奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その599)

2018-04-15 08:15:00 | 奈良・不比等
「ルポ不法移民~アメリカ国境を越えた男たち(田中研之輔著2017刊)」を読んだ。田中研之輔(たなかけんのすけ1976生れ)氏は、一橋大学大学院(社会学)単位取得退学にて、メルボルン大学・カリフォルニア大学(バークレー校)客員研究員を経て、現在、法政大学准教授である。専門は社会学・エスノグラフィーとのこと。エスノグラフィー(ethnography)とは民族誌と訳されるが、社会学の用語で集団や社会の行動様式をフィールドワークによって調査・記録する手法およびその記録文書のことを云うそうである。------
「ルポ不法移民」では、トランプ大統領が公約としていたメキシコとの間に塀を作り、此れまでの不法移民を強制送還すると云う問題を、実際にアメリカ社会にどのような問題を及ぼしているかについて、著者の田中研之輔氏が体当たり突撃取材を敢行した有様を其の儘に新書にしてくれているので一般解ではないだろうが特殊解として十分に意味のある議論の材料を提示してくれていると云える。------
サンフランシスコベイエリアのバークレーに自らも陣取って日雇い仕事の日々を過ごし、不法移民の実態を詳報している。アメリカの黒人層はアメリカ国籍を持っており、日雇い労働斡旋所を利用出来るのだが、滞在資格を持たないメキシコ人の不法移民はそこを利用する訳にはいかないので、此れも不法の仕事待ちの寄せ場に屯(たむろ)して、手伝い仕事を頼みたい近隣住人や商店の助っ人を物色しにくるクルマの到来を待つのである。-----
此のカリフォルニア州バークレーではトランプ大統領が云うような白人アメリカ人の仕事を奪うようなことにはなっていないのだが、不法移民はどちらにしても社会不安の材料にはなるとの意味で敬遠されているのだと思った。欧州でも、中東でも東アジアでも経済格差があれば人は出稼ぎに出るのだが、その出稼ぎ労働者の所為で社会の底辺層の賃金が安く留めおかれるために、アメリカ国籍を持つ底辺層のアメリカ人が割を食ってしまうケースが増えるのだろう。日本でも経済繁忙期に日系ブラジル人が増えて日本人の仕事が奪われるとの心配をした時期が有ったけれど、その後ブラジル本国の経済発展により、潮が引いた。アメリカとメキシコの場合は国境を接しているので、越境は防げないのだろう。旨い仕事があれば不法移民は無くならないだろうと思った。
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