上野の東京都美術館で開催中のターナー展に行って参りました。
5月には上野の東京藝術大学美術館で夏目漱石の美術世界展では「金枝」を見ましたが、今回は似て非なる作品「チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア」 を見ました。いずれも、漱石の「坊ちゃん」の中で、赤シャツが愛媛県内の島をターナー島と名付けるくだりで、念頭に置かれている絵の候補となっている作品です。
どうでもよい話から始めました。
まずはトビカンのHP記載の企画の趣旨です。
(引用はじめ)西洋美術史に燦然と輝く風景画の傑作を生みだし、今日なお英国最高の画家と称されるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の展覧会を開催します。世界最大のコレクションを誇るロンドンのテート美術館から、油彩画の名品30点以上に加え、水彩画、スケッチブックなど計約110点を紹介。才能きらめく10代の習作から、若くして名声を確立しながらも、批判を恐れず新たな表現を追究し続けた壮年の代表作、70代の到達点に至るまで、栄光の軌跡をたどります。日本でまとめて見る機会が少ない巨匠の待望の大回顧展です。(引用終わり)
ターナーの作品が、1初期、2崇高の追求、3戦時下の牧歌的風景、4イタリア、5英国における新たな平和、6色彩と雰囲気をめぐる実験、7ヨーロッパ大陸への旅行、8ヴェネツィア、9後期の風景画、10晩年の作品に分けて展示されています。
ターナーは理髪店の息子に産まれ、あまり恵まれた境遇でもなかったようですが、幼くしてロイヤル・アカデミー附属美術学校に入学し、異例の若さでロイヤル・アカデミーロイヤル・アカデミー準会員となり、その後も順調な人生を送っていきます。
そんな息子をターナーの父親も誇らしく思っていたようです。ターナーは非常に才能に恵まれる一方で、その絵画を王侯貴族等に気に入ってもらうことにもかなり心を砕いたようです。
英国でおきた船の事故を描いた「ミノタウルス号の難破」は、テオドール・ジェルコーの「メデュース号の筏」に似た構図で描きながらも、その後この作品の取り扱いに困ったというエピソードや、王室に取り入るために描いた絵のことなどターナーの顕示欲の強い人となりが窺われます。その割には、「トラファルガーの海戦」をネルソン提督等の将軍の絵としてではなく、戦場での戦いを終えた後の兵士や船の絵として描き、感動を呼ぶ者ではないと不興を買ってしまったエピソードなど面白く思われました。また、晩年、絵を自分のアトリエで完成させず、多くの人の前でお披露目する際に完成させるようにしていたというのもパフォーマンス好きのターナーの強烈な人柄を感じます。
いい作品と思いましたのはヴェネツィアを描いた作品です。
それとローマの将軍のエピソードを踏まえた「レグルス」という作品です。こちらの方はエピソードの方を聞いてしまうと、ひいてしまうような絵画で、評判が悪かったというのもよくわかります。
興味深かったのは「戦争、流刑者とカサ貝/平和―水葬」というタイトルの対となる2枚の絵です
「戦争-流刑者とカサ貝」はワーテルローで敗れたナポレオンの姿を赤々とした色調で描き、「平和-水葬」はターナーの知人のウィルキーの姿を黒色で描いています。
そして確か「平和ー水葬」に描かれているマガモmallardがターナーの名前であるMallordと韻を踏んでいるのだそうです。
音声ガイドに言及はなかったかもしれませんが、カサ貝はナポレオンが軍の中でいつもかぶっている帽子と同じ形になっていることが一見してわかります。それと、音声ガイドでウィルキーの病気のことを聞いたからでしょうか、私はmallardは他にもmalade(フランス語で病気)とも韻を踏んでいるのかななどとと考えながら聞きました(これは完全に私の勝手な想像)。
この美術展は神戸市美術館にも巡回になるようです。ターナーの絵は神戸市美術館の重厚な建物の方が、より似つかわしいかもしれません。
5月には上野の東京藝術大学美術館で夏目漱石の美術世界展では「金枝」を見ましたが、今回は似て非なる作品「チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア」 を見ました。いずれも、漱石の「坊ちゃん」の中で、赤シャツが愛媛県内の島をターナー島と名付けるくだりで、念頭に置かれている絵の候補となっている作品です。
どうでもよい話から始めました。
まずはトビカンのHP記載の企画の趣旨です。
(引用はじめ)西洋美術史に燦然と輝く風景画の傑作を生みだし、今日なお英国最高の画家と称されるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の展覧会を開催します。世界最大のコレクションを誇るロンドンのテート美術館から、油彩画の名品30点以上に加え、水彩画、スケッチブックなど計約110点を紹介。才能きらめく10代の習作から、若くして名声を確立しながらも、批判を恐れず新たな表現を追究し続けた壮年の代表作、70代の到達点に至るまで、栄光の軌跡をたどります。日本でまとめて見る機会が少ない巨匠の待望の大回顧展です。(引用終わり)
ターナーの作品が、1初期、2崇高の追求、3戦時下の牧歌的風景、4イタリア、5英国における新たな平和、6色彩と雰囲気をめぐる実験、7ヨーロッパ大陸への旅行、8ヴェネツィア、9後期の風景画、10晩年の作品に分けて展示されています。
ターナーは理髪店の息子に産まれ、あまり恵まれた境遇でもなかったようですが、幼くしてロイヤル・アカデミー附属美術学校に入学し、異例の若さでロイヤル・アカデミーロイヤル・アカデミー準会員となり、その後も順調な人生を送っていきます。
そんな息子をターナーの父親も誇らしく思っていたようです。ターナーは非常に才能に恵まれる一方で、その絵画を王侯貴族等に気に入ってもらうことにもかなり心を砕いたようです。
英国でおきた船の事故を描いた「ミノタウルス号の難破」は、テオドール・ジェルコーの「メデュース号の筏」に似た構図で描きながらも、その後この作品の取り扱いに困ったというエピソードや、王室に取り入るために描いた絵のことなどターナーの顕示欲の強い人となりが窺われます。その割には、「トラファルガーの海戦」をネルソン提督等の将軍の絵としてではなく、戦場での戦いを終えた後の兵士や船の絵として描き、感動を呼ぶ者ではないと不興を買ってしまったエピソードなど面白く思われました。また、晩年、絵を自分のアトリエで完成させず、多くの人の前でお披露目する際に完成させるようにしていたというのもパフォーマンス好きのターナーの強烈な人柄を感じます。
いい作品と思いましたのはヴェネツィアを描いた作品です。
それとローマの将軍のエピソードを踏まえた「レグルス」という作品です。こちらの方はエピソードの方を聞いてしまうと、ひいてしまうような絵画で、評判が悪かったというのもよくわかります。
興味深かったのは「戦争、流刑者とカサ貝/平和―水葬」というタイトルの対となる2枚の絵です
「戦争-流刑者とカサ貝」はワーテルローで敗れたナポレオンの姿を赤々とした色調で描き、「平和-水葬」はターナーの知人のウィルキーの姿を黒色で描いています。
そして確か「平和ー水葬」に描かれているマガモmallardがターナーの名前であるMallordと韻を踏んでいるのだそうです。
音声ガイドに言及はなかったかもしれませんが、カサ貝はナポレオンが軍の中でいつもかぶっている帽子と同じ形になっていることが一見してわかります。それと、音声ガイドでウィルキーの病気のことを聞いたからでしょうか、私はmallardは他にもmalade(フランス語で病気)とも韻を踏んでいるのかななどとと考えながら聞きました(これは完全に私の勝手な想像)。
この美術展は神戸市美術館にも巡回になるようです。ターナーの絵は神戸市美術館の重厚な建物の方が、より似つかわしいかもしれません。