1962年、ソ連南部の地方都市ノボチェルカッスクで起こった市民の虐殺事件。
冷戦下のフルシチョフ時代のソ連、困窮にあえぐ工場労働者たちによる大規模なストライキが起きる。
直ちに中央から高官が派遣され、5000人のデモ隊や市民に対して無差別に銃撃が行われる。
広場は阿鼻叫喚のパニックとなり、血まみれになって逃げ惑う夥しい市民。
ソ連崩壊の1992年まで30年間、その事件は国家によって隠蔽されていた。
リューダは熱心な共産党員として長年、国家に忠誠を誓い、現在は市政委員会のメンバー。
その地位の為、一般人が群がって奪い合う食料品店でも、裏口からこっそり優遇されたりする。
それを当然のこととし、店員にも横柄な態度を取るリューダ。
夫は名誉の戦死、老いた父親と18歳の一人娘と暮らしている。
娘は若者らしく反抗的な態度で、母親や体制を批判しようとする。
頭ごなしに娘を叱りつけるリューダだったが、市民虐殺の日、娘がいないことに気が付いて必死に探し回る。
どんなにも見つからない娘の、せめて遺体をと探し回るが、遺体安置所に行っても見つからない。
そんな中KGBのビクトルが彼女に近づき、事態の隠蔽を図る国家の企みで、死体はこっそり埋められているという情報をもたらす。
「なかったことにする」隠蔽工作が、次から次へと現れる。
広場にいた人間、関りがあった人間は全員が、「何も知らない、他言しない」という誓約書にサインさせられる。
当局は街を封鎖し、「ハエ一匹出さない」(ここでもこの言葉が使われた!)ようにと命令する。
血のりが落ちない広場は、上からまたアスファルトが敷かれる。
遺体はこっそりと埋められ、怪我をした人間は病院から何処かへ連れ出され、帰って来ることはなかった。
党に人生を捧げていたリューダは、何を信じていいか分からなくなる…
ロシアがウクライナで今やってることと同じだ!と叫びたくなります。
こんな映画を84歳のロシアの巨匠コンチャロフスキー監督がよく作り、よく公開できたものだと思いましたが、この作品、ロシアの文化庁推薦となっていると知って、なお驚きました。
どうもこれは、ソ連がしたことであって、今のロシアとは違うのだということであるらしい。
おそロシア…
2020年ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞。
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