アカペラ (新潮文庫) | |
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新潮社 |
正直に言うと、山本文緒さんは小説を書く上で影響を受けた作家のひとりです。
病気療養後6年ぶりの出版となった作品集の文庫版。私も六年ぶりの山本作品。
山本作品は少し目をそらしたくなる女の毒が描かれていて、それに刺激を受けたのでが離婚を経て再婚された後の作品から少し趣きが変わった印象がありましたが(でも、前過ぎて詳細は忘れた)。
「アカペラ」が休業前の作品、「ソリチュード」「ネロリ」が明けの作品。
表題作は視点とともに文体が変わる手法で、どこ連れていかれるのかなーて感じでしたが展開にはあっと息を飲み、最後にはやがて切なく。「ソリチュード」も「ネロリ」も派手な展開はないのですが、読み終わると胸にちくりと何かが残っているような感じ。何かなあと思うと結末がびっしーっと決まるんじゃなくて「ああ、このあとどうなるのかなあ」て読み手に思わせて終わるのですね。
その余韻が心地よく、夕焼けを眺めているような読後感でした。
あとがきより「休養中、廃業を覚悟した瞬間もあったのだが、今振り返ってみると、それほど大袈裟なものでもなかったな、と感じる」また、その体験が次の作品へとつながりますように。
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