奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その595)

2018-04-11 08:15:00 | 奈良・不比等
「捏造の日本古代史~日本書紀の解析と古墳分布の実態から解く(相原精次著・えにし書房2017刊)」を読んだ。相原精次(あいはらせいじ1942生れ)氏は、國學院大学(文学部)卒で、奈良市で国語教師を5年(1965~1970)務めている。その後、神奈川県立高校に定年(2003)まで過ごし、現在は歴史作家として執筆に専念している。主著は「文覚上人一代記」「平城京への道~天平文化をつくった人々」がある。-----
「捏造の日本古代史」は此れまでの集大成であるかのように、史学会に挑戦状を突き付けたかのような趣がある。其れと云うのも誰しもが日本古代史には不明確な部分があると思っているけれど、正面からその疑問を発する事は余りして来なかったと云えるだろう。素人なら未だしも、歴史学者そのものがその時代・日本の古代を敬遠してきた嫌いがあるのではないかと云うのが、相原精次氏の主張である。------
明治以降、皇国史観を77年(1868~1945)続けて、戦後は平和憲法で既に72年(2017~1945)経つのだが、日本史の古代については今尚、皇国史観の影が消えていないと嘆いて居られる。それは一体何故なのだろうかと、先駆者の古代史研究を振り返って有力な学説を見れば明らかに、日本書紀に捏造の事実が様々に見付かるのだが、これを取り上げて言い募る学者が全く存在しないのであると。これでは戦前の皇国史観と変わりがないではないか、史学会は一体どうしているのかと。返す刀で考古学会の古墳調査の少なさにも言及されている。天皇稜でなくても周辺の古墳をもっと調査すれば日本の古代は物的証拠を十分に提示できる筈だとも云っている。------
こうした日本人の事なかれ主義と云うか、曖昧な国民性は過去の決着も曖昧にしたままで、恐らく、相原精次氏の世代ももうすぐ日本古代史の実像を調べることなく世を去らねばならないことになる。これでは空しいので欺瞞に満ちた日本人が目覚めるように一石を投じておきたいとのことで「捏造の日本古代史」は書かれたもののようだ。
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