Zooey's Diary

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全編がブラックジョーク「下流の宴」

2010年09月20日 | 
面白かった。
426ページ、結構ボリュームがありますが
軽いので一気に読めます。

48歳の福原由美子は都内に住む専業主婦、彼女の悩みは
20歳の息子、翔のできが悪く、高校を中退してしまったこと。
”まさか自分の息子が、中卒になろうとは考えてもみなかった。(中略)
過度の期待をかけた覚えはない。東大などということは考えたこともないが
せめて並みの上レベルの大学を出て、人が聞けばああ、あそこねといわれる程度の会社に行く。
そのくらいのことを息子に期待して何の悪いことがあろうかと由美子は思う。
塾を強制することもなかったし、ゲームを取り上げたこともない。
有名教育評論家の本に書いてあることをなるほどと思い、土日だけ時間を決めてやらせるようにした。
朝御飯は必ず食べさせ、日曜日には博物館や美術館に連れて行った。”

”しかし息子は地団太を踏みたくなるような子どもであった。
小学校中学年になっても、意欲や好奇心といったものがまるで希薄なのだ。”
その息子のお尻を叩き、なんとか私立中堅の中高一貫教育校に入れたものの、
高校をドロップアウトし、ニートになってしまう。
漫画喫茶などでバイトしてその日を過ごし、あげくは
なんとも不器量で下品な女の子と同棲し、結婚すると言い出した…

その女の子、玉緒に向かって由美子が切る啖呵。
”うちは、主人も私も大学を出ています。
主人は早稲田を出て一流企業に勤めるちゃんとしたサラリーマンです。(中略)
私の実家は医者だったんです。父親の兄も、私の妹の主人も医者をしています。
言ってはナンですけれども、沖縄のどっかの島で飲み屋をしているあなたの家とは
違うんです。”

そこまで言われて奮起した玉緒(高卒・バイト暮らし)は、
そんなに医者が偉いのか、それなら私が医者になってみせると宣言するのです…

翔の一つ上の姉、可奈がまた実に嫌な女なのです。
親も驚くほどの見栄っ張りで、自分の美貌を武器にし、
玉の輿に乗ることしか考えていない。
そのために、”名前を聞いてぱっとしない共学の大学より、
偏差値が少々落ちても有名なお嬢様大学”を選んだくらい。
可奈の結婚観は非常に分かりやすい。
”ものすごくいいカシミアのカーディガンをさらっと羽織って、
青山の紀ノ国屋インターナショナルで買い物をしている主婦”
になることが彼女の夢なのです。
そして願い通りの京大卒、”年に億近い給与を取る外資のディーラー”北沢と
結婚して白金のマンションに住み始めるのですが…
どんなオチが待っているのだろうと期待して読み進めていくと
胸のすくようなしっぺ返しが。

全編これブラックジョークのような作品です。
翔の台詞「あのさ、絶対に負け惜しみじゃなくて、オレ、頑張っている人たち見て、
すごい、とは思うけど、憧れたり、そうなりたいって思ったことはないワケ。」
これが翔の性格をよく表わしています。
由美子の悲嘆、焦り、絶望も分かるような気がしますが
ここまで交わらないともうどうしようもないのかも…
母親として読むと、中々切ないジョークでもあります。
最後の〆には大笑いさせて頂きました。

これ、近い将来テレビドラマになりそうな気がします。
その配役を考えるのも楽しみかも…

「下流の宴」
コメント (5)
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