吉之助(鈴木亮平)は慶喜(松田翔太)に言う。
「徳川慶喜様ではなく、ひいさまこそがあなた様なのですな」
慶喜のアイデンティティ。
それは〝ひいさま〟だった。
〝徳川慶喜〟という名前や〝十五代将軍〟という肩書きは、彼を縛り、苦しめるものでしかなかった。
彼は〝徳川慶喜〟であるがゆえに徳川家と家臣を守らねばならず、〝十五代将軍〟であるがゆえに軍事や政治で覇を唱えねればならなかった。
しかし、彼の本質は〝ひいさま〟。
何も背負わずに自由気ままに生きるのが彼の本分。
吉之助も自分のことを〝牛男〟と言っていたが、ふたりはかつての関係を取り戻したのだ。
吉之助はこうも言った。
「ひいさま、よくぞ逃げて日本を守ってくださった」
これを聞いて涙ぐむ慶喜。
自分を理解してくれる人間が現れたからだ。
他者から見れば、今の自分は〝戦場から逃げた卑怯者〟。
プライドの高い慶喜にとっては屈辱であっただろう。
しかし、自分のことを理解し感謝してくれる人間が現れた。
しかもそれは旧友の吉之助。
慶喜にとって、こんなに嬉しいことはなかっただろう。
同時に吉之助と慶喜は心を通わせた。
ふたりの間には〝脇差し〟があったが、斉彬(渡辺謙)が仲介したのかもしれない。
………………
吉之助VS慶喜
吉之助VS天璋院(北川景子)
吉之助VS勝海舟(遠藤憲一)
今回は3つの対話のシーンで見せましたね。
すべての役者さんの演技に凄みがあった。
天璋院は自分の思いを吉之助に拒絶されると、
「徳川の名にかけて私は命を賭けて戦うのみです」
勝はキセルの灰を落とすと、
「西郷どん、あんたの新しい国って何だ? 民が塗炭の苦しみを味わう国なのか?」
幾島の南野陽子さんも見事でしたね。
背中が曲がり、頭が垂れて完全な老婆になっていた。
そこには凜としていたかつての姿はない。
しかし、主張する時はしっかりしている。
………………
吉之助は無理をしていたんでしょうね。
江戸城開城のすべてを終えると、畳の上で爆睡。
顔の上には天璋院の託した『二宮尊徳の農業書』。
もともと吉之助が求めていたのは〝軍事〟ではなく、〝民を豊かにすること〟だったので、尊徳の農業書は吉之助がアイデンティティーを取り戻した象徴だろう。
勝海舟の「民に塗炭の苦しみを味合わせるのか?」も吉之助のアイデンティティー復活を後押しした。
一方、そんな吉之助と入れ替わるように登場したのが、大村益次郎(林家正蔵)。
今作の大村益次郎は〝軍事オタク〟だよな。
強力な武器を使い、いかに効率よく敵を屠るかだけに興味を抱き、楽しんでいる。
さすが靖国神社に今も銅像がある人物。
現代の安倍晋三もそうだけど、長州人っていうのはタカ派が多い?
おそらく今後、西郷と大村は対立していくのだろう。
「徳川慶喜様ではなく、ひいさまこそがあなた様なのですな」
慶喜のアイデンティティ。
それは〝ひいさま〟だった。
〝徳川慶喜〟という名前や〝十五代将軍〟という肩書きは、彼を縛り、苦しめるものでしかなかった。
彼は〝徳川慶喜〟であるがゆえに徳川家と家臣を守らねばならず、〝十五代将軍〟であるがゆえに軍事や政治で覇を唱えねればならなかった。
しかし、彼の本質は〝ひいさま〟。
何も背負わずに自由気ままに生きるのが彼の本分。
吉之助も自分のことを〝牛男〟と言っていたが、ふたりはかつての関係を取り戻したのだ。
吉之助はこうも言った。
「ひいさま、よくぞ逃げて日本を守ってくださった」
これを聞いて涙ぐむ慶喜。
自分を理解してくれる人間が現れたからだ。
他者から見れば、今の自分は〝戦場から逃げた卑怯者〟。
プライドの高い慶喜にとっては屈辱であっただろう。
しかし、自分のことを理解し感謝してくれる人間が現れた。
しかもそれは旧友の吉之助。
慶喜にとって、こんなに嬉しいことはなかっただろう。
同時に吉之助と慶喜は心を通わせた。
ふたりの間には〝脇差し〟があったが、斉彬(渡辺謙)が仲介したのかもしれない。
………………
吉之助VS慶喜
吉之助VS天璋院(北川景子)
吉之助VS勝海舟(遠藤憲一)
今回は3つの対話のシーンで見せましたね。
すべての役者さんの演技に凄みがあった。
天璋院は自分の思いを吉之助に拒絶されると、
「徳川の名にかけて私は命を賭けて戦うのみです」
勝はキセルの灰を落とすと、
「西郷どん、あんたの新しい国って何だ? 民が塗炭の苦しみを味わう国なのか?」
幾島の南野陽子さんも見事でしたね。
背中が曲がり、頭が垂れて完全な老婆になっていた。
そこには凜としていたかつての姿はない。
しかし、主張する時はしっかりしている。
………………
吉之助は無理をしていたんでしょうね。
江戸城開城のすべてを終えると、畳の上で爆睡。
顔の上には天璋院の託した『二宮尊徳の農業書』。
もともと吉之助が求めていたのは〝軍事〟ではなく、〝民を豊かにすること〟だったので、尊徳の農業書は吉之助がアイデンティティーを取り戻した象徴だろう。
勝海舟の「民に塗炭の苦しみを味合わせるのか?」も吉之助のアイデンティティー復活を後押しした。
一方、そんな吉之助と入れ替わるように登場したのが、大村益次郎(林家正蔵)。
今作の大村益次郎は〝軍事オタク〟だよな。
強力な武器を使い、いかに効率よく敵を屠るかだけに興味を抱き、楽しんでいる。
さすが靖国神社に今も銅像がある人物。
現代の安倍晋三もそうだけど、長州人っていうのはタカ派が多い?
おそらく今後、西郷と大村は対立していくのだろう。
>吉之助VS天璋院
>吉之助VS勝海舟
>今回は3つの対話のシーンで見せましたね。すべての役者さんの演技に凄みがあった。
おっしゃるとおり、それぞれ俳優さんたちの熱演が光っていました。
しかし、吉之助が天璋院および慶喜に会ったというのはフィクションでしょう。
それに伴って各人物のスタンスも含めての史実の改変についてツッコむ向きもおられるようですが、あくまで私も物語世界内部の論理で見てゆこうと思います。
常識(史実)的には吉之助と勝海舟との会談が本作最大の見せ場だとは思いますが、私にとってより重要だったのは吉之助と慶喜との虚構の会見でした。
ここ数回、私たちにはよく分からなかった吉之助と慶喜との「動機」が明らかにされたからです。
実は「ロッシュから逃げていた」
慶喜のこの告白は十分納得のゆくものです。
おそらく史実の慶喜の思いにも近いでしょうし、慶喜のキャラが立ちました。
この場面、慶喜サイドではおっしゃるとおり感動的でした。
しかしながら、吉之助の側はどうでしょう。
吉之助は、慶喜がロッシュの誘いに乗って「薩摩割譲の密約」を受けたものと信じ、「絶対に許すことの出来ない売国者」慶喜の「首を取る」まで闘わなければならないと考えたがゆえに「鬼西郷」に変貌した、というのが本作の論理だった筈です。
しかし、それはすべて吉之助の「思い違い」だったということになってしまっています。
これはあまりにお粗末と言わねばなりません。
「おんな城主直虎」の最後、「信長による家康暗殺の陰謀」が「思い違い」だったという顛末に比肩するくらいの「ずっこけ」だと思います。
こうなると可哀想なのが「キャラ」としてのふきです。
彼女の今後はまだわかりませんが、今のままだと、吉之助に「思い違い」のきっかけとなる情報を流した挙げ句、(慶喜に追い出されたという形はとっているものの)慶喜を見捨てて去って行った、ということになっています。
せっかく第二話から育て上げてきたキャラなのに、これではあんまりではないかと思います。
俳優さんたちの涙を流しての熱演で何とか持たせている感じですが、ストーリーに無理があると折角の熱演も浮いてしまう感じがして残念です。
いつもありがとうございます。
ご指摘の点が歴史をフィクションで描くことの難しさですよね。
慶喜はもちろん、篤姫も吉之助と過去に深いつながりがあったので、あっさりと描くわけにはいかない。
ドラマ的にも対決が必要。
後の伏線となる、篤姫の「西郷がどのような国をつくるのか、楽しみにしています」という言葉も引き出さなくてはならない。
「思い違い」に関しては、吉之助は、慶喜のことが怖かった、と言っていましたね。
慶喜が怖かったため徹底的に叩きつぶさなければならないと考えたのでしょうが、慶喜が語った〝幕府と薩長が本格的に戦争を始めれば、英国、フランスが参戦してくる〟という事態を吉之助も予想できないわけがなく、どうしても吉之助の人物像に矛盾が出て来てしまう。
とはいえ、人間は矛盾の塊であり、間違いを犯す生き物。
彰義隊の件でも「おいは徳川家臣の忠義を見誤った」と言っていましたし、吉之助も例外ではないのでしょう。
と脳内補完する(笑)
あとは勝が「ふたりのケンカはふたりで収めな」と語ったように、腹を割って話すことは重要ですよね。
ふきに関しては、今後どのように描かれるんでしょうね。
定石では、ふきは慶喜の所に戻るのででしょうが、その時にふたりはどんな会話を交わすのか?
作家さんの手腕が問われる所です。