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Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「扉をたたく人」

2009年07月09日 | 映画
2008年アメリカ、トーマス・マッカーシー監督。
随分と控え目な映画です。
静かに始まり、大きな落ちもなく、抑制が効いたままに終わっていく。
しかしこの作品、アメリカ公開時にわずか4館からスタートし、
クチコミで270館まで拡大したのだそうです。
リチャード・ジェンキンスがアカデミー賞主演男優賞にノミネート。

妻に先立たれ、心を閉ざし無気力な日々を送っていた大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)。
ある日、ニューヨークのアパートでシリアからの移民であるタレク(ハーズ・スレイマン
)と出会い、タレクからジャンベ(アフリカン・ドラム)を習い始める。
ふたりの友情は深まっていくが、タレクが不法滞在を理由に拘束されてしまう…

最初のうちの、ウオルターの孤独が痛々しい。
経済学の講義の内容は20年間同じ、レポートの提出に遅れた学生は有無を言わさず拒絶、
本を書いたと威張っているが、その実、共著者として名を連ねただけ、
唯一の趣味のピアノは一向に上手くならず、ピアノ教師から才能がないと見放される…
心を頑なに閉ざし、彼はその日その日をただぼんやりと生きていたのです。

そんな彼が、陽気な移民タレクと知り合い、ジャンベという太鼓の手解きを受けることによって見違えるように変わっていく。
陰鬱で狭小だった彼の世界に明るい光が射し込み、、
公園でタレクの仲間達とのセッションにも加わるようになって
その世界は無限大に広がってゆく。
さんざめく笑い声、暖かい眼差し、ほとばしる汗、むんむんとした熱気、
そんなものに満ち満ちてゆくのです。
一人の人間が、たったひとつの太鼓によってここまで変われるということに
観る側は、驚くばかりです。

物語の後半は、タレクが不法滞在者として逮捕され、
9.11以降の不寛容になったアメリカの厳しい現実に焦点が当てられます。
しかし、沢木耕太郎氏が朝日の「銀の街から」で言っていた
「つまり、この映画は、太鼓を膝の間に挟み、手の平で叩くというたったそれだけのことで、
自身が、だから世界が変わる契機を掴み得るという、ひとつの奇跡についての物語だったと
いうことでいいのかもしれないのだ。」
という意見に、私も全面的に同意します。

☆4

「扉をたたく人」
コメント (4)
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