平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君」 第9回「遠い国へ」~まひろと道長、直秀の遺志を継いで世を糺す決意!

2024年03月04日 | 大河ドラマ・時代劇
 直秀(毎熊克哉)の死──作家は直接描くことを避けた。
 まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が鳥辺野に行ってみると、横たわる複数の遺体。
 散楽の人たちで、その中には直秀もいた。
 殺害される瞬間、直秀が何を思い、語ったのかは描かれない。
 描かれたのは、土を握りしめたということのみ。
 これが意味するのは、悔しさ? 怒り? 抵抗?
 解釈は視聴者に委ねられる。

 道長が扇子を握らせたのは何だろう?
 SNSでは「芸人として葬りたかったから」と考察している方がいて、なるほど!
 その後は、直秀の遺体を埋葬するために涙を流しながら地面を掘る道長とまひろ。
 カラスが散楽の仲間の肉を啄みに来て追い払う道長。

 そして道長の慟哭。
「すまない……! 皆を殺したのは俺だ……! 余計なことをした……!」
 ここでも直秀たちがなぜ検非違使たちに殺されたのかは具体的に描かれない。
 SNSで紹介されている公式ガイドブックに拠れば「流刑地まで運ぶのが面倒だったから」らしいが、
 道長の「手荒なことはしないでくれ」という言葉を検非違使が逆に解釈したと分析する人もいて、
 なるほど!
 この方が「余計なことをした……!」という道長の言葉がスッキリする。
 いずれにしても道長が「余計なことをした」結果、命が奪われてしまった。
 本来なら鞭打ちや腕を折ることで済んだのに……。
 道長は自分の未熟さを痛感したことだろう。
「運ぶのが面倒だから殺してしまう」「藤原家に忖度して曲解してしまう」という人間の負の部分を
 道長は理解していなかった。

 直秀の死後、まひろと道長が何を考えたかも多くは語られなかった。
 唯一語られたのは、まひろのラストの言葉。
「男であれば勉学に励み、内裏に上がり、世を糺します」
 これだけでまひろと道長の決意が伝わった。
 まひろと道長は「世を糺す」ために、これから生きていくのだ。
 直秀の思いを引き継いで生きていくのだ。
 これが直秀に対する供養でもある。

 上手い脚本ですね。
 普通の脚本家なら、直秀が殺害されるシーンを劇的、あるいはショッキングに描きそう。
 具体的な説明がないのも視聴者の想像力をかき立て、逆にまひろたちの気持ちが伝わって来る。
 貴族は死者に触れない、死者に触れるのは忌まわしいこと、という前振りがあるから、
 まひろたちが直秀に人間として、身分を越えて接していたこともわかる。
 まひろと道長が初めて抱き合うのが、このシーンだったというのもせつない。
 …………………………………………………………………………

 宮廷では花山天皇(本郷奏多)を追い落とす陰謀が進行中。

・兼家(段田安則)に取り憑いていた忯子(井上咲楽)の怨霊が兼家から離れて内裏を彷徨っている。
・だから成仏させる必要がある。
・成仏させるには花山天皇の退位しかない。
 という物語をつくるために、兼家は重態を装っていた。
 父の権謀術数を知って、道長は自分の甘さを思い知ったことだろう。
 世の中にはとんでもない化け物がいる。

 藤原実資(秋山竜次)と妻の桐子(中島亜梨沙)のパートはギャグパート。
 自分を追い越して出世している藤原義懐(高橋光臣)を妬んで、けしからん。
 義懐の横暴に対して、けしからん。
 こんな実質に妻の桐子は「わたしに言わずに日記にお書きになればいいじゃないですか?」
 この実資の日記が『小右記』になって、後にこの時代の貴重な歴史的な資料になる。
 芸人のロバート秋山さんがクソ真面目な人物を演じて、笑いを取っている所が面白い。

 あとは──
 藤原穆子(石野真子)と赤染衛門(凰稀かなめ)の女の闘いが勃発しそう。
 まひろの従者・乙丸(矢部太郎)と道長の従者・百舌彦(本多力)の関係も面白い。

コメント (2)
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