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Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

キャベツと雑草

2012年10月01日 | 


昨日、「あざらしのキス」の短編を探して久しぶりに読み返した村上春樹の
エッセイの中で、もうひとつ印象的だったもの。
「野菜の気持ち」という短編。
”『世界最速のインディアン』という映画の中で、アンソニー・ホプキンズ演じる老人が、
「夢を追わないなんて野菜と同じだ」と言っていた。
(中略)彼は「インディアン号」という骨董級のバイクを改造して
時速三百キロを出すことを人生の目標にしている超ファンキーなじいさんで、
隣家の男の子に向かってそう言う。”
”でも話はそこですんなりとは終わらない。
男の子は「でも野菜って、どんな野菜だよ?」と聞き返す。
そういう意外な突っ込みをされるとじいさんもけっこう困って、
「ええと、どんな野菜かなあ。そうだなあ、うーん、
まあキャベツみたいなもんかなあ」と話がついゆるい方向に流れてしまう。”
(「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」より)

”僕はだいたいにおいてそういう話のへたり方が好きなので、
だからこの映画にわりに好感を持った。”
と、著者は言っている。
私は少々驚いたのでした。
私もこの映画はかなり好きなのですが、
しかしこんな場面は少しも覚えていなかったから。
これは2005年の映画で、今から7年も前のことなので無理はないのですが。
村上春樹がこのエッセイを書いたのは、もっと前のことでしょうし。

それにしても、人によって印象に残る場面って違うなあと思うのです。
この映画の中で、誰もが忘れられないようなクライマックスのシーンなどは別にして
私が今でも覚えているのは、例えばこんなシーン。
件の老人はニュージーランドの郊外の住宅地に一人住い。
家も仕事もそっちのけで、毎日おんぼろバイクの改造に熱中している。
当然家はボロボロ、庭は雑草でボウボウ。
ある日、隣家の男が怒鳴りこんでくるのです。
庭の草をなんとかしろよ、おまえのせいでこの辺の土地の価格が下がっちまうんだよ!と。

笑ってしまいました。
なんとなれば岐阜の私の実家でも、両親が同じようなことを言って
空いている土地の管理に頭を悩ませていたから。
日本もニュージーランドも同じだなあ、と。
キャベツの話は私は覚えていませんでしたが
こんな田舎の土地を巡る言い争いのシーンなど、村上春樹はきっと
気にも留めなかったことでしょう。

写真はFBから

コメント (4)
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