北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
先日、奈良県立図書情報館の2Fロビーにて、奈良県/文化資源活用課制作の“記紀万葉プロジェクト/最終年度の映像作品”であるらしい「藤原不比等の足跡を辿る映像“国とは何ぞ~律令に託す想い/憧憬と畏怖の狭間で”」が連続上映されているのを予期せず発見し幸いにも観賞した。------
藤原不比等を演じているのは、インテリ俳優の加藤雅也(かとうまさや1963生れ/奈良高/横浜国立大卒)であり、実写版としてとてもよく出来ていた。女優/タレントの藤村朱里がリポーターとして藤原不比等に想いを巡らし奈良県内の故地を訪問する趣向も優れていた。映像作品の監修者は奈良図書情報館の館長/千田稔氏であり、藤原不比等の研究を国際日本文化研究センターで梅原猛から引き継いだ学者だから、映像のストーリーは秀逸でとても魅力的なのであった。-------
前編/後編の2部構成となっている。各15分でトータル30分の映像作品なので長くもなく短くもなく丁度の長さで歴史的には謎の多い藤原不比等へのアプローチがなされているのだ。------
内容の斬新な処は、藤原不比等が大宝律令だけでなく、日本書紀の編纂にも深く関わっていたと言明している点であった。他にも、和同開珎は平城京遷都に駆り出された労務者への日当であったろうというのもあった。何れにしても、これまでの不可解な藤原不比等像ではなくて、一歩突っ込んだ明確な意志を持った藤原不比等像を提供してくれていて感心した。-------
加藤雅也氏は、現在、藤原不比等の晩年と同年齢であり、知に長けた風貌と抑えた演技が藤原不比等の高貴なイメージを醸し出しているように思った。リポーターの藤村朱里女史はストーリー映像の最後に奈良まちから興福寺/北円堂を訪れて礼拝するのである。本当によく出来た作品に仕上がっており、これからも大画面液晶のディスプレイがあるのだから上映を機会があれば頻繁にしてほしいと思った。