てられるケースも実際にあるのだろうと思った。まあ人間のジャッジすることなので感情の赴く処、厳しい判定が出るのも仕方がないのだろう。法の解釈も人間の為せる業なのだから。-----
日本の戦前の二大政党時代には政権を取った側が野に下った政党の運動員を片端から収監したそうであり、二大政党制が良いのか悪いのか判断に迷う処だ。韓国の大統領はお気の毒だと思う。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その582)

2018-03-29 08:15:00 | 奈良・不比等
「言ってはいけない宇宙論~物理学7大タブー(小谷太郎著・幻冬舎新書2018刊)」を読んだ。小谷太郎(こたにたろう1967生れ)氏は、東大物理学科卒で理化学研究所・NASAに務めた後、大学教員となり、科学の面白さを世間一般に伝える著作活動をしているとのこと。-----
「言ってはいけない宇宙論」では、2002(小柴昌俊・超新星からのニュートリノ検出)・2015(梶田隆章・ニュートリノ振動)のノーベル賞受賞とカミオカンデ・スーパーカミオカンデの活躍について、前半で分かり易く説明して呉れている。しかし中盤から後半は本題の「物理学7大タブー」を議論して呉れるのだが、とても素人には分からない。7大タブーを列挙すると次の項目である。「陽子崩壊説」「ブラックホール大爆発」「エヴェレットの多世界解釈」「異端の宇宙」「ダークマターとダークエネルギー」「量子重力」「人間原理」-----
「アインシュタインの相対論(マクロな世界を記述する理論)」と「シュレディンガーの量子論(ミクロな世界を記述する理論)」を繋ぐ統一理論が未だ完成していないのが現在の物理学の世界であるとのことだが、其々の理論に基づいて様々な科学的な恩恵は既に生活レベルを豊かにしてくれている。しかしながら理論物理学者にとってはミクロからマクロまでを一貫した理論で説明できるのが理想であり其れに向けて今も努力が続けられているのだと云うことを知って欲しいと云うのが「言ってはいけない宇宙論」の趣旨であるそうだ。もっと云えば、その解明のために研究予算を投下する事を一般の人々も応援するぐらいには知っておいて下さいと書いている。でも、簡単には分からない世界である。-----
奈良県では生命科学・バイオの研究が奈良先端科学技術大学で行われているのが全てであり、宇宙物理などには今のところ縁が無い。県南部の山岳地帯から宇宙観測するにも年間降雨量最多地帯であることが不味いのだろう。リクエストは聞かない。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その581)

2018-03-28 08:15:00 | 奈良・不比等
平成29年度最後の「図書館劇場(平成30年3月25日)」は、千田稔氏の「邪馬台国と渡来文化」であり、年間6回のシリーズの最終章として面白かった。邪馬台国の成立に関わった新羅の王子・アメノヒボコ(ツヌガノアラシト)の活躍について言及されていたので、邪馬台国のルーツは韓半島の伽耶・新羅であることになる。----
アメノヒボコを祀る神社として兵主神社が有り祭神は中国の神様・蚩尤(しゆう)であり金属や武器の神様であるとのこと。
先住渡来人集団の出雲族を駆逐して邪馬台国を成立させたと云うことである。何故大和であったのかと云う理由は、神聖な山・三輪山のある聖地を争奪しアメノヒボコが勝ったのだろう。--------
藤ノ木古墳の馬具に描かれた蚩尤を見れば、中国山東半島から楽浪郡・帯方郡・韓半島南部(伽耶・新羅・濊)を経て渡来してきた集団の長の古墳であることは明らかであると云う訳である。-------
千田稔氏の講演の後は都築由美女史の朗読(影媛の物語)が有り、元朝日テレビに務めていた帝塚山大学教授・牟田口章人氏の「ドローンからみた大和の古墳~箸墓古墳から天武持統陵古墳まで」の招待講義があった。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その580)

2018-03-27 08:15:00 | 奈良・不比等
「ピアノの名曲~聴きどころ弾きどころ(イリーナメジューエワ著・講談社現代新書2017刊)」を読んだ。イリーナメジューエワはロシア音楽アカデミーで学び、1992年ロッテルダム音楽コンクールにて優勝し、以来オランダ・ドイツ・フランスで公演を続け1997年からは日本を本拠地として活動しているピアニストである。-----
9章に亘る内容はバッハ・モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルト・シューマン・ショパン・リスト・ムソルグスキー・ドビュッシー・ラヴェルと多彩である。イリーナメジューエワのロシア人らしいクラシック音楽の深い素養が滲(にじ)み出ていて、興味深い。クラシック音楽は日本人ではどうしても借り物の世界であって上手なピアニストでも何だか似つかわしくない様に感じてしまうが、流石にロシア人ピアニストだなと思う。その証拠に日本ではファンもいるようであり、青山音楽賞(2006)やミュージックペンクラブ音楽賞(2015)を獲っている。-----
因みに、モーツァルトの章では次の様に書いている。「モーツァルトはピュアなシンプルさをずっとキープできた人です。その音楽も天国的なシンプルさを持っています。モーツァルトの音楽を聴くと一瞬で天国的な世界、神様の世界に連れていかれる感じがしますね。バッハとの比較でいえば、バッハは例えばフーガを通して、我々を神様の処へ一歩ずつ連れて行く。其れに対して、モーツァルトは最初から神様の近くを飛んでいる。移動のプロセスが無いんですね。ショパンがモーツァルトについて、モーツァルトは経験を必要としない、最初からすべて分かっていて、しかもその理解のレベルが霊感のレベルである、と言っているんですが、まさにその通りだと思います。」------
イリーナメジューエワもそうだが概して欧州出身の音楽家は演奏が上手なだけでなく音楽藝術の分野の教養がとても深いと思われる。音楽学校ではテクニカルな奏法だけでなくその音楽芸術の成り立ちなど文化的な歴史も教えるのだろう。-----
奈良県ではムジークフェスタを続けるそうだが、イリーナメジューエワのピアノ演奏会を県の予算で開催して欲しいものである。本物の良さを知るためにも。日本人は何でも取り入れるがある種の日本化をしてしまうので、例えばユーラシア大陸から伝わった舞楽にしても相当に変わり果ててしまって伝統芸能としてしか楽しめない代物となって仕舞っているのだから。
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