北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「ヨーロッパ夢の町を歩く(巌谷國士著・中公文庫2000刊/1993版の文庫化)」を読んだ。巌谷國士(いわやくにお1943生れ)氏は、東大(文学部)卒、同大学院修了。フランス文学者、評論家、エッセイスト、明治学院大学名誉教授である。-----
「ヨーロッパ夢の町を歩く」は、巌谷國士氏の得意とするフランス/パリ以外で、歩くだけで夢見心地になれるとっておきのヨーロッパの都市/21箇所を旅行ガイドさながらに、巌谷國士氏の高い教養とその識見を惜しげもなく披露しながら案内してくれる本なのである。その珠玉の都市は次の21箇所である。“リスボン、エヴォラ、ファティマ、マドリード、セゴビア、バルセロナ、マルセイユ、ヴェローナ、ナポリ、ドゥブロヴニク、ソフィア、プラハ、ワルシャワ、クラクフ、カルロヴィヴァリ、ドレスデン、ベルリン、ローテンブルク、ロンドン、コペンハーゲン、ベルゲン”-----
紹介される順番は、巌谷國士氏の好きな順ではないかと思わるように、南ヨーロッパから反時計回りに進むのである。最初はポルトガルのリスボン、ヨーロッパ主要国を訪問して飽きてしまった旅行者にツーリストビューローが薦めるのが、ポルトガルであるようだ。嘗て、映画俳優の高倉健が日本人旅行者の少ないポルトガルを気に入っていたようだ。-------
東大仏文出身の秀才で私学の教授であれば、身分は確かだし、巌谷國士氏の書かれたヨーロッパ紀行文は出版社にとって、絶対に儲かる出しものであったのだろう。自身3冊目であるとあとがきに書いている。------
旅行業者の纏めた旅行ガイドと違って、日本国内で暇を囲ったり、経済的に許されない向きにも、この本「ヨーロッパ夢の町を歩く」を読めば、読者も外遊しているかのような夢見心地にしてくれるので、優れ物である。目にする物、食べる物、乗り物、建物、川の流れ、その景色を目の前に彷彿とさせる巌谷國士氏の筆力/文才は生半ではない。決して古びない良い本である。