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Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

2024年02月29日 | 映画

FIFAランキングで世界最下位の米領サモアのサッカーチーム、2001年にはW杯予選史上最悪の0−31でオーストラリアに大敗、その後も1ゴールすらできず10年以上が経過。次の予選を4週間後に控えた所に、アメリカを追われたコーチ、トーマス(マイケル・ファスベンダー)がやってきて、最弱チームの立て直しを図る。

「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ監督というので楽しみにしていたら、いきなり画面に出て来ました。
この人はニュージーランドの先住民マオリの血を引いているのだそうで、だからこの独特なポリネシアン気質に詳しいのでしょう。
必死に鍛え上げようとする鬼コーチと、暖簾に腕押し、人生は頑張ることより楽しむことが何より大事という選手たち。
なんともすれ違う様が面白い。



トランスジェンダーの選手が結構重要な役割で出て来て、近年の映画界のLGBTに対する忖度かと思いきや、「ファファフィネ(第3の性)」と呼ばれるその存在は、あちらでは何千年も続く文化の一部なのだそうです。
そして、往年の名作「ベストキッド」のオマージュがあちこちに出て来て笑えました。
ユニフォームに「MIYAGI」の名前が入っていたり、ゴールキーパーがあの鶴のようなポーズをとってみたり、
「Next Goal Wins」とはまた分かりやすいタイトルだと思ったら、負けているチームが休み時間が終わる直前にゴールを入れたら逆転勝利する、子供たちのゲームのことなのだそうです。



にしても、アメリカ領サモアとサモア共和国、ふたつのサモアがあるとは知りませんでした。
これはアメリカ領サモアの話です。

公式HP 

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「コット、はじまりの夏」

2024年02月15日 | 映画

1981年、アイルランドの田舎。9歳の少女コットは、親にはネグレクトされ、姉たちにも邪険にされている。賭け事に夢中の父親、生活に疲れた母親。内気なコットは家庭にも学校にも居場所がなく、ひっそりと息を潜めるように生きている。そんな彼女は母親が出産するまで、親戚の夫妻の家に預けられることになった。妻のアイリーンは優しく、夫ショーンはぎこちないが温かく彼女に接するが、愛情をかけられたことがないコットは中々素直に甘えることができないでいた。



緑豊かな農場、樹々の間に揺れ動く木漏れ日。
質素な家の中のほの暗い部屋、柔らかく差し込む光。
内気な少女を優しく包み込むキンセラ夫妻にも悲しい秘密があり、それが次第に解き明かされていく。



あのような環境で育ったのだから仕方ないと思いつつ、コットがあまりに遠慮がちで自分の感情を出さないことに、観ていて多少イライラします。
母親が出産し、いよいよ家に帰ることになる。
コットは帰りたくないが、中々口に出せない。
キンセラ夫妻も返したくないが、やはり自分たちの分をわきまえていて口には出せない。
3人は黙って車に乗り込み、コットの家を目指す。
相変わらず散らかった家に着いても、久しぶりに会った親はお帰りとも言ってくれない。
キンセラ夫妻が帰ることになり、最後の最後にコットがしたことは…



地味な色調、地味なストーリーの映画です。
しかしラストシーンで涙腺が緩みました。
全編聞き慣れないアイルランド語ですが、時々英語の台詞が混じったりする。
確認してみたら、アイルランドでは第一公用語がアイルランド語(ゲール語)、そして第二公用語が英語であるが、英語を日常的に話す国民の方がずっと多いのですって。
この作品、アイルランド映画で初めてアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたのだそうです。

公式P 

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「ジャンヌ・デュ・バリー国王最期の愛人」

2024年02月09日 | 映画

18世紀フランス、栄華を極めた国王ルイ15世の最後の公妾ジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯を映画化。
ジャンヌは貧しいお針子の私生児として生まれ、美貌と知性を持ち合わせた高級娼婦となり、社交界の人気者になる。遂にベルサイユ宮殿に足を踏み入れ、国王ルイ15世の公妾となるが、労働者階級の庶民(しかも娼婦)が国王の愛人となるなんて!と周囲の目は冷ややかだった。ジャンヌはへこたれずに王との愛を育むが、王は天然痘で死去、更にフランス革命の機運が巻き起こり…



ベルサイユ宮殿での大規模撮影、シャネルによる衣装監修と、とにかく豪華絢爛です。
そして当時の宮殿内での様々な風習が、滑稽としか言いようがなくて面白い。
王の公妾となるには既婚者でなくてはならなくてジャンヌも形ばかりの結婚をするとか、王には背中を見せず小刻みに後ろに後退するとか。
あの豪華なベルサイユ宮殿、中に森林や運河まで有する広大な宮殿で私はかつて一日過ごしたのですがとても廻り切れず、しかもそこで財布を掏られたショックで、途中から記憶が曖昧なのです。


(マリー・アントワネット)

映画の画面で宮殿の豪華さを堪能できるのはありがたいが、王の意地悪な娘たち、ジャンヌをさげすむ貴族の女たちと、あまりに描写が類型的な気がします。
そしてジャンヌの性格も描写不足で、どうしてそこまで王に愛されたのかがこれではよく分からない。
俳優マイウェンが監督・脚本・主演を務めたそうですが、愛妾は切れ目がないほどの艶福家であった国王が、一目で恋に落ちたほどの美貌とも思えない。
ジョニー・デップがフランス語でルイ15世を演じたというので話題になったようですが、短い単語の台詞ばかりで、これならと納得。
ジャンヌが養子のように可愛がっていた黒人少年ザモルにも最後糾弾されたのは何故なのかよく分からず、残念でした。



等々文句を並べたてましたが、時代の波に飲み込まれたジャンヌの生涯の末路には、言葉を失くしました。
あの時代に興味があるのなら、十分に楽しめると思います。

公式HP 

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「哀れなるものたち」

2024年02月01日 | 映画

19世紀末ロンドン、不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植されて蘇生する。大人の身体に幼児の脳を持つ彼女は好奇心の塊で、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。ベラは様々な経験をし、時代の偏見から解放され、驚くべき成長を遂げていく。



予告編で観たエログロさに恐れをなしていましたが、ベネチア国際映画祭で金獅子賞、今年のアカデミー賞で11部門ノミネートと言われては、やはり観ない訳にはいかない。
しかし…
あそこまでセックスシーンが必要か?



常識も恥じらいも知らない幼児の精神、しかし成熟した身体を持ったベラが、自慰や彼女の言う「熱烈ジャンプ」(furious jumping、多分オーガズム)に夢中になる様にはもう目も当てられない。
男に束縛されたり、所有物にされたり、一文無しになって娼館で働いたりとまあそれなりに苦労もする訳ですが、彼女はどれも快楽の手段として楽しんでいるようでもある。
そこにゴージャスな衣装、壮観な映像、自由極まりない音楽(不愉快な不協和音も多かった)、油絵のような極彩色の色使いが絡まります。
世紀末のリスボン、豪華客船、アレクサンドリア、パリ、その風景画面や装飾の素晴らしさに圧倒されます。



荒唐無稽なファンタジーではあるが、世界に旅出て知識や教養を深めることで、束縛しようとする男たちや社会から解き放される女の生き方を戯画化して描いた、女性の自己確立のメタファーとも言えるでしょう。
ラスト近くに出て来た、ベラの本来の夫が、女性器切除までしようとしたのには恐れ入りました。
でも私はこのヨルゴス・ランティモス監督の「女王陛下のお気に入り」も、ちっとも好きになれなかったのでした。

「Poor Things」公式HP 

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不器用な男と女「枯葉」

2024年01月24日 | 映画

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキの新作。
ヘルシンキのスーパー・マーケットで働くアンサは、消費期限切れで廃棄処分の食べ物を持ち帰ってるのがバレて、クビになる。ホラッパは工事現場で働いているが、仕事中に酒を飲んでいるのがバレて解雇される。二人はカラオケバーで出会ってお互いに惹かれるが、不運な偶然が重なり、中々会うこともできないでいた…



若くもなく、お金も定職も持たず、さえない男と女。
アンサの住む小さな住まいはシンプルと言えば聞こえがよいが、小さな机と小さなベッド以外、見事に何もない。
紆余曲折の後、ようやく男を食事に招くのですが、その直前にお皿1枚とカトラリーを買い足すくらい。
テレビすらなくていつの時代?と思うが、ラジオからはロシアのウクライナ侵略のニュースが流れて来る。



登場人物はみな愛想がなく、突っ立ったまま棒読みのように台詞を口にする。
女の勤務先のスーパーの警備員も上司もニコリともせず、常に彼女の行動を監視していて、些細な理由で鬼の首を取ったように解雇する。
それは男が働く工事現場でも似たようなもので、この映画では人間の悪い面しか描かないのかと暗澹とした思いで観ていると、そうでもなく、とぼけた味、控え目なユーモアが所々に顔を出してきます。



孤独を抱えながら、人生に殆どあきらめながら(でも完全にはあきらめていない)、不器用に触れ合いを求めて生きる人々。
アンサが拾ったみすぼらしい犬が、彼女の孤独を優しく癒します。
落ち葉の舞い散る道を二人と一匹が歩く後ろ姿が、微かな希望を感じさせるラストシーンでした。

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「きっと、それは愛じゃない」

2024年01月20日 | 映画

ロンドンに住むドキュメンタリー映画監督ゾーイ(リリー・ジェームス)は、幼なじみのパキスタン人カズがお見合い結婚することになったと知る。この現代に、何故親が選んだ相手と結婚を?と疑問を持ち、カズの結婚までの軌跡を追う新作ドキュメンタリーを制作することに。結婚式でラホールまで行ったゾーイは、彼に惹かれる自分の気持ちに気づくが…



軽いラブコメかと思いきや、異文化、異人種、宗教観、世代間などのギャップがたんまりと盛り込まれていて驚きました。
カズは成功した医師であり、ゾーイ家のすぐ隣の似たような家に住んでいるのですが、中に一歩入ればまるで違う文化と宗教がある。
隣であっても47番地と49番地はまるで違う大陸だ、テロが起こる度に謝らなければならないという、カズの言葉は重い。
見合い結婚の方が離婚率は遥かに低い、親の選んだ相手なら間違いはないだろうとカズは言う。
ゾーイは経済的に自立した女性で結婚願望はさほどなく、ろくでもない男と情事を繰り返しては自己嫌悪に陥っている。
そんな男と女が、不器用に惹かれ合っていく。



ラホールの(金持ちの)結婚式の、なんと絢爛豪華なこと。
親が選んだ結婚相手の美しいこと、そしてしたたかなこと。
しかし文化や人種や宗教が違っても、親が子供の、祖母が孫の幸せを願うことは同じ。
エマ・トンプソンが、能天気に見えながら娘を思いやるゾーイの母親役、いい味を出していました。



監督のシェーカル・カプールはラホール生まれ、脚本のジェミマ・カーンはパキスタン前首相イムラン・カーンと結婚してラホールとイスラマバードに10年間ほど在住していたといいます。
原題は「What's love got to do with it」、直訳すれば「愛はそれと一緒に何をすべきか?」。この場合itが結婚を表すとしたら、「結婚に愛は関係あるの?」というような意味と受け取っていいのかな。

公式HP 

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「弟は僕のヒーロー」一口評

2024年01月16日 | 映画

「弟は僕のヒーロー」
初めての弟の誕生を喜ぶ5歳のジャックは、両親から弟ジョーは特別な存在だと聞かされる。
ジョーがスーパーヒーローだと信じるジャックだったが、やがて特別の意味を知り、思春期になると、家族を疎ましく思うようもになる。
離れた街の高校生になったジャックは、好きな女の子にいいカッコしたくて、ジョーを死んだことにしてしまう。
小さな嘘が嘘を呼び、家族や村を巻き込んで八方塞がりとなり…。
イタリアの高校生ジャコモ・マッツァリオールがダウン症の弟を撮影した5分間のYouTube動画が大評判となり、そこから生まれたベストセラー小説を映画化。
小粒ですが、ほっこりさせられる家族愛物語です。




恵比寿ガーデンシネマで映画を観た後、ガーデンプレイスのスイーツカフェ「Yellow Cakes」でケーキとお茶を。
オレンジのは中にオレンジピール、レーズン、シナモンが。
赤いのはストロベリーとフランボワーズのムース。
どちらもオモチャのようにツヤツヤしていますが、お酒が効いて甘酸っぱい、大人の味です。

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「パーフェクトディズ」

2024年01月04日 | 映画

私の周りの映画好きな友人からやたらと評判の良い映画。
カンヌ国際映画祭で主演男優賞、エキュメニカル審査員賞受賞、そしてアカデミー賞国際長編映画賞の日本代表となったと聞けば、これは観ない訳にはいかない。

トイレの清掃員として働く平山(役所広司)の日々の生活を淡々と描いた作品です。
古ぼけた木造アパートで目覚め、缶コーヒーを買い、トイレの掃除を黙々とこなし、銭湯に行き、小さな居酒屋で夕食をすませ、文庫本を読みながら眠りにつく。
そこまでは予告編や友人の感想から大体分かっていたのですが、それで何故感動するのか?



普通で言ったらつまらなそうな毎日だが、平山は風の動きや木漏れ日の光の様子など小さなことに喜びを見つけ、その世界を楽しんでいるように見える。
「こんなふうに生きていけたなら」というキャッチコピーが、ピッタリと納まる。
特にラストシーンのロングショット、平山の泣いているのか喜んでいるのか分からない表情、それが絶賛されるのも分かるような気がします。
しかし誤解を恐れずに言えば私は、そこまでは感動しませんでした。
10点中8点というところか。
(アヤちゃんにその言い方やめろよ!と叱られそうですが)
アニマルズの「朝日のあたる家」、そしてそれを浅川マキ風に歌う石川さゆりの歌、ニーナ・シモンの「feeling good」にはグッと来ましたが…
私はやはり、起承転結がある、メリハリの効いたストーリーの方が好きだなあ。



渋谷区内の公共トイレを世界的な建築家やクリエイターが手掛けた「THE TOKYO TOILET プロジェクト」。
そのPRの一環としてまずは短編映画の企画が立ち上がり、役所広司とドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースの参加が決まってから、長編劇映画として再構想されたのだそうです。
その伝で言えば、この作品は完璧に成功している。
こちらに出て来る美しい公衆トイレに、私は殆ど行ったことがあります。
特に好きなのは小さな男の子が泣いていた、木の板を寄せ集めたような造りのトイレ。
あれは松濤の鍋島公園の中の、隈研吾の作品。
そしてピンクや黄色の透明なガラスの壁でできており、中に入って鍵をかけると不透明になるという不思議なトイレは、富ヶ谷の代々木深町小公園の中。
そしてトイレだけでなく、東京の下町、公園、銭湯、隅田川、スカイツリーといった、新旧取り混ぜた東京の魅力を、十二分に発信している映画だと思います。

「パーフェクトディズ」公式HP 

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「Till」口笛を吹いただけで殺された少年

2023年12月22日 | 映画

1955年、ミシシッピ州で14歳の黒人少年が白人女性に口笛を吹いたことで殺された「エメット・ティル殺害事件」を映画化。
50年代、夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、シカゴの空軍で働きながら一人息子エメットと平穏に暮らしていた。ある日、エメットはメイミーの出身地であるミシシッピ州の大叔父宅を訪れ、食料品店の白人女性キャロリンに軽い気持ちで口笛を吹く。そのことで白人の怒りを買い、凄惨なリンチの上、殺されてしまう。
最愛の息子の変わり果てた姿と対面したエイミーは、この事件を世間に知らしめるべく、大胆な行動を取る。



こんなマイナーな映画を観る人は少ないでしょうから書きますが、エイミーはエメットの顔が見えるように棺の蓋を開いて葬儀を行ったのです。
エメットの顔というのが、画面にハッキリとは現れませんでしたが、言葉を失くすものでした。
片方の眼球を抉り取られ、ボコボコに殴られ、頭を撃ち抜かれ、性器を切り取られ、河に捨てられたので数倍に膨らんでいた(観賞後Wikiで調べたら、映画はまだソフトに描かれていた)のです。
これは、「母が息子を送り出した時と出迎えた時」という2012年のリサ・ウィッティントンによる絵です。



圧倒的な白人優位社会のミシシッピでは、裁判でも犯人もキャロリンもろくに罪に問われないのですが、その後、黒人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなったそうです。
14歳といえば、まだ中学生の子ども。
その子どもが口笛を吹いたというだけで、こんな目に遭ったとは。
それだけのことをしても罪に問われない地域があったとは。
そしてそれが、まだほんの67年前のことだったとは。
「BLM」(Black Lives Matter)運動の、今年の集大成のような映画でした。

「Till」公式HP 

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「ナポレオン」

2023年12月09日 | 映画

若き軍人ナポレオンが1793年のトゥーロンの戦いで英国軍を破り、皇帝に成り上がった栄光の時代から一転、エルバ島への追放、百日天下、そしてワーテルローでの大敗北、セントヘレナ島で死去するまでの全生涯を2時間半にまとめたのは、「グラディエイター」の巨匠リドリー・スコット監督。



なんと、マリ―・アントワネットの処刑シーンから物語は始まります。
広場の大群衆の歓声の中、ギロチンで斬首されるマリ―・アントワネット、そんな不穏な社会情勢の中、砲兵士官ナポレオン(ホアキン・フェニックス)はその天才的戦術によって、頭角を現していく。
しかしジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)に惚れ込み、彼女の前では多情な女に振り回される情けない男に過ぎない。年上の子持ちの未亡人である彼女の何処がそんなに魅力的なのか、映画の中ではさっぱり分かりませんでしたが、戦場から数百通のラブレターを送り、不倫の噂を聞くとエジプトの戦場を放り出して帰国する始末。



その情けない男に指揮される戦場は、しかし熾烈を極める。
最初のトゥーロンの戦いから生首が飛ぶような凄惨な戦闘シーンが続きましたが、ことに息を呑んだのは、アウステルリッツの3帝会戦のシーン。
ナポレオンは、敵軍を雪が積もった広大な氷の湖上に追い詰める。そこに無数の大砲を撃ち放ち、膨大な数の兵士や馬が、飛び散る血と共に割れた氷の下に沈んでいくのです。これは日経の映画評によると、”戦場を隅から隅まで完全に再現し、11台のカメラを同時に回して”撮影されたのだそうです。



2時間半の映画の7割位が凄惨な戦闘シーンで、私は何度目を固く瞑ったことか。
「ナポレオンが生涯、指揮した戦闘は61。その戦闘におけるフランス軍将兵の戦死者300万人」というテロップが最後に出ます。
一人の女に振り回される情けない男が大軍を率いて、これだけの膨大な戦死者を出したという事実、そこから戦争の狂気と愚かさを描きたかったのか。
しかし以前だったら残酷な戦争映画を観る度に、だから戦争はしちゃいけないのだと強く思ったものですが、今、現時点でも戦争は行われているのですね。

ナポレオン公式HP 

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