平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

江~姫たちの戦国~第16回「関白秀吉」

2011年05月03日 | 大河ドラマ・時代劇
★お金を使って関白になった秀吉(岸谷五朗)。
 今回はそれだけの話である。
 これはドラマではない。単なる情報番組、歴史再現バラエティ。
 これなら月曜日の関口宏さんの番組を見ていた方がマシ。

 大体、この作品、誰に感情移入して見ればいいのだろう?
 江(上野樹里)はただの目撃者でしかないし、金で権力を勝ち取るような秀吉に感情移入など出来るわけがない。
 これをドラマにするには、秀吉に一歩踏み込んで、彼の権力に対する妄執とか、自分が天下を収めなければ戦乱の世は治まらないくらいの信念を描かなくてはならないのにそれがない。常に上っ面。

 オープニングタイトルを見れば、脚本協力で田渕○○さんという名前。
 おそらく脚本・田渕久美子さんのご身内であろうが、これじゃあ、一昨年の小松江里子センセと同じだ。
 田渕○○さんがどれだけ脚本に貢献なさっているかわからないが、身内だからということで許されていいんでしょうかね? 大河ドラマに名前が載るなんてすごいことなのに電波を私している感じがする。

★話は逸れたが、江の人物像は、篤姫と同じ。

 ・何事も自分の目で確かめなくては前に進めないこと。
 ・政治に関わり、いろいろなアイデアを出す所。

  江が秀吉にした様に、篤姫も夫・家定にアイデアを提供していた。
 この作家はともかく引き出しが少なすぎる。
 「篤姫」が成功したから、二度同じことをしても視聴者は喜ぶと思ったら大間違い。

★今回ラストで茶々(宮沢りえ)が秀吉に心動かされた様だが、僕には全く理解できなかった。
 茶々は言う。
 「私はますますあの者が嫌いになった。だが、よくぞあそこまで、関白までとは大したものじゃ」 
 「関白までとは大したものじゃ」という感想から秀吉の側室になるまでの心の動きを説得力のあるものにするには、茶々の権力志向や「豊臣家を奪って復讐してやる!」みたいな狂気を描き込まなくてはならないと思うのだが、今後、それが描かれるか?
 今の茶々はあまりにも普通すぎる。おとなしすぎる。



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6 コメント

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意に反した協力者 (TEPO)
2011-05-03 15:01:04
>江が秀吉にした様に、篤姫も夫・家定にアイデアを提供していた。

篤姫は家定を愛していましたが、江は
「父上と呼ばぬか」「嫌です!」
相変わらず秀吉に対する反発を露わにし続けています。その「アイデア」なるものも
「四国遠征の全責任を秀次に押しつければいい」「前の将軍足利義昭様に直に頼むのです」「将軍より偉くなることしかありませぬ」「関白になられたどうですか」
秀吉のためを思ってというよりはむしろ反発故に、秀吉の願望の最も素朴な帰結でありながら常識的には非現実的な暴論-「それが出来るくらいなら苦労はない」-を無責任に投げつけただけ。
しかし、秀吉の常識離れした実行力がこれを現実のものとし、結果として江はおそらくは自らの意に反して秀吉に「コロンブスの卵」的なアイデアを与えたことになったわけです。そして秀吉は反発されていることを承知で相談相手に呼ぶという一種の信頼と好意を江に示します。
この秀吉と江との奇妙な相性を私は一種のコメディとして見ておりました。

秀吉視点「太閤記」型の物語でも秀吉に感情移入できるのは卑賤の身から立身するプロセスであり、昇り詰めた後は旭の輿入れ、大政所人質、朝鮮出兵など、否定的な話題のみです。
おそらく今後江はおね(→北政所→高台院)やなか(→大政所)ら羽柴(豊臣)家良識派の女性たちとの連帯意識を深めつつ、「秀吉の悪行」を批判し続けてゆくのだろうと予想します。そしてその反発にもかかわらず、秀吉からも一定の好意と信頼を寄せられる、という何とも好都合な主役特権の伏線が今回ではないかと思いました。

むしろ興味深いのは茶々の今後です。
龍子によれば、秀吉の出世欲はすべて茶々の気を引くため。関白内定を羽柴家の身内より前に告げにきたということで、茶々の心中の反秀吉の鉄壁に微かなひびが入ったというところでしょうか。
今後、茶々が秀吉の側室となる過程には何か仕掛けが展開されることでしょう。さらには「豊臣家を乗っ取って復讐を果たした傾国の悪女淀君」というオーソドックスな淀殿像をとるのか否かも含めて注目したいと思います。
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しばらくこの繰り返し (コウジ)
2011-05-04 11:58:05
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>今後江はおね(→北政所→高台院)やなか(→大政所)ら羽柴(豊臣)家良識派の女性たちとの連帯意識を深めつつ、「秀吉の悪行」を批判し続けてゆくのだろう。

おそらく、こういう展開になるのでしょうね。
ということは今回の様な内容が秀吉が亡くなるまで続くんですよね。
江の考え方や生き方、おね達との関係が深まればいいのですが、ずっとこのくらいの描写で行きそうな気もします。
特に朝鮮出兵なんて、どの様に扱われるんでしょうね。
何しろ侵略戦争ですからね、江はそれこそ死にもの狂いで反対してほしい。
でも、ちょうど「天地人」で兼続たちが秀吉に迎合した様に、ライトなリアクションで終わりそう。

結局、歴史を描く人は、右でも左でもいいですから、明確な思想や歴史観がなくてはならないと思うんですよね。
だが、残念ながら「江」の作家も「天地人」の作家もそれがない。
求め過ぎでしょうか?

茶々も<仕掛けが展開されることでしょう>けれど、今の段階から布石を打っておかないと説得力のあるものにはならない気がします。
その計算が出来るか?

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大河ドラマの知的基盤 (TEPO)
2011-05-04 22:38:06
>明確な思想や歴史観がなくてはならない
>だが、残念ながら「江」の作家も「天地人」の作家もそれがない。

おっしゃりたいことはよく分かります。「篤姫」は名作だったと思いますが一点だけ違和感を覚えたのは、養父斉彬の意を受けた慶喜支持から夫家定に従い家茂支持へと転じるという最重要場面のキーワードが「家族」という政治性のかけらもない現代語だったことです。
要するに現代人の感覚を無自覚に持ち込んでしまう時代錯誤と政治に対する視点の欠落という二点が田渕さん、小松さんに共通する限界だと言えるでしょう。
特に現代的な「愛」の観念を戦国時代に持ち込むという思想史上の初歩的誤りを自作の中軸に据えてしまった小松さんは最悪でした。

「Jin」のコメントで森下佳子さんを大河に推されていたお気持ちもよく分かります。他の作品を見てはおりませんが、「Jin」を見るだけでも彼女にはコウジさんの期待に応えうるだけの教養と構成力とが感じられます。

この機会に私も日頃考えていることを申しますが、「時代考証」の役割についてももっと考え直してよいように思います。
最近戦国物の考証と言えば小和田氏ですが、氏がどこまで実質的なチェックをされているのかは疑問です。原作では真田幸村の姉である初音を妹としようとした初歩的な年代考証のミスを視聴者に指摘されたことはご記憶でしょう。ただの「お飾り」だとご本人の名にも傷がついてしまいます。日本近世史、特に織豊期を専門とする研究者の層は厚い筈です。他ならぬ大河ドラマが裾野の再生産に寄与しているからです。もう少し厳しい専門家を起用してもいいのではないかと思います。さらには、考証にあたる専門家の発言権をもっと強化してはいかがでしょう。次のドラマを選定する企画段階から専門家の意見も入れるシステムがあってもよいのではないかと思います。
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現代人の感覚 (コウジ)
2011-05-05 10:56:26
TEPOさん

漠然と考えていたことを表現していただき、ありがとうございます。

>現代人の感覚を無自覚に持ち込んでしまう時代錯誤と政治に対する視点の欠落という二点。

ポイントはまさにここですよね。
比較してしまいますが、「坂の上の雲」の登場人物たちって、やはり明治の人間。
「JIN」の咲も武家の娘。
「江」の人物像で咲が描かれていたら、きっと咲は仁先生のプロポーズを何のためらいもなく受け入れていた様な気がします。

政治に対する視点に関しても、たとえば朝鮮出兵に関して、答えは出ないまでも、作家なら真剣に悩むべきでしょうね。

時代考証については、どの様なシステムで考証がなされているかわかりませんが、もっと踏み込んでほしいですよね。
幕末でも戦国時代でも、相変わらず女性は<香>や<貝合わせ>をしている。
絶対に幕末と戦国時代では、行動や発想が違うはずなんですけどね。

最近、僕も歳をとって保守的になったのか、<大河ドラマの品格>みたいなものを考えてしまいまいます。

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Unknown (みのむし)
2011-05-06 17:47:46
つっこみネタドラマとして楽しんでいた
私ですけど、ここ数回で
それも限界に近くなってます。
秀吉が関白になりたいのも茶々のためっていうだけのことだったとしたら・・
なんかしょうもないなぁ。っていう気しか起きなくて・・
もっと秀吉には笑いを取りつつも骨太で
あってほしいと思うんですけど・・・
それもないので・・なんか面白くないです。
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確かに (コウジ)
2011-05-07 11:29:52
みのむしさん

お久しぶりです。

>秀吉が関白になりたいのも茶々のため

という秀吉像にはがっかりしましたよね。

僕には、つっこんで笑いにして作品を楽しむという能力がないので、結構毎回、落胆させられてストレスです。
それでも見続けるのは、がっかりさせられる作品からも学ぶことはある、と思うからで……。
なぜ、つまらないかの分析。

でも、今回の秀吉を見ていると、今後のワクワク感はないですよね。
秀吉は当面の江の敵なのですから、それなりに強く魅力的でなければ。

「この作品はつまらない」というのは自分の思い込みで、捨てなくては……とは思うのですが。

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