奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その604)

2018-04-20 08:15:00 | 奈良・不比等
「ファシズムの正体(佐藤優著・集英社インターナショナル新書2018刊)」を読んだ。佐藤優(さとうまさる1960生れ)氏は、同志社大学大学院(神学科)修了後、外務省に入省する。イギリス・ロシア勤務を経て国際情報局・勤務時に事件に連座し罷免された。退職後は執筆活動に専念し、「国家の罠」で毎日出版文化賞を受賞している。------
「ファシズムの正体」では、イタリアのファシズムについて詳しい解説をしてくれている。ファシズムは言葉でさえ嫌われていて、実際の意味合いはよく知らない人が多い。ヒトラーもムッソリーニもファシストと同類視しているが、実際の処、ヒトラーはナチズムを推し進めたのであってファシズムではないと云う。------
戦前の日本は未完のファシズム国家であった。其れに近いのが今の北朝鮮であると云う。その北朝鮮を軟着陸させるには敗戦後の日本が参考になると云う。ポツダム宣言の受諾に際して日本は国体護持が絶対条件でした。その旨を通知した処、アメリカの国務長官ジェームズバーンズ(1882~1971)から天皇を含む日本政府は連合国軍最高司令官の下に「Subject to」するという返事がきました。アメリカが日本を共和制にすると言ったら日本は徹底的に戦っていたでしょう。北朝鮮も同様です。アメリカは金正恩体制を認めるしかありません。さもなければ、第二次朝鮮戦争のシナリオしか選択肢が残りません。多くの人は金正恩体制を存続させたら「いたちごっこが繰り返されるだけ」と思うでしょう。しかし、終戦の年の10月に「日米会話手帳」が300万部のベストセラーとなり、鬼畜米英と叫んでいた国がアメリカと積極的にコミュニケートしようとしたのであり、北朝鮮も同じ変化をすると思うと書いている。-----
ファシズムは福祉国家論と親和的で、社会主義革命を阻止すると同時に自由主義的資本主義がもたらす失業・貧困・格差を国家の介入によって是正しようとする運動だから、失業・貧困に喘(あえ)ぐ国民の支持が得られやすい。しかし国家の介入する領域が増える程、市民の自由が大きく制限されてしまうという。21世紀になって、日本でも猛威をふるう弱肉強食の新自由主義的資本主義を国家の介入によって是正しようという動きが強まっている。この発想が我々をファシズムに導いていく可能性を過小評価してはいけないと結んでいる。
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