奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その614)

2018-04-30 08:15:00 | 奈良・不比等
「発達障害は最強の武器である(成毛眞著・SB新書2018刊)」を読んだ。成毛眞(なるけまこと1955生れ)氏は中央大学(商学部)卒で、自動車部品メーカー・アスキー勤務を経て、日本マイクロソフト社長に就任する。2000年退社し、投資コンサルティング会社を設立したり、早稲田大学ビジネススクール客員教授もしている。-----
「発達障害は最強の武器である」では、二人の医師との対談を掲載している。香山リカ(かやまりか1960生れ・東京医科大卒)女史と和田秀樹(わだひでき1960生れ・東大医学部卒)氏である。成毛眞氏のカミングアウトを信ずるならば、自らがADHD(注意欠如多動性障害)の傾向が強いという。対談相手の医師にADHDとはどのような症状であり、どのような可能性と社会的困難性が伴うのかという話題を中心にしているが、一貫して世の中で良いポジションを占めればADHDの人は中々良い仕事をすることが出来るのだと強調している。成毛眞氏自身の経験談も面白い。ビルゲイツはアスペルガー(発達障害)であるとか、スティーブジョブズも間違いないとか、日本ではコミュニケーション能力に欠けると就職出来ない例が多いけれど、今後AIの発達した時代になれば、ADHDの方が生き残れることになるかも知れないと、普通の人に警告を発している。-----
確かにマスソサエティの中でイノベーションを担うのはアスペルガー(発達障害)と云うかADHD(注意欠如多動性障害)の人の方が一発集中力や新規なものへのチャレンジングな能力が秀でていると云えるのだろう。科学技術を発展させてきたのはそのような人達なのだから。日本の科学技術の世界における活躍度が低下してきたのはそのようなアスペルガー・ADHDを事更に排除しだしたからではないだろうかと成毛眞氏は云っている。-----
都道府県や市町村のビューロクラートやテクノクラートにはそのような人材は不用であり、邪魔になるのかも知れないが。政策立案には必要とも云えそうだと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その613)

2018-04-29 08:15:00 | 奈良・不比等
「笑うときにも真面目なんです・Wir lachen ernsthaft(マライメントライン著・NHK出版2017刊)」を読んだ。マライメントライン(Marei Mentlein)女史はドイツ・キール出身で2008年より日本に在住している。NHK「ドイツ語」講座でお馴染みの方も多いようだ。-----
「笑うときにも真面目なんです」はドイツ人の様々な癖と云うか生活態度を女性の目線で日本人と比較しながら小話形式で楽しませて呉れる趣向となっている。ドイツ人はケチなので交通機関を利用するにも一駅手前で降りて歩く人が多いとか。全てが具体的なので興味深い。本当に本当かと探りを入れたくなるような話題ばかりだが、ネイティブの話なので真実に違いない。そしてタイトル通りのドイツ人の真面目さが各所に溢れている。日本の体育祭と違ってドイツでは団体競技はゼロで個人戦ばかりだとか。親の観戦も無しで、タイム記録を競うプチ世界陸上そのものだとか。-----
ドイツの食は味よりも量が満たされないとだめであり、日本の懐石料理などは量的にバツだそうである。だからドイツではどのような料理でもジャガイモの付け合わせが当たり前となっているそうだ。-----
クールで居たいドイツ人と云うのも面白い。「ドイツには昔から教養ある大人として認めて貰いたければクールに振る舞うべしという不文律が存在します。激しい感情を表に出すことは、たとえそれが喜びだとしても大人げないとされています。」-----
「笑うときにも真面目なんです」は独語と日本語訳を左右に並べたドイツ語教本なのだが、取り扱っている話題が面白くて、ドイツ語のお勉強をする人だけでなくても読んでおけばドイツの理解に役立つだろうと思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その612)

2018-04-28 08:15:00 | 奈良・不比等
「保守の遺言~JAP.COM衰滅の状況(西部邁著・平凡社新書2018刊)」を読んだ。西部邁(にしべすすむ・1939~2018)氏は東大大学院(経済学)を修了し、アメリカ留学を経て1988年まで東大教授を務めた。その後は評論家・思想家として活躍された。-----
「保守の遺言」は文字通りの絶筆であり、西部邁氏の薫陶を受けた方々は元(もと)より、一介の読書ファンにとっても必読の書となっている。------
北海道に生れ、東大に進むが、共産主義者同盟(ブント)に加盟し、全学連・中央執行委員となり60年安保を闘っている。「保守の遺言」の冒頭には、次のように書いている。「僕が最初に投票用紙なるものを受け取ったのは昭和35年の何時であったかは記憶に定かではないが、ともかく東京拘置所の独房においてであった。政治犯の被告人としてそこに座していたのである。僕は即座に“投票なんかしない”と応じた。暴力革命主義者たる旗をまだ下ろしていなかったし、実際に首相官邸や国会議事堂の門扉などの破壊を煽動したのは間違いもなく自分であったのだから、そんな者が総選挙という合法的手続きに順応するのは変だと感じたからである。」-----
実際に過激であった西部邁氏であるが、60年安保世代は大多数が本心かどうかは知らないが転向をして、インテリはインテリの職業についている人が多い。70年安保世代は人数の多さもあるのだが、インテリでもインテリの職業に付けていない人が多い。西部邁氏は或る意味幸運であったのだろう。------
「保守の遺言」の内容はこれまでに西部邁氏がメディアで発して来られた知識人としての主義・主張が分かり易い言葉で丁寧に書かれている。恐らく口述筆記を担当されたお嬢様にも良く分かるようにとの親切心が溢(あふ)れている。横文字は全てカタカナで解説付きである。教授の時代に学生を教える講義のスタイルが踏襲されているかのようであった。------
そして「保守の遺言」の巻末には、真宗寺院に生まれたことに起因するのか、次の様に書いている。「末法の世だから彼岸に思いを致すなどと噓を吐く気は僕にはない。彼岸などはそれを唱えた開祖者自身が内心ではわかっていただろうように、噓話であり詐話(さわ)であるに違いないのだ。俗世への絶望を語り、それに堪えよと訴えるべく“あの世“を捏造(ねつぞう)したのに違いない。少なくとも云えるのは証明責任はそれを云いだした者にあるのだから、彼岸なるものを僕の前にもってきてみせてみよということである。」------
そして最後に先立たれた奥様への思いを次の様に書いている。「一度切りの決断で家庭と云うものを作り、その小さな空間でひたすらに生きそして従容として生を終える。その事の持っている“平凡の非凡”とでもいうべき姿を見せられると僕はたじろがずにはいられないのだ。彼女らが平凡な欲求をしか発せぬということに、僕は胸打たれる気すらしたのである。----だがその徹底した私人性がかえってその外側にある者たちの公人性を陰から支え明るみの中に浮かび上がらせていると言ってよい。」
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その611)

2018-04-27 08:15:00 | 奈良・不比等
「工学部ヒラノ教授の終活大作戦(今野浩著・青土社2018刊)」を読んだ。今野浩(こんのひろし1940生れ)氏は東大工学部(数理)卒・同大学院修了し、民間研究機関からスタンフォード大学OR学科博士課程に進みPHDを取得する。その後、筑波大学助教授・東工大教授となり、中央大学教授を退職後は、「ヒラノ教授」シリーズを執筆されてきた。勿論、専門はORと金融工学の日本の泰斗である。-----
「工学部ヒラノ教授の終活大作戦」では、此れまでのお浚いをして、今野浩氏のプロフィールを随所に書き加えてくれているので、初めての読者にも面白く読めるだろうと思った。2011年には奥様が、2017年にはお嬢様が同じ遺伝性疾患で先立たれて、それまでの介護をされた苦労も大変だったようだが、今野浩氏の波乱万丈の人生は確かに終焉を迎えているようだ。ファンはそれでも続編を期待しているだろうが、今野浩氏が自身の寂寥感を払拭できるかどうかは、確かに多胡輝氏が提唱したと云う「きょうよう・きょういく」の頭の体操(認知症防止策)が鍵を握るのかも知れないと思った。専門書でなくても、「工学部の語り部」シリーズは「終活大作戦」が最後かもしれないが、何か書き続けて居られれば長命の作家を見れば分かるように、天寿が続くのではないかとも思った。
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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その610)

2018-04-26 08:15:00 | 奈良・不比等
平城宮跡歴史公園「朱雀門ひろば」の開園(平成30年3月24日)、旧そごう・旧イトーヨーカ堂跡の多目的商業施設「ミ・ナーラ」開業(4月24日)は荒井正吾・奈良県知事にとって大層嬉しいことだろう。従来、ハコモノ行政が批判を浴びてきたが、朱雀門ひろばのハコモノは大したものではないし、「ミ・ナーラ」に至っては日本経済バブル期の遺産を継承した民間のものだから、奈良県にとっては痛くも痒くもない代物であり、それでいてある種のモニュメントを構成するに十分な存在感があるのだから云うこと無しだろう。今後は大宮通りを奈良公園から朱雀門ひろばまでピストン運転するシャトルバスを運行させるなどすれば、奈良公園を訪れる観光客を平城宮跡に送り込むことも可能となる。-----
勿論、平城宮跡歴史公園は国土交通省の管轄で整備・維持管理をして貰えるので、奈良県の財政負担は軽い。------
奈良公園側のバスの発着基地を新設する為、奈良県庁東側の県営登大路駐車場南を利用して改造工事をしている。着々と小まめにインフラの改良をするのは、大計画と違って面倒なものだろうけれど、その少しづつの改善が、古都奈良の顔を美しくして呉れていると思った。何もされなかった柿本善也知事の時代は何の変化も感じられなかったが、たいした力量を荒井正吾知事は発揮されたと云えるだろう。そう云えば京奈和道路の奈良北路線も計画が本決まりになったそうであり、奈良県の様にインフラ整備の遅れていた処では、本当に国交省(海上保安庁)出身の知事で良かったと思う。
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