新国立劇場でリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」を見ました。
今回で見るのはまだ2回目ですが、音楽がとても美しく、私の好きなオペラの1つです。
今回の上演は、2007年に上演されたジョナサン・ミラーの演出のプロダクションによるものとのことです。その当時、私は久々に東京勤務になったばかりで、見に行く余裕がありませんでした。この演出による「ばらの騎士」は、2011年4月に再演予定でありましたが、今度は再び地方に転勤となる直後であったため、再び見に行く余裕もありませんでした。また、そもそも2011年4月は震災直後のため、上演の一部が中止になったり、出演予定者が放射能の降り注ぐ「死の都」には来たくないと出演を断ったりと大変であったようです。
閑話休題
3幕構成ですが、各幕で舞台は大きく変わります。
第1幕は、元帥夫人の寝室の中で、中央にベッドが置かれています。セットに窓も設けられております。第1幕目のおしまいには、雨が降るという設定らしく、舞台の正面に雨の影が投影されています。
第2幕目は、ゾフィーの屋敷が舞台です。遠近法を強調して、奥行きを持たせた舞台に、鏡や赤いソファーなどアクセントのきいた調度品が調っています。
第3幕目は、色魔で、金銭欲の塊で、デブでハゲで、垢抜けず、いいところの何もないオックス男爵が、マリアンデルことオクタヴィアンの罠にかかり、逢瀬の場と信じてノコノコ出てきた木賃宿です。窓や地下から人物が出てきて、オックス男爵を驚かす仕組みになっています。
舞台は、本来のストーリーの舞台の18世紀ではなく、1912年という何故か極めて正確な年で示されています。もっともそれをうかがわせるのは、オクタビアンの軍服など、衣装ぐらいなのですが。
今回も、第1幕後半で様々な人々が元帥夫人の家を訪れるところあたりから眠くなり、第1幕目最後の元帥夫人とオクタヴィアンとのやり取りのところでは極端に眠くなりましたが、第2幕、第3幕(ただし、この最後の元帥夫人が出てくるところはまた眠い。)は楽しむことができました。
何よりも歌と音楽の綺麗なオペラですが、今回はオクタヴィアン、元帥夫人等の歌手だけではなく、オケも健闘しており、とてもいいオペラでした。ただ、元帥夫人は、オクタヴィアンが若い彼女の元に走ることを許しても、オクタヴィアンとの愛人関係が終了しただけで、新たな愛人を見つけるようなイメージなのだということがClub The Atreの会報には書いてありましたが、今回の演出で見る限りでは、元帥夫人はまだオクタヴィアンに未練タップリで、オクタヴィアンも関係を続けたそうな印象を受けました。
【スタッフ】
指揮:シュテファン・ショルテス
演出:ジョナサン・ミラー
美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター
照明:磯野 睦
【キャスト】
元帥夫人:アンネ・シュヴァーネヴィルムス
オックス男爵:ユルゲン・リン
オクタヴィアン:ステファニー・アタナソフ
ファーニナル:クレメンス・ウンターライナー
ゾフィー:アンケ・ブリーゲル
マリアンネ:田中三佐代
ヴァルツァッキ:高橋 淳
アンニーナ:加納悦子
警部:妻屋秀和
元帥夫人の執事:大野光彦
ファーニナル家の執事:村上公太
公証人:晴 雅彦
料理屋の主人:加茂下 稔
テノール歌手:水口 聡
帽子屋:佐藤路子
動物商:土崎 譲
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【あらすじ】
(第1幕)陸軍元帥夫人マリー・テレーズは、夫が不在の館で、若い恋人オクタヴィアンと甘いまどろみのなか朝を迎える。そこに元帥夫人の従兄オックス男爵がやってくる。新興貴族ファーニナルの娘ゾフィーと婚約するというオックスは、婚約者に銀のばらを贈る儀式の使者"ばらの騎士"を誰にしたらいいか相談しに来たのだ。逢瀬の現場を見られてはまずいと大慌ての2人だが、もう逃げられず、オクタヴィアンはかわいらしい小間使いマリアンデルに変装。女たらしのオックスは元帥夫人に相談しながらも小間使いが気になる様子。元帥夫人はオクタヴィアンを"ばらの騎士"に推薦する。その後、元帥夫人はひとり思いにふけり、年齢を重ねることの無常を思う。
(第2幕)"ばらの騎士"としてゾフィーに銀のばらを届けに来たオクタヴィアンは、一目で彼女と恋に落ちてしまう。オックス男爵が現れるが、彼のあまりにも無作法な態度にゾフィーは結婚を嫌がり、オクタヴィアンは婚約を取り消すようオックスに申し出る。しかしオックスが相手にしないため、オクタヴィアンは剣を抜く。オックスも剣を手に取るが、すぐにオクタヴィアンの剣の先が腕に当たる。負った傷はほんのかすり傷だが、オックスは泣きわめいて大騒ぎ。そこにマリアンデルから逢引の誘いの手紙が来て、オックスはすっかりご機嫌に。
(第3幕)逢引の場の安宿の一室には、オックスを懲らしめるための罠を仕込み、オクタヴィアンはマリアンデルに変装して準備万端。何も知らないオックスは浮足立ってやってきて"彼女"を口説こうとするが、いい雰囲気になろうというとき、幽霊が現れ、「彼の子」と称する子を連れた女や、警官が来て大騒動。すっかり追い詰められたオックスは婚約を破談にすることを了承する。そして元帥夫人は身を引き、オクタヴィアンとゾフィーを祝福する。