Zooey's Diary

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夢を追いかける男「世界最速のインディアン」

2011年09月07日 | 映画
2005年アメリカ映画。
画面は、老人の寝起きの顔のアップで始まります。
深く刻まれた皺、薄い髪、起き上がるのもやっとのような、くたびれた身体。
ニュージーランドの片田舎、物置のような小屋でバイクと一緒に寝起きしているバート(アンソニー・ホプキンス)は、
60過ぎのつましい年金生活者。
60年代当時にすでにポンコツとされていた1920年型インディアン・スカウトを、40年かけてくず鉄や台所用品などを使って改良を続け、
ひたすら速く走ることだけに人生を捧げていた…
彼の夢は、アメリカ・ボンヌヴィルの塩平原のスピード・レースに出ること。


しかし彼にはお金も無く、支援してくれる家族もいない。
地元の単車クラブの仲間は口では応援してくれるものの、
誰も本気で彼の勝利など信じておらず、見送りにすら現れない。
唯一信じてくれたのは、隣家のトム少年だけ。
それでも彼は借金を背負い貨物船に乗って、NZからユタ州ボンヌヴィルに向かって旅立ったのでした。
道中、牽引車が壊れたり、持病の発作に襲われたり、
ようやく現地についても、レースの登録もしていなかったり年齢制限を超えていたりと
様々な困難が待ち受けているのですが…
LAのオカマや、南米出身の中古車屋や、本物のインディアン(ネイティブ・アメリカン)等、
色々な人に出会い、助けられながら自分の夢に近づいていくのです。
そして、ハイテクマシンの居並ぶ中、ポンコツバイクで世界新記録を打ち立てたのでした。

この映画の魅力は
なんといっても、バートのキャラクターによるものです。
常識に捉われず、開けっぴろげで、無邪気で奔放な男。
この映画の監督・脚本・製作は、『スピーシーズ/種の起源』や『ダンテズ・ピーク』
『13デイズ』のロジャー・ドナルドソン。
オーストラリア生れの彼は、その後NZに移住、そこで生前のバート・マンローに出会って、
71年にテレビ用のドキュメンタリー映画を作っています。
マンローが78年に亡くなってから、マンローの伝記映画を企画するもののなかなか実現に
こぎ着けることができず、26年目にしてようやく実現したのだそうです。
この映画の中の様々なエピソードは、ドナルドソンによる創作が多いのでしょうが
彼にそれを作らせるだけの魅力が、生前のバートにはあったのでしょう。


映画の中では、ひたむきに夢を追いかける、天真爛漫な少年のようなバート・モンローの姿しか見られませんが
観終った後、ちょっと調べてみたら
この人にはかつて妻と4人の子供がいたのですね。
しかし、職を投げ打ってまでバイクに熱中する男は、妻子にも身捨てられたようです。
それでも、これだけの夢に向かって突き進み、遂に世界記録を打ち立てた姿には感動せずにはいられません。

1967年には58in3 (950cc) にボアアップしたエンジンで、階級記録の時速295.44km (時速183.58マイル) を樹立。
(ウイキペディアより)
そしてこの記録は、いまだに破られていないのだそうです。

夢を信じることの素晴らしさ、人間愛の幸福感を教えてくれる映画です。

「世界最速のインディアン」 http://tinyurl.com/3zqr9tr

「バート・マンロー 」http://www.randomhouse-kodansha.co.jp/books/details.php?id=259
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4 コメント

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Unknown (tona)
2011-09-08 09:16:09
これまたハチャメチャと思われる夢に向かっていく男の人生が描かれているのですね。
妻子に捨てられ、近隣の人にも相手にされず、お金もなく、うらぶれて、なのにこの情熱は一体どこから来るのでしょう。
飛行機、鉄道、車、船、機械、カメラ、冒険などなど数え上げれば切りないほど男性ののめり込みは見聞します。こうした情熱は古今東西、主として男性に多いですね。女性に比べてスケールも違うような。
アンソニー・ホプキンス、よかったですか?
返信する
tonaさま (zooey)
2011-09-08 22:36:47
アンソニー・ホプキンスよかったですよ!
この人は本当に、控え目な老執事役も残酷な博士役も、そのために生まれてきたかのように見事にこなします。
こちらでは、やんちゃな老ライダーがピッタリ!でした。

男性ののめり込みというのは確かに凄いですね。
こういう点とても女は敵わないなあという気がします。
返信する
報告とお礼です。 (ヤマ)
2013-03-01 05:59:02
zooeyさん、こんにちは。

今日付けの拙サイトの更新で、こちらの頁を
例の拙日誌からの直リンクに拝借しております。

バート・モンロー、本当に素敵でした。
こちらで紹介しておいでの作り手との関係に
改めてあの作品が醸し出すことのできていた味わいに
納得感をいただいたように思います。

どうもありがとうございました。
返信する
ヤマさま (zooey)
2013-03-02 01:03:55
これは大好きな映画なのです。
紹介して頂けて光栄です。

バートはハチャメチャな、しかしお茶目な老人ですよねえ。
いくつになっても子供みたいで…
そんなだからこそ、あんな記録を打ち立てたことができたのでしょうが。

この映画を見て
ボンヌヴィルの塩平原にいつか行ってみたいと思っています。
ありがとうございました。
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