北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「感動のメカニズム~心を動かすWork&Lifeのつくり方(前野隆司著・講談社現代新書2019刊)」を読んだ。前野隆司(まえのたかし1962生れ)氏は、東京工大大学院修士課程修了。博士(工学)。キャノンを経て、カリフォルニア大学バークレー校研究員、ハーバード大学教授、慶應大学(理工学部)教授を歴任し、現在は、同大学院(システムデザイン/マネジメント研究所)教授である。ロボット/脳科学の研究から“幸福学/感動学”にシフトして活動している。-----
章立ては次の通り。“感動の時代がやってきた”、“これまでの感動研究”、“感動のSTAR分析とは何か”、“感動のSTAR分析を用いた研究事例”、“感動の実践事例集”、“感動の見つけ方/高め方”------
人間は心と体で構成されているとすると、体の健康と心の幸福は最も大切なものである。健康を維持増進するには食べ物と運動に配慮せねばならない。一方、幸福になるには“感動”のある生活を営むことが最重要だと前野隆司氏は言うのである。-----
さて、感動をメインに研究することはこれまで余り聞いたことがない。哲学や宗教学では幸福の追求をテーマにもするだろうが、前野隆司氏は感動することこそ幸福につながるのだとストレートに思い定めて、様々な事例研究を進めるのだ。但し、方法がない訳ではなく、STAR分析法を駆使して、それなりに意味づけているのである。STAR分析はSENSE(感覚)/FEEL/THINK(理解)/ACT(体験)/RELATE(つながり)の頭文字を並べたものである。これで一体何を論じるのかと誰しも思った処で、卑近な事例を紹介しているのが、この本のミソであろう。-----
“トヨタ/ホンダ”、“Yahoo/Google”、“マクドナルド/モスバーガー”、“タリーズコーヒー/スターバックスコーヒー”の企業イメージ比較は、STAR分析を当てはめると、お客に感動を与えている実態とその理由がそれなりに納得できるのだ。-----
感動は文学作品や映画/スポーツ観戦などから、得られるものだと思いがちだが、本当は日常生活の中で感動を味わえるのが大切だと前野隆司氏は言っている。がしかし結局、この本では仕事生活の事例が多くて、未だ新しい研究領域であるせいか、迷いが感じられたのは仕方のないことだろうと思った。