平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒 「新・Wの悲喜劇」

2008年03月06日 | 推理・サスペンスドラマ
 第17話「新・Wの悲喜劇」

 動機は「夫と同じ空気を吸いたくないから」。
 犯行方法は「浴室でドライアイスをぶちまけ二酸化炭素中毒に。意識を失ったところを熱湯につけて」
 事件解明のきっかけは床に残っていた足跡。浴槽で夫を発見したふりをした妻は警察に通報。浴槽からこぼれた水で妻の靴下はびしょ濡れ。
 しかし電話までの足跡がない。
 妻はどうやって電話したのか?
 駄目押しは、浴槽の換気口からはき出される白い煙を見ている目撃者がいたこと。
 その煙は上に上がらず、下に降りていた。
 重いドライアイス(二酸化炭素)の煙だから。
 刑事は言う。
「ご主人の遺体を解剖すれば、二酸化炭素中毒がみつかるはず」

 と、この様な形でわずか30分で事件解決。
 毎回意外なトリックを見せてくれる「相棒」が描く事件としては、杜撰だし遺体解剖すれば真実がわかってしまう安易なもの。
 しかし、これにはさらにひとひねりあった。
 実は前半30分で描かれた妻・白鳥寿々美(中島知子)の犯行は夢。妄想。
 「同じ空気を吸うのが嫌な」夫への殺意はあり、ドライアイスも買ったが、実行には移されなかったこと。

 そして次なる展開。
 寿々美(中島知子)が夫の帰りかと思ってドアをあけると刃物を持った暴漢。
 殺されそうになる寿々美。
 この暴漢の背景には……。

 以下、ネタバレ。

 同じく妻を殺そうとした夫がいた。
 右京(水谷豊)は帰宅した夫がチャイムを鳴らさずそのまま入ってきたことで、夫の犯行意思を見て取った。
 夫の動機は自己防衛。このままでは妻に殺されると思ったから。
 そこでネットの殺人サイトで暴漢を雇った。

 見事なひとひねり。
 さすが「相棒」。
 おそらく製作側は前半の事件、犯行だけでは60分持たないと考えたのだろう。
 そこでこんなひとひねりをした。
 これでドラマが濃くなった。

 日常生活の中でふと抱く想い。
 「この人と生活してていいのだろうか。わたしにはもっと他の人生があるのではないだろうか」と感じるのはわりと一般的なこと。
 その心理を発展させていくと寿々美(中島知子)になる。
 すなわち
 「夫は離婚を認めようとしない」→「離婚が出来ないのなら殺すしかない」→「どの様にして殺すか」→「ドライアイスを使おう」→「ドライアイスを買う」→「でも自分にはこれを実行できるのだろうか」
 こうした心の動きと行動を経てひとつの犯罪が生まれるわけだが、この過程が怖いし人間ドラマになっている。

 またこの過程、時系列に沿って丹念に描いていけばとても60分に収まらない内容だが、これを今回の様に描けば60分に圧縮して描ける。
 見事な作劇だ。

 最後に夫が暴漢を雇った殺人サイトについて。
 結局雇った男は単なるシロウトだったが、「シロウトが殺し屋になってしまう」「簡単に殺人を依頼できてしまう」そんな時代の怖さも描いている。



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