エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

さらば夏の光!

2009年09月10日 | 日記
さらば夏の光よ!
という小説がある。

狐狸庵先生の呼称を持つ遠藤周作の作品である。

遠藤は11歳でカトリックの洗礼を受ける。
慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。
一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究した。
のである。


「さらば夏の光よ!」は仲の良い二人の少年と彼らが愛した少女をめぐって、青春の苦さを描いた小説である。

この小説は甘酸っぱい読後感をくれる。

「沈黙」あるいは遺作とも言うべき「深い河」は、読む者に深く、熱い印象を与える大作である。
キリストの愛とも真っ向から向き合っており、深い吐息をつかずにはいられない。
そして、自分が一段深くなれる小説でもある。


ぼくは「深い河」を数度読み返した。
読み返すたびに新鮮な感動に包まれたものである。


ぼくは今日、夏の光に別れを言おう。




        さらば夏の光

           ~あなたへ捧げる~


     夏の光がぼくの記憶から遠のいていく
     さらば!
     とも言わせずにだ

     夏の光がぼくの掌から漏れようとしている
     では!
     とも言わせずにだ

     夏の光はぼくの中に入り込み
     ぼくのこころを鷲づかみにして
     自分勝手に去ろうとしていく

     ぼくは何の了解もしていないというのに
     ぼくのこころをこぼれ落としていくかのように

     夏の光はいまギラギラしてはいない
     してはいないけれど
     ぼくの中で燦々と輝きつづけている

     夏の日差しの中で
     密やかに交わしたベーゼの
     驚きに満ちた甘さ
     記憶が痺れるように揺れた記憶の刻印

     せめて言わせてくれないか
     さらば夏の光よ
     と

     そして新たな秋の木漏れ日の中で
     ぼくは出会うのだ

     すばらしく健康で
     夏の光にも負けないあなたの瞳と
     たおやかな視線
     そして耳にささやくようなトレモロに

     ぼくは秋の日差しの中で
     ただひたすら
     あなたを思い続けるのだ

     ぼくは
     チラチラと揺れ続ける葉陰の揺り椅子
     に身をゆだねる

     それが運命であったかのように

     ぼくは問おう
     そこにあなたはいてくれるのか
     と

     夏の光が去って
     ぼくは
     いま秋の叙情に染まっていくのだ







さらば・・・夏の光よ。

秋の木漏れ日が、ぼくの目の前にチラついている。

木漏れ日は、逃してはならない。
しっかりと記憶の中に捉えるのである。





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