Zooey's Diary

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猫背が語る孤独「リンカーン」

2013年05月16日 | 映画


聞きしに勝る「地味で真面目な映画」でした。
南北戦争の終盤、奴隷制度を廃止するための合衆国憲法修正第13条を
下院議会で批准させるまでの攻防をめぐった作品。
2時間半の長尺の殆どのシーンが議会、あるいは議員たちとのやり取りに終始し、
観客に媚びないとも言えるが、悪く言えば退屈なこと甚だしい。
時々挟まれるリンカーン(ダニエル・ディ・ルイス)の家庭内の様子が唯一の救いですが
妻メアリ(サリー・フィールド)は始終ヒステリックに夫を責め立てるのです。

メアリの悪妻ぶりについては
米国史研究者の猿谷要氏の本で読んだことがあります。
今手元にないのでうろ覚えなのですが、氏に言わせると
悪妻の東の代表格はソクラテスの妻で、西がリンカーンの妻なのだとか。
メアリは裕福な家の出身で自由にのびのびと育ち、
かたやリンカーンは、丸太小屋育ちで学校もろくに出ていない。
リンカーンが独学で弁護士にまでなったことは有名ですが
出自の違いは本人にはどうすることもできないことで
リンカーンはそれを引け目にも思っていたらしい。
メアリのヒステリーに辟易するあまり仕事に打ち込んで
だからリンカーンは大統領にまで上り詰めたと見る向きもあるのだとか。
そういったことは、確かにこの映画からも多々窺えました。



大事に育てた長男ロバートは、両親の反対を押し切って戦争に参加する。
映画では触れられていませんでしたが
観賞後に調べると、リンカーンは3人もの息子を病気などで亡くしているのですね。
そのあたりも語ってくれないと
メアリが何故あんなにまでヒステリックにロバートの入隊に反対するのか、
観る側には分かりにくいのではないでしょうか。
映画の中では、幼い末っ子との触れ合いが
リンカーンにとっての唯一の救いだったようです。
長身のリンカーンの猫背気味の背中が、何度もセピア色の画面に登場し、
彼の苦悩と孤独を雄弁に語っていたような気がします。



議会の定員の3分の2の賛成票を得るまでの
リンカーンの政治的工作が長々と語られます。
同じような黒い服を着た数多くの議員が登場し、
民主党だか共和党だか(敵なんだか味方なんだか)非常に分かりにくい。
しかも、根回しにあれだけ時間をかけた割には
最後の数人が結局どうやって寝返ったのかが分かりにくい。
などという不満は色々ありますが
ラストシーン近くのスティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)の秘密が明かされる
場面には、胸が熱くなります。
しかし、そこまでたどり着くのはあまりに長かった…
こんな地味な映画を作ったのは
ある意味、スピルバーグの良心なのでしょう。

「リンカーン」 http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/
コメント (6)
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