平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

映画音楽で映画を語ろう!~「明日に向かって撃て!」 雨にぬれても俺は負けない。もうすぐ幸せな日がやって来るのだから

2020年06月29日 | 洋画
 1960年代後半から70年代にかけて『アメリカン・ニューシネマ』という作品群が登場した。
『俺たちに明日はない』
『イージー・ライダー』
『真夜中のカウボーイ』
『明日に向かって撃て!』

 この時代、ベトナム戦争が泥沼化して、アメリカなるものに若者が疑問を持ち始めたんですよね。
「あれ? 俺たちの信じていたアメリカがおかしいぞ」
「あたしたち、国家やアメリカなんて信じない。夫や恋人を戦争になんか行かせない」
「ヒーロー? 勧善懲悪? 夢のような恋愛物語? 何だ、それ? 現実は全然違うじゃん!」
 それが反戦運動、ヒッピー文化、ドラッグカルチャーに発展した。
『アメリカン・ニューシネマ』も生まれた。

 その作品群の内容は──
 反体制的で、刹那的で、性や精神の解放を謳い、最終的には体制側に圧殺される。
 …………

 さて『明日に向かって撃て!』
 アメリカン・ニューシネマが西部劇を描いたらどうなるか?

 

 ううっ、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、カッコいい!

 でも、本編の彼らはぜんぜんカッコ良くないんですよね。
 列車強盗をするが、爆薬の量を間違えて大爆発! 紙幣があたりに飛び散る!(笑)
 メキシコで銀行強盗をするが、スペイン語をしゃべれないので紙に書いたメモを読んでカネを要求する!(笑)

 ここには、ジョン・ウェインのような強くてたくましい西部劇のヒーローはいない。
 ジョン・ウエインはアメリカの象徴だが、この作品は否定している。

 おまけに、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じるブッチ・キャシディとサンダンス・キッドは保安官から追われている。
 彼らは逃げ、アメリカに居場所がなくなり、国境を越えて南米ボリビアに向かう。
 アメリカに居場所がない、というのも象徴的だ。

 そして彼らは『自転車』に乗る。

 

 西部劇の主人公なのに馬ではなく、自転車に乗る。
 これも何と象徴的だろう。

 この自転車シーンの時に流れるB.J.トーマスの『雨に濡れても』が泣ける。

♪ 雨が頭の上に落ちて来る(Raindrops Keep Fallin' On My Head)
 何もかも上手くいかない気がするよ
 だから太陽に言ってやったんだ
 寝てないで仕事しろ
 でも、わかってることがひとつある
 たとえ憂鬱な日がやって来ても俺は負けない
 幸せな日はもうすぐやって来るのだから ♪

 これ、まさにブッチとサンダンスの気持ちなんだよなあ。

 保安官に追われてて自分の居場所がない。いつ殺されるかわからない。
 すごく不安だ。憂鬱だ。
 でも負けない。
 もうすぐ幸せな日がやって来る。
 不安だけれども、今は愛する人と自転車に乗って、一瞬の幸せを確認しよう。

 こんな彼らの迎える結末は何なのか?
 映画のラストシーンは警官隊に囲まれたブッチとサンダンスが突撃するシーンで終わるんだけど、もしかしたら彼らは生きているのかもしれない。
 だって幸せな日は必ずやって来るのだから。

 それでは聴いて下さい。

 雨に濡れても  [日本語訳付き] B.J.トーマス(YouTube)
 ※『明日に向かって撃て!』の名場面で構成されています。


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