エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

山眠らんとす

2016年11月16日 | ポエム
過日、南アルプスを遠望する温泉に入った。
周囲は、唐松黄葉が見頃であった。

樅の木だけが青々として、そのコントラストに見入ってしまった。
野天風呂は、豊かな湯量で身体を癒してくれた。
遠望すると、南アルプスはもう眠りに入ろうとしてる。



頂上に雪をいただいた勇姿は、正しく冬の佇まいであった。
麓から中腹にかけては、装う秋の名残があった。



街は、静謐に包まれている。
短い秋を惜しむかのように、煙っていたのであった。



視線を左に振ると、富士山が微かに見えた。
富士山は、確かに眠っていた。
従える甲府盆地は、あくまでも静かであった。







「明けもせず粛々と山眠らんとす」







帰途、双葉町のサービスエリアで富士山を眺めた。
富士山も、その従えられている山脈も冬に入らんとしていた。

短い秋は、冬の寒さを予感させつつ冬に入っている。
冬隣という季語が無かった、2016年の11月である。



     荒 野人




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