平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

天地人 第43回「実頼追放」

2009年10月26日 | 大河ドラマ・時代劇
 「実頼追放」

★兼続(妻夫木聡)は<現実路線>の武将として描かれるべきでしたね。
 上杉家を守ること、民を守ること、生きることのためには<義>など関係ない。<義>の理想などくそ喰らえ。
 そんなふうに描かれれば、人物として一貫していた。

 今回注目すべきはこのせりふ。
 「弟らは道を誤っておりまする。義だ誇りだと申しておる輩は、己の体面のみを欲している者。上杉の目指すものはそんな小さなものではない」

 こう言われたら実頼(小泉孝太郎)はつらい。
 確かに世間の評判は気にしていたけど、実頼がしたことはもっと純粋なところから来ていた行動。
 現に景勝(北村一輝)は実頼のことを<気骨のある男>と評しているわけだし。
 それをこんなに簡単に否定されては浮かばれない。

 あるいは石田三成(小栗旬)との約束はどうなったのか?
 兼続は「われらの正義を伝えるために生きたはず」。
 でも本音はどうあれ世間の目には徳川に擦り寄っているように見えるわけだし、<正義>を伝えることにはなっていない。
 あるいはこの擦り寄りの背後に隠された本音があるなら、「正重殿をお迎えするのは我が家にとって大きな誇りでございまする」と絶対に言ってはならない。
 他に言いようがあるはず。

★まあ、義や兼続の人物像を論じていると、この作品は矛盾だらけなので、ここまでにするが、今回はドラマとしても実に薄い。
 疑問だが、実頼は本当に改心したのであろうか?
 この状態なら普通切腹している。一回刀を振り上げたんですからね。
 あるいは高野山に身を潜め、幸村と共に再起を図るぐらいのことをするはず。
 この辺、どうも説得力がない。

 こうなるとどうしても気になるのは最終回の最後のナレーションですね。
 兼続の生涯を総括してどうナレーションするか?
 ここに作家が描きたかった兼続像が表現されてくるはず。
 「義に生きた生涯」なんてことは絶対に書かないで下さいよ、小松先生。



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4 コメント

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走り見にとどめました (TEPO)
2009-10-26 15:29:54
>兼続(妻夫木聡)は<現実路線>の武将として描かれるべきでしたね。

全く同感です。すでに御館の乱の時点から、兼続を上杉家中にあって遠山の陰謀に対抗しうる唯一の知将として描く可能性がありました。折角今まで生かしていたのですから、遠山を「生涯の宿敵」としてもっと前面に出し、兼続と闘わせる骨格とすれば筋の通ったドラマになっていたと思います。
綺麗事に矮小化された「義」による汚染のためか、あるいは妻夫木さんの「甘いマスク」がミスキャストだったためか、そのために兼続に必要とされる原田甲斐張りの「厳しさ」が描けなかったのが失敗の原因でしょう。

元々敗者のドラマは見るのが辛いもの。先週は菊姫主役のドラマとして結構見られましたが、最近は兼続周辺の話となると惨めなだけです。篤姫も戊辰戦争の敗者には違いないのですが、彼女の生き方には筋が通っていたので最後まで惨めさの片鱗も感じませんでした。
ぐだぐだの兼続では見るに堪えないので、今回はメディアプレーヤーのバーを走らせて走り見をするのにとどめました。興味は「仁」に移っていますので。
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以下同文です (平ちゃん)
2009-10-26 19:08:58
「弟らは道を間違えておりまする‥‥」という兼続の言い分、バックミュージックでうやむやにしようとしましたが誤魔化しきれませんでしたね。実頼たちがどう道を誤ったのか、詳細に語らなかった。‥というより、語れなかったのでしょうね、実頼の言い分は正論ですから。ある意味「義」に拘る兼続ですから、内心「弟に痛いところをつかれた」と思ったのではないでしょうか。
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「仁」ですよね (コウジ)
2009-10-27 09:16:17
TEPOさん

いつもありがとうございます。
遠山との対立図式、面白いですね。
兼続には明確に対立する人物が必要でしたね。
まわりのみんなが兼続のことが好きで仲間ではドラマにならない。
現在は家康でしょうが、すでに存在があまりにも大きすぎる。
遠山はその点でいいポジションだと思います。

御館の乱は兼続にとって転機だったかもしれませんね。
これを契機に現実路線にいく。
上杉家に敵を作るが、家のため民のために自分が泥をかぶるみたいな作劇があってもよかったかもしれません。

あとはやはり「仁」ですね。
天地人はあまり書くことがなくなってきたので、月曜日は「仁」のレビューを行くことにします。
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なるほど! (コウジ)
2009-10-27 09:24:04
平ちゃんさん

またお出でいただきありがとうございます。

>「弟らは道を間違えておりまする‥‥」
のせりふは兼続の本心ではなかったのかもしれませんね。
本多を説得するために敢えてそう言った。

この辺が曖昧な点でやはりこの作品、兼続の描写が浅いんですよね。
兼続がもっと迷って苦渋の選択をしたという描写があれば説得力があったのですが、それがないからよくわからない。

実頼もそうですが、この作品の人物は簡単に妥協納得してしまう人が多いですよね。
一貫しているのは家康と三成、遠山ぐらい。
だから存在感があるんですよね。
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