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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

プロ野球しぐさの深読み心理学 ①

2006年10月22日 | スポーツ
 「プロ野球しぐさの深読み心理学」(新構社)では、行動心理学者が野球を論じている。
 バッターとピッチャーが一対一で対峙・対決する野球には「間合い」があり、見ている者は選手の心理を読みやすい。
 それは滅多に動きがストップすることがないサッカーやバスケットボールとは大きな違いだ。
 おじさんたちに喜ばれるのもそのためだろう。

 さてまずはピッチャーの心理学から。
 ピッチャーはプライドが高くて負けん気が強いというのはよく言われることだ。
 最近のピッチャーでは西武の松坂。
 2死、三振を取ってマウンドを去る時のふてぶてしい表情。
 ピッチャーのプライドの現れそのものだ。
 それゆえマナーも悪い。
 現役時代の星野仙一は巨人に完投勝利した時は「それでもおまえら巨人か。俺はまだ10回でも投げられるぞ」と巨人ベンチに向かって叫んだらしいが、これくらい言い切れる自負心がなくてはならない。
 しかし、そんなピッチャーは実は繊細だ。
 繊細さはプライドの裏返しとも言える。
 一流のピッチャーはバッターに打たれた時は、配球・コースすべてを覚えているという。
 よく打たれるバッターには苦手意識もある。
 ピッチャーはマウンドで自分の弱さと戦っているのだ。
 打たれてコーチがマウンドに行って「大丈夫か」と言われた時、ピッチャーは絶対に「大丈夫です」と答える。決して自分からダメですとは言わない。
 そんなピッチャーの交代時期を亡き仰木監督は目を見て判断したという。
 また自分の心が折れないように、相手に飲まれないように、強がる。
 佐々木なども自信満々でマウンドに出て来て、自分を優位に見せようとしたらしい。見せ方もひとつの「技術」なのだ。
 プライドと繊細さでピッチャーを見ると、様々なものが見えてくる。
 その他、ピッチャーの特性としては非常にストレスの多いポジションであること。
 確かに9回2死まで勝っていても、逆転打を打たれれば今までの努力が無に帰してしまう商売だ。ストレスは多い。そのためピッチャーは切り換えがうまくできなくてはいけないらしい。引きずっていてはストレスを貯めてしまう。星野仙一は打たれればベンチの茶碗を投げてストレスを発散したというが、それぞれストレスの発散の仕方があるらしい。

 いずれにしてもこうした選手の心理を読めることは、観戦を深くする。
 これが野球の面白さだろう。

★追記
 投球術とは、いかに打者のタイミングを外すかということらしい。
 一流の投手、打者同士の対決では力の差は紙一重。
 それゆえ打者はタイミングを合わせようとし、投手はタイミングを外そうと努力する。フォームもそうだが、投球と投球の間合いもそのひとつだ。

 また打率という点では、下記の江川のコメントが面白い。
「打率はあくまで過去の通算の数字であって、この場面でヒットの出る確率とは違うのです。私は今のピッチャーとバッターの調子を比較したとき、ヒットの出る確率は5割以上あると思います」

 ちなみにID野球について
 今ではどこでもやっていることらしいが、ID野球とは次のことを頭に入れてバッターに向かうことらしい。
 相手バッターの調子、得意・不得意の球種・コースの分析、右投手・左投手の打率・得点圏打率、苦手ピッチャー、チャンスに強いのか弱いのか。 
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桑田ラスト登板・移籍

2006年09月25日 | スポーツ
桑田 巨人ラスト登板、移籍で現役 (スポーツニッポン) - goo ニュース

 桑田らしい無器用な意思表示。
 巨人批判と相まって波紋を呼んでいる。
 だが、その無器用さが好きだ。
 自分に対する誠実さが好きだ。

 スポーツ選手は個人業であるから、その力を認められ場を与えられる所に行くのは当然。
 それを個人として意思表示しただけのこと。
 発言の反響や球団に与える影響などを考慮すべきという意見もあるが、それはオトナの対応。
 そして、そんなオトナの対応がプロ野球をつまらなくしている。
 プロ選手は組織の思惑などを気にせずに自分を表現すべき。

 通常、オトナの対応をした選手には球団のフロント入りやタレント・解説者活動、OB界での地位などが見え隠れする。
 そんな引退後のメリットをかなぐり捨てて自分の気持ちを表現した桑田は純粋すぎる。愚かだ。
 だが、今の時代、こんな純粋で愚かな人間はいない。

 さて桑田はこう語った。
「目標に向かって努力するのが男の美学。達成できなくて辞めるかもしれないけど、そのプロセスが大事」
 桑田はまだ燃え尽きていないのだろう。
 たとえ目標の200勝が達成できなくても、ボロボロに打たれても自分が納得いくまでやってほしい。
 プロスポーツが人々の心に何かを伝えるものだとしたら、今後の桑田の登板はがんばっている人の力になるはず。
「目標に向かって努力するのが大事。プロセスが大事」
 このメッセージをその登板で表現してほしい。

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全日本女子バレーボール ワールドグランプリ 

2006年08月21日 | スポーツ
日本がブラジルに16連敗/バレー (日刊スポーツ) - goo ニュース

 2006年の柳本ジャパン。
 キューバ、韓国には3-0で完勝。
 中でもよかったのは若手選手の成長だ。
 10代でアテネオリンピックを経験した大山佳奈、木村沙織。
 大山はテクニック・器用さは高橋みゆきなどに及ばないが、さらにパワーアップした。
 木村はセッター・アタッカー・レシーバーをこなす選手としての幅を備えた。
 あっけらかんとした性格で見失われがちだが、彼女は器用。華がある。
 いずれは全日本の中心選手になるのではないか?
 そして新たな若手の登場。
 荒木絵里香。
 大山の同級生で大山の影に隠れてきた地味な存在だったが、開花した。
 花には遅咲き・早咲きの花がある。
 荒木は遅咲き。もっともっと開花していくだろう。
 落合真理も同様。
 怪我やチームの解散などの苦難が彼女を襲い、何度もバレーを辞めようと思ったという。
 荒木と落合、このふたりには遅咲きの雑草魂を見せてほしい。
 そして、小山修加は昨日のブラジル戦だけなので未知数。でも楽しみだ。

 この様に若手が台頭してきた今年の柳本ジャパン。
 若手ゆえに未熟な所もある。
 それが昨日のブラジル戦。
 大山はその無器用さゆえに今後、何度も壁にぶつかっていくだろう。韓国・ブラジル戦では研究されたのか、彼女のスパイクは止められた。となると彼女はさらに上の選手にならなければならない。大山がどこを目指すのかは、本人や監督次第だが、できれば小手先のテクニックを身につけるのではなく、さらにパワーアップしてほしい。それが彼女の無器用さに合っている。
 木村は昨日のブラジル戦でサーブの集中砲火を浴びた。
 これも試練。
 しかし弱点が露呈しただけいい。レシーブを鍛え直せばいいからだ。
 彼女が昨日受けた屈辱はきっと彼女を奮起させるだろう。
 荒木、落合、小山はまだまだ未知数。
 特に身長182cm、最高到着点315cmの跳躍力を持つ小山の潜在能力はすごい。成長過程にある彼女らは試合での試練を受けてさらに大きく育っていくだろう。
 この様に選手育成がうまい柳本監督。
 すぐに悩む大山には起用を外してベンチで試合を見せる方が有効だと考えたのだろう。
 天然の木村には逆に屈辱を味合わせた方が、彼女に堪えると思ったのだろう。
 そう考えると、昨年まで荒木や落合を起用しなかったことも柳本監督の考えではなかったかと思えてくる。下積み、同期や後輩が活躍している姿を見せることは彼女たちを強くした。
 花にはそれぞれ育て方がある。

 今年の柳本監督のテーマは-2(マイナス2)、個々人がミスを2つ少なくすれば、チームも5位-2で3位になれる。
 しかし、完成されていない大山らがさらにパワーアップして+2(プラス2)になれば、チームはさらに強くなれる様な気がする。
 柳本監督の完成された最終的なチームとはどの様な形であろう。
 個人の成長は必ずしも監督の思惑どおりには行かないだろうが、2年後のオリンピックでどの様なチームを見せてくれるか楽しみだ。

★関連記事
http://blog.goo.ne.jp/entertainment_2005/e/06faef4ed06467cb22756d346f93daaf
 柳本昌一

http://blog.goo.ne.jp/entertainment_2005/e/2f311592474e7d2a6452e7989a3b6524
 栗原恵・大山佳奈

http://blog.goo.ne.jp/entertainment_2005/e/7f643127c034a50d60b08f89a538e4c6
 ワールドカップ2003
 
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亀田興毅・世界戦

2006年08月03日 | スポーツ
興毅“不可解判定”で世界奪取 (スポーツニッポン) - goo ニュース

 亀田興毅世界戦。
 この判定結果に物議をかもしている様だ。
・1ラウンドでのダウン、その後はポイントを取り合っての互角。
・1ラウンドでのダウンを補っての亀田の挽回(有効打もあり)。
・ファン・ランダエタの力量勝ち(1ラウンドでダウンもとったし、11・12ランドの亀田の動きは止まっていた)
 評価は様々。
 個人的には、ポイントを取り合っての互角という印象。
 ランダエダは1ラウンドでダウンをとっていることもあり、判定で勝つ作戦に出た様だ。亀田に打ち込まれるとそれを補うために打ち返してポイントで互角にもっていった。ボクシングの採点ルールでは「各ラウンドに優劣をつけるルールがあり、引き分けのラウンドはほとんどない」とのことだから、引き分けと判定されるラウンドがあったら、結果はどうなっていただろう。
 また、動きが止まった12ラウンドの金氏(韓国)の判定は10-9で亀田が取り、結果、トータルで亀田の勝ち。
 この辺が亀田の勝利をすっきり喜べない原因となっている。
 もっとも、もうひとり亀田の勝ちとしたフランスのジャッジのタロン氏は114―113とし接戦を物語っている。

 さて、ここからが本題。
 スポーツ選手は「物語」を背負う。
 それが人々に語り継がれる「伝説」になる。
 今回の亀田の勝利は、その物語にどの様な影響をもたらしただろう。
 まず、やらせ・八百長のイメージがついてしまった。
 年末の防衛戦を予定しているテレビ局の意向、タイアップ・バックアップ企業の意向、そんなものも見え隠れする。
 実際にそんなことはないとしても、今後の亀田の試合にはそんなものを見え隠れしてしまう。
 これはマイナス。
 こういうイメージのついてしまった選手は、どんなに凄くても「伝説」にはならない。
 逆に負けていたらどうだろう。
 世界の壁は厚かった。さらに努力・挑戦してついに王座奪取!
 その物語の方が亀田は伝説になれる。
 亀田選手の試合後の発言「どんなもんじゃい!」も気になる。
 実際は「どんなもんじゃい!」と胸を張れるような内容ではなかったから。
 亀田はこれで半分のファンをなくした。

 亀田が「伝説」になるためには、亀田は即刻ベルトを返上。ランダエダと再戦して勝利すべきである。
 ファンはスポーツ選手の圧倒的な強さだけを見たいのではない。
 潔さや苦闘といった「心の強さ」を見たいのだ。
 彼の「生き様」を見たいのだ。

 最後にマスコミと企業。
 マスコミはスポーツ選手に「物語」を付加しようとする。
 亀田選手の場合は、「親子愛」「三兄弟の世界奪取」。
 企業はスポーツ選手で商売しようとする。
 だが選手はそんなマスコミ・企業に乗せられて、自分を見失ってはいけない。
 自分の置かれた状況で自分が感じたこと、考えたことを吟味し、自分を見つめ、自分を貫き通さなければならない。
 それが出来て頂点にのぼりつめた時、その選手は「伝説」になる。
 それでのぼりつめられなかったら、それだけの実力ということだ。
 あるいは負けてもその挫折が「伝説」になることもある。
 また、ファンもそうだ。
 マスコミに踊らされてなったファンは本当のファンではない。自分自身を知って本当に応援してくれる人こそ本当のファンではあるまいか?

 今後、亀田興毅はどんな物語を見せてくれるのだろう。
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ワールドカップ 日本×ブラジル

2006年06月23日 | スポーツ
悔やむ豪州戦の3連続失点 ジーコ監督一問一答 (共同通信) - goo ニュース

 さて残念だったワールドカップ。
 素人なりに感じたこと。

1.個人のサッカー・組織のサッカー
 ジーコが目指した個人のサッカー。
 個人が自分の判断で自由に組み立てれば、バリエーションのあるサッカーができる。
 このサッカーについては惨敗したこともあり、否定的なようだ。
 日本チームはブラジルチームじゃない。
 1対1の勝負で負けるのであれば、組織力で勝るしかない。
 会社もそうだが、日本人は個人よりも組織だからね。
 型にはまったプレイ。ある意味マニュアル。
 現に一部の選手などは、自分の置かれた状況で攻めたらいいのか、守ったらいいのか迷った選手がいたそうだ。
 攻めたり守ったり自分の行動基準が曖昧だから、無駄に走りまわって疲れてしまう。
 ジーコが言うところはわかる。
 型にはまったプレイはその与えられた型以上の力を発揮できない。
 個人がそれぞれに力を発揮すれば、相乗効果で様々なバリエーションが生まれる。
 ただし、個人が力を発揮するのは、各個人の能力が優れている場合。
 優れた選手の要求に劣った選手がついて来られなければ威力を発揮しない。
 俺が俺がになったりする可能性もある。
 個人か組織か?
 サッカーだけでない。他のチームスポーツも。
 また、日本を考える時にも留意すべき視点だ。
 個人的はスーパープレイヤーが大活躍するような試合を見てみたいが。

2.精神力
 スポーツで選手の「心が折れてしまう」シーンは見たくない。
 選手の諦めずに闘う姿や楽しんで闘う姿。
 これを見たい。
 そして、この点、今回の日本代表はどうだったのだろう?
 ジーコは精神的弱さを「未熟」と表現したようだが、同様に精神力を感じなかった。
 一方、熱心なサポーターの方はすごい。
 この状況であっても「ありがとう、日本代表」と言え、「自分たちの応援が足りなかった」と言える。
 すばらしい。
 試合の内容に不満たらたらの僕などは見習いたい強さだ。

3.日本代表チームの今後
 ジーコは初戦のオーストラリア戦がすべての歯車を狂わせたと考えているようだ。
 では、初戦がうまく行っていれば歯車がかみ合って勝利できたのか?
 波に乗れて決勝トーナメントに進めたのか?
 そこは冷静に見極める必要がある。
 3試合で取れた得点は2点。取られた得点は8点。
 おまけに後半で崩れて逆転されて。
 3試合とも同じ試合展開。
 そこにはFWの決定力不足と言った個別の問題だけでない、全体に関わる根本的な問題があるような気がする。
 よく「自分たちのサッカーをしたか?」ということが言われるが、今回の日本代表チームに「自分たちのサッカー」というものがあったのか?
 売りの運動量やつなぎ(パス)もイマイチ。
 FWの決定力不足。
 期待の中盤はパスミス。まわして突破もできない。
 DFは格上には翻弄。後半はスタミナ切れ。体の大きさもほしい。
 日本は何だったのか?
 野球なら所属選手の特徴によって
 繋いで得点していくチーム/大砲の揃った打撃のチーム/走るチーム/守るチームと言った特徴を出せる。
 サッカーだって、攻撃型チーム、スピードのチーム、守るチーム特徴が出せるはず。大まかでわかりやす過ぎるとは思うが。

 自分たちがどんな戦い方をするのかがわかれば、相手チームの特色に応じた対応ができる。
 自分たちの試合ができれば、精神的には優位に立てる。
 自分たちの試合が出来て負けたのなら、それはそれで納得できる。
 圧倒的な力の差で負けたのなら相手の凄さを認めればいいし、ラッキーな得点、怪我やアクシデントで負けたのなら、スポーツにはこういうこともあると思うことができる。

 今度の代表監督が誰になるのかは確定していないようだが、チームのコンセプトをイメージできる監督にチーム作りをしてもらいたいと思う。

★追記
 2大会連続のグループリーグ通過が果たせなかった日本代表。敗退の原因は?
                        (gooアンケートより)
 ジーコ監督の選手起用    14.7%
 FWの決定力不足      27.5%
 中盤のコンビネーション    2.3%
 不安定なディフェンスライン  4.4%
 暑すぎたドイツの気候     0.7%
 今の日本代表の実力どおり  50.3%

★関連記事
はかなく散ったジーコ日本=問われる今後の強化策(時事通信) 
 「史上最強」の呼び声が高い日本代表に対する期待は大きく膨らんだが、それは見掛け倒しでしかなかった。豪州戦にしろブラジル戦にしろ、リードしてもそれを守り切るためのしたたかな戦術がジーコ日本には欠けていた。終盤、相手の反撃を受けてパニックに陥る選手たちの姿は、日本がまだ戦う集団として成熟していないことの証明ではなかったか。
 「日本は相手が注意を要するようなチームにはなったが、まだまだ欠点が多い。日本はまだ3度目のW杯であり、そこには限界がある」。ジーコ監督はすべての戦いを終え、日本の置かれた厳しい立場を説明した。

「最後の詰めが甘い」=W杯日本敗退で石原都知事(時事通信) 
 石原慎太郎東京都知事は23日の定例記者会見で、日本がサッカー・ワールドカップ(W杯)の1次リーグで敗退したことについて、「残念といえば残念だね」と感想を述べ、「日本人は何でも最後の詰めが甘い」と指摘した。
 同知事は敗因について、「『最後は自分が決めるんだ』という精神的にも肉体的にもタフなストライカーがいない」と語り、「ペナルティーエリアに入ってから左右にパスを出すのが日本の悪い特徴」と分析した。(了)

指揮官の意図見えず=甘くなかった世界の舞台-ジーコ日本敗退(時事通信) 
 ブラジル流の自由なサッカーを持ち込み、個々の力量を生かそうとしたジーコ監督。MF中村(セルティック)が「そのやり方が(選手は)やりやすかったわけだし、戦術とかシステムとか監督じゃない」と言ったこともある。
 指揮官の下で、確かに選手は精神的なたくましさを身に付け、局面を打開したこともあった。だが、アジアではなく世界の舞台は、勝ち抜けるほど甘くはなかった。(ボン時事)

ブラジル・パレイラ監督
「今日は勝利で大きな弾みをつけたかった。ロナウドが戻ってきた気がする。これまでフィットができずに苦しんできたが、我慢して使い続けたことはよかった、ということを示せた。ブラジルのチームには常に多くの選択肢がある。今日の先発を決めた基準は、テクニックを重視し、多くの選択肢のいくつか、たとえばロビーニョはそういったイメージを与えてくれた。これでベスト16に進出し、このままひとつずつラウンドを進めていくのにいい勝利だった。とてもいいブラジルのスタイルで試合に勝つこと、これが大事だった。今日はロナウドが出ないという噂が流れた。人が何を言おうが、私に決める権利はある。日本はとても早くカウンターに転じ、右サイドを使い、MFともみな上がってきた」

★追記
 こんな記事も。
「2試合で笛を吹いた上川徹主審(43)と広嶋禎数副審(44)。世界レベルの戦いを直接目にする2人は、日本代表について「(出場チームで)一番、戦っていなかった」と辛口に評価した。
 上川主審は「強いチームは汗をかいている」ときっぱり。日本は、地道にボールを追い掛ける泥臭い部分が欠けていると、映った。広嶋副審は「相手ボールにプレスをかけることをさぼったら、幾ら技術のある選手がいても勝てない」と指摘した。
 技術面では、ボールを奪い取ろうとする場面で、体格で劣る日本はどうしても反則が多くなる。上川主審は「Jリーグの試合でしっかり、反則を指摘していきたい」と改めて強く思ったといい、「そうすることで、選手には反則なしでボールを奪う技術をさらに磨いて欲しい」と話した」(読売新聞)

 地道さ・泥臭さという言葉が引っかかった。
 一番重要なことだと思う。
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ワールドカップ 日本×オーストラリア

2006年06月13日 | スポーツ
 う~~ん、残念!
 川口はよくセーブした。中澤らディフェンダーはよく守った。

 だが、懸案の決定力不足は解消されていない。
 キリンカップのブルガリア戦に見られるように日本はシュートが下手。
 ブルガリア戦で高原と柳沢はいなかったから、彼らに期待したが……。
 逆にビドゥカやケネディのパワーが目立った。
 スーパーストライカーが必要か?

 中盤に関して言えば、ブルガリア戦のようにボールを支配できないでいた。
 逆に攻め込まれていたし。
 ジーコのサッカーはシステム・戦術よりは個人重視のサッカー。
 テーマは「自由」。システムでガチガチになるよりは、その場その場で臨機応変に対応、応用できることを重視するサッカーだ。
 一方、知将・ヒディングは3-5-2の布陣。
 中田、中村をマークするためだ。
 中田、中村と言えど徹底的にマークされていては仕事はできない。
 三都主らサイドからの攻撃もガードされた。日本はガードに終始。
 個人の技は封じ込められ、相手DFを切り崩すことができなかった。
 自由を重視する個人のサッカー。
 しかし、個人の力を封じ込められては力を発揮できない。日本人向きではない?
 組織的に切り崩していくシステム・戦術は必要か?

 前にボールを運べない以上、有効なのは1点を取ったミドルレンジのシュート。
 とはいえ、これにもシュートの確実性が必要になって来るのだが。
 後半の福西のシュートは失敗。
 また、有効なのは思い切ったカウンター。
 カウンターに入る時、どうして日本はパスで繋いでしまうのか?
 パスで繋いでしまえば時間がかかり、カウンターでなくなってしまう。

 そしてメンタル。
 よくテレビの解説などで言われていることだが、もし駄目押しの2点目を入れていれば、この試合の結果は違っていただろう。
 スポーツでのメンタル面は馬鹿に出来ない。
 悪夢の終盤9分。一挙に3点。
 ここでメンタル面の弱さを露呈した。
 前半から攻め込まれて精神的にはギリギリの試合をしていただけに、緊張の糸が切れると弱い。
 スローイン。川口が前に出て同点。
 同点にされ緊張の糸が完全に切れた。
 あるいは日本は点を取りにいったのだろう。
 逆にカウンター攻撃で2点目。
 (※ここで同点引き分けでもいいから守るという判断もあったと指摘する方も)
 点を取るために大黒投入。
 しかし完全に攻撃モードの日本は同じくカウンターで3点目を取られてしまう。
 前半45分+後半39分は戦術面でのまずさを精神力でカバーしていた。
 しかしそれがなくなると……。
 スポーツでのメンタル面は非常に怖ろしい。
 同時にアスリートたちの精神面の弱さはあまり見たくはない。
 僕を含めて観客は選手たちの戦いの中から力や勇気をもらおうと思って見ている。
 選手たちの中に自分たちと同じ弱さを見たくはない。
 今後のクロアチア戦・ブラジル戦では勇気をもらえる試合を見せてほしい。
 もちろん、僕たちも応援で選手たちに力を与えようと思うが。

★追記
 後半の9分については、至る所で選手の疲労が指摘されている。
 ヒディングは3-5-2で前半を1点でしのぎ、後半の疲労を狙ったのだ。
 192センチのケネディ。
 縦への突破を得意とするケーヒル。
 元気で今までの攻撃にバリエーションを持たせて日本を翻弄した。
 疲労した日本イレブンはついていけない。
 ヒディングの作戦勝ちか?
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全日本バレーボール 柳本昌一

2006年04月05日 | スポーツ
 「甦る 全日本女子バレー」(吉井妙子・著 日本経済新聞社)より

 柳本のチーム作りはこの様なものだった。

 「監督の指示どおりに動くのではなく、選手自らが考え判断し、自ら行動するチーム」

 監督の厳しい指導の下で意識をひとつにしてきた今までのチーム作りとはまったく違うものだった。
 「柳本は全日本をトップアスリートしての意識を持った個性派集団にしようと思った。監督の色に染まったチームを作ってしまうと、その監督以上の能力は発揮できない。選手個々のエネルギーを上げ、そのパワーを組み合わせていけば、もっと大きな集団になる。さらに本質的なことを言えば、たとえ監督でも選手の個性を潰すのは神をも冒涜することと同じという信念があった」(P224)
 そして柳本のコメント。
 「もし角があったとしても、それを自分で何とかするのが一番きれいな納め方なんです。他人が無理に角を削ってしまっては絶対いけないと思いますね。三角があって丸があり四角がある。みんな同じ形になるのではなく、それぞれがその形を認め合って、そして自分は三角なんだということに自信を持てばいい。いろんな形を活かしながら、その隙間を埋めていくのが僕の仕事なんです」

 柳本の監督術はまさにこれであった。 
 まずは柳本が「3本の矢」として抜擢した吉原・竹下・高橋。
 高橋みゆきは、感動のあまり言葉につまったアナウンサーのマイクを奪い、代わりにインタビューをした様に状況判断に優れた勘の良い選手。
 「悪戯心」と「遊び心」に溢れている。
 一方、吉原と竹下は勝利に対して脇目も振らず突き進むタイプ。
 高橋は「悪戯心」と「遊び心」で吉原たちとは違った方法でチームを活性化させた。
 
 また、高橋を活かすためにポジションについて柳本はこう考えた。
 レフトには大山・栗原。そして佐々木みきがいる。
 高橋はもともとレフトの選手である。
 高橋がライトにコンバートした。
 このコンバートについて柳本は言う。
 「高橋は器用だし技術的に優れた選手ですからね。初めてのポジションでも対応できると思っていた。うまいからこそ、時々サボったり手抜きをしたりする」
 柳本は「手抜きをする」高橋にこんな意地悪をした。
 ライトに吉原を起用すると見せかけて競わせたのである。
 高橋は吉原に対抗意識を燃やして、紅白戦ではライトの吉原にばかりサーブを打ったり、吉原と竹下がコンビネーションの練習を始めればそれと同じことをした。

 こうして高橋は伸び、高橋の成長は別の効果ももたらした。
 吉原である。
 高橋は急速に力を伸ばし、結果吉原も内心穏やかではなくなった。
 「やってらんない。いつになったら6人が決まるのか?」とスタッフに怒りをぶちまけたという。
 この吉原のリアクションも柳本の計算どおりだった。
 柳本は言う。
 「トモが僕に向かって怒り出すといいんですよ。その雰囲気でチームがさらに締まる」
 そして高橋がライトのスタメンで行けると思った時、柳本は吉原に言った。
 「おまえがコートに立つ時は監督をせにゃならん。だからスタメン以外考えていない。ただし、ポジションはセンターだ」
 吉原は「やってらんない」と言って怒りながら顔は笑っていたという。

 この様に柳本は選手の実力をフルに発揮されるためにポジショニングをし、それを利用した。
 例えば、杉山祥子。
 彼女はブロックやクイック、ワイド攻撃などは一流であったが、レシーブが苦手だった。そして吉原がセンターに来たことで、いつもは穏やかな杉山がすごい形相に変わった。

 また、レフトの大山加奈、栗原恵、佐々木みき。
 柳本は調子の良い佐々木を外して大山、栗原を起用した。
 「使ってみなきゃ伸びないだろう」という意図であったが、別の意味もあった。
 「大山も栗原も調子の良い佐々木を控えにしてコートに入ると思えば、意識も別のものになっていくでしょ。ぴーぴー泣いて自分のことで頭がいっぱいだったふたりに責任感が生まれる」
 これは同時にピンチになった時に切り札として佐々木を使えるという作戦も可能にした。まさにトランプのジョーカーである。

 また柳本はこうした個性的な選手をまとめる接着剤の役目の選手を置いた。
 辻知恵、宝来麻紀子、鈴木洋美らがそうである。
 吉原の心の支援者は、辻に佐々木。
 竹下にはセッターの気持ちの分かる鈴木に柳本。
 明るくて遊び心のある高橋には同じタイプの宝来。

 実にうまい組織作りである。
 個性を認め合う戦闘集団は試合ではこんな面を見せた。
 「後衛にいる吉原のサーブレシーブが乱れ、杉山のクイックが使えない場面があった。すると高橋は次のサーブレシーブの時に吉原をコートの隅に追いやり吉原のポジションでレシーブした」
 この動きに柳本は追い求めていたものが実現されて思わず膝を打ったという。
 「以前のトモだったら高橋を許さないし、高橋だってそんな判断はしない。でも、勝つためにふたりは瞬時に同じ判断をしたんです。こうなったらチームは強くなる。強くなるために個性の強いふたりが結合した」
 同じことについてマネージャーを務める中村和美はこう語る。
 「私たちの頃は初めから形が決められていた。お前はこういうパターンだとか。監督の考えの中にはめられていくのが当たり前だと思っていた。でも、柳本さんはひとりひとりの個性を生かしながら大きなバレーをやっている。だからこのチームはどこまで伸びるのか見えない楽しみがある。私たちの頃は完成形がイメージできたけど、今のチームは形がないから無限大の可能性を感じる」

 「日本人が接戦に弱いのは個人のパーソナリティが確率していないため」と言われてきたが、個人が独立したアスリートになればそれは克服される。
 選手個々に強靱な精神力が芽生え、それが噛みあわさって堅牢なものになり、意識のベクトルが同じ方向に向かったチーム。
 強い個性集団が作り出す柳本ジャパンの今後が楽しみだ。

★研究ポイント
 キャラクターの作り方
 強い個性はエネルギー。
 強い個性がぶつかり合って、作品がエネルギーに溢れる。

★追記  
 個性の切磋琢磨は、人間も変えた。 
 竹下は今まで気持ちの弱いネガティブな選手にはトスを上げない厳しい選手だったが、栗原、大山にもトスをあげる内に「遊び心」が芽生えた。
 「持って来ないでオーラ」を出す彼女らにトスをまわす内、彼女らも変わっていき、「持って来いオーラ」を出すようになったというのである。
 竹下は瞬間、瞬間に最も確実性の高い手段を選んでプレイしてきたが、リスクを背負って新たなことに挑戦してみると、チームとしてもっと大きくなれることを発見したのである。

★追記
 ポジションについて
 「センターは切り込み隊長。ライトは頭脳。レフトは顔。ライトは頭脳と同時にオールラウンダーとしてのプレイが求められる。場合によってはセッターの代わりにトスを上げ、レシーブをし繋いで時間差など移動攻撃も仕掛ける。器用さがないとこなせない難しいポジションだ」

★追記
 トップアスリート
 「多くの競技では子供たちは早くから競争社会に放り込まれ、その中から這い上がろうとする。生き残る過程で体を鍛え、技を磨き、精神をブラシュアップし続けていく。他社と差別化を図るために頭脳をフル回転させ、トレーニングや練習にアイデアや工夫を凝らす。同時に瞬間瞬間に正しい判断を求められ時には人生の決断も迫られる。判断や決断を間違えば明日はない。決断する時は常に自分と向き合い、自己の確認作業が繰り返される。だからこそトップアスリートと言われる人たちは必然的に個性が構築され、それが自分の体から発露するオリジナリティに溢れた発言や多くの人に感動を与えるパーフォマンスに結びつく」
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全日本バレーボール 栗原恵 大山加奈

2006年04月03日 | スポーツ
「甦る 全日本バレー」(吉井妙子・著 日本経済新聞社)より

 2003年ワールドカップバレーでは、大山加奈、栗原恵が活躍した。
 強力なスパイクは海外勢の専売特許で、日本バレーはパワーバレーに対抗するため速さを追求し複雑なコンビネーションを構築しなければならなかった。
 そんな日本にふたりのパワーヒッターが登場したのだ。

 こんなふたりの逸材に吉原知子はこう述懐する。
 「潜在能力はすごい。しかし、それを活かすも殺すも自分次第。才能は自分で磨くしかないんです。でも。才能を磨く環境は作ってあげられる。最良の研磨剤は試合での勝利。彼女たちを伸ばすためにも早く勝ちたかった。勝利の味を覚えさせることが成長させる一番の方法だと思う」

 監督の柳本は4日前に栗原らのスタメン起用を発表した。
 理由は「プレッシャーに勝つには経験して学ぶしかないんです。今回の開幕戦を経験しておけば五輪などで厳しい場面に立たされた時潰れなくてすむんです」

 パーフォマンスは佐々木みきの方が上。
 こんな荒削りなふたりだったが、開幕戦で大活躍をした。
 「若い選手は乗せてなんぼ。決まりさえすればワーッといくじゃないですか」と竹下は試合後言ったが、中堅選手たちも彼女らをフォローして必死で動きまわった。
 また、逆に中堅選手が経験から試合の流れを読んで「負け」を意識した時は、彼女たちの必死の頑張りが気持ちをフォローした。
 中堅手は「なんや、この子たち」と思い、「とりあえずやってみよう」という気になったという。
 うまい循環である。

 さて、ここで個々の選手に着目してみる。

★栗原恵
 彼女は頑固だ。そして他人の意見に左右されない。
 まわりから「すごい活躍だったね」といわれても納得しない。
 自分の合格点の目標が高いのだ。
 チャンスボールで決められなくて彼女は思う。
 「先輩たちの足を引っ張った。何もかも下手なのに自信が持てない。自分の実力は自分が一番よく知ってしますから」
 甘い言葉は彼女にとって救いにならない。
 どんな場合でも自分を許すことが出来ないため階段の踊り場にたたずむことがあるが、最終的には伸びる。
 若い選手や強がっている選手ほど、他人の評価を気にするものだ。他人の目線で身の丈を計ろうとする。しかし、他人の価値観に右顧左眄するうちに自分を見失い迷路にはまってしまう。

 そしてもうひとつ栗原のエピソード。
 能美島から中学時代バレーをするために独り暮らしを始めた。
 理由は「挑戦しないで後悔するよりは、駄目だったとしてもやって後悔した方がいいと思ったから」
 そして三田尻高校に進む。
 理由は「練習がきつそうだったけど、『勝ちたい』という意識が統一されていた。みんなが教え合いながら練習していたのもよかった」から。
 この様にすべて自分で考えて行動しているのである。
 中学時代の孤独と厳しい練習は栗原から笑うことを忘れさせ、高校では「笑う」練習から始めさせられたが、彼女は自分で自分の道を切り開いて来た。決して人のレールには乗らなかった。

★大山加奈
 太陽の下のひまわりの様な性格の大山はこう育てられた。
 成徳学園の小川監督だ。小川は言う。
 「監督というのはサービス業だと思うんです。選手が何を求めているかをまず最初に考える。上からやらされるバレーではなく、選手がやるバレーにするため、僕はそのお手伝いをするんです」
 こんな監督の下で大山はのびのびと育った。

 そして最後に木村沙織。
 彼女ののー天気な性格は天性のもので、みんなを笑わせていたらしいが、試合に出る時はこう言ったという。
 「ライトは何をすればいいんですか?シンさん(高橋)と同じことはできません」
 これに対して吉原はこう言ったという。
 「シンと同じことをする必要はない。同じことをする選手はいらない」
 言った吉原もあっぱれだが、木村も「そっか」とすぐに納得したという。

 あるいはこんな珍発言も。
 「サーブを打つに3回トントントンとボールをつついてからトスを上げるとジャンピングサーブが入るんです」
 「ワールドカップの成績に満足したか?」という質問にひとりだけ「イエス」と答えたのは木村。
 彼女の天然はチーム内を明るくし、予想を超えた活躍はチームを勇気づけるのだ。

★研究ポイント
 キャラクターの作り方
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全日本バレーボール 吉原知子

2006年04月02日 | スポーツ
「甦る 全日本バレー」(吉井妙子・著 日本経済新聞社)より

★吉原知子
 リーダー吉原知子に関して、竹下佳江はこうコメントしている。
「これまでの全日本には強力に選手を引っ張っていく人がいなかった。今、考えれば低いレベルで妥協があったと思うんですよ。もちろん、その時はいっぱいいっぱいと思っていましたけど、自分たちが高いレベルまで行けるんだということを知らなかった。トモさんの背中を見ながら選手個々の意識も変わっていったと思います」

 リーダーは選手を高いレベルまで引き上げるために引っ張っていく。
 あまり口がうまくないという吉原は自分が必死に練習に取り組むことを見せることでみんなを引っ張っていったという。
「あの子たちを口で引っ張っていくのは無理だと思った。私が身体を張らないとついて来ないと思ったし、文句を言わせないためには自分が先陣を切って練習しなければと覚悟した。でも怪我とか後遺症とかを考えていたら、私の身体がそこまで耐えられるのか、それが一番心配だった」
 その身体を張ったその姿は選手のいい見本になった。
 大山加奈は言う。
「ただバーベルを上げるんじゃなくて、この動きはどこに刺激を与えているかを意識しながらウエイトトレーニングをしているんです。サーブの練習でも脳をフル回転させ。知覚神経に動きを覚え込ませようとしていました。だからトモさんはプレイにミスが少ないんだと思います」

 だが、身体ではなく言葉で語った部分も選手たちを変えていった。
 吉原は言った。
「誰かがやっているから私もやらなきゃという練習はやめてね。そんなのは全然意味がないから。自分でこれがうまくなりたい、この技を磨きたいと思ってする練習ならいいけど、体育館で一緒に時間だけ過ごす振りをするのはやめてね」
「身体がつらければ寝ていればいいし、練習が足りないと思えば体育館に来ればいい。自分がアスリートとして大きくなるために今、必要なことはなにか、選手それぞれに判断してほしかった」
 一緒に汗をかくことで満足してしまう選手に考えることを要求したのだ。
 個々が確立することでチームが強くなると吉原は信じている。
 吉原自身もポジションがセンターになったこともあり、練習に取り組まざるを得なかった。
 そんな吉原を見て杉山祥子はこう述懐する。
「人生の中でバレーのことしか考えない時期があってもいいんじゃないか。朝起きた時にオリンピックに行くぞと目覚めるくらいにバレーに集中していいんじゃないか。そんなトモさんの言葉を消化できてから、1日1日が濃かったし充実していた」

 その他にも吉原はこんなことを選手たちに語っている。
「コートから出たらあれこれ悪口を言うのはやめようね。文句があるんだったらコートの中で言おう」
「負けた試合ではミスを指摘し合うのはやめよう。勝った時にこそ問題点を議論しあおう」
 これでチームの雰囲気が悪くなるということはなくなった。
「私はいつバレーができなくなってもいいように常にその時を大切にやっている」

 若いチームの中でキャプテンを任されて吉原はこう覚悟を決めた。
「私なんて煩わしいバアさんだと思われてたんじゃないかな。でも、それでよかったの。ウザイと思われようと細かいと言われようと、とにかく私は勝ちたかっただけだから。世界に勝つというのは本当にどれだけ大変なことか分かってほしかったから」
 一方でこんな弱音を吐きつつ。
「こんな歳にまでなって何をやってるんだろう。自分の将来も見えないのに人の世話なんか焼いている場合じゃない。なんかいつも損な役ばかり。こんな思いをしてまでどうしてバレーをやってるんだろう」

 いろいろな理由をつけて自分に妥協することは簡単だ。
 しかし、吉原は妥協せず、練習でもキャプテンとしての役割でも苦しいことをやって来た。
 それが全日本の選手を変えたのだ。

★研究ポイント
 テーマ
 テーマ研究
 キャラクターの作り方

★追記
 吉原のコメントでこんなものも。
 吉原は代表選考を行うバレーボール協会についてこんなふうに考えていた。
「どんなに腕を磨いたって年齢制限という実力と関係ないところで評価されてしまう」
 一方でこう思った。
「喧嘩するエネルギーがあったら、そのエネルギーを自分の研鑽に向けた方がいい」
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バレーボール ワールドカップ2003

2006年03月24日 | スポーツ
「甦る 全日本バレー~新たな闘い~」(吉井妙子・著 日本経済新聞社)を読んだ。

 2003年ワールドカップバレーを取材したものである。
 低迷していた日本バレーに柳本昌一が就任した。
 そのチーム作りはまず日本バレーボール協会との闘いであった。

 まずは主将の吉原知子。
 柳本は吉原中心のチームを作ろうとした。
 吉原はバルセロナ、アトランタ五輪に出場し、日立、セリエA(イタリア1部リーグ)などで濃密な競技人生を送ってきた。
 しかし、その経験から培ってきた独自のバレースタイル・理論を持っていたため歴代の監督達からは使いにくいというレッテルを貼られ、7年間ナショナルチームから外されてきた。
 そして33歳という年齢。
 若手起用という協会の方針とは大きく違っている。

 次にセッターに起用したのが竹下佳江だった。
 身長は159センチ。
 卓越した運動神経を買われていたがやはり身長の件が問題にされ、バレーから離れてていた。
 本人が完璧主義者であることに疲れ果てていたせいもあったという。

 そして高橋みゆき。
 身長は170センチと高くはないが、サーブ、レシーブ、センターを絡めた移動攻撃、ブロックアウトを取る技術、空中での判断力などに卓越した能力を持ち、外国人選手からは「最も嫌な日本人選手」と怖れられていた。しかし、最下位に沈んだ02年の世界選手権で主将をしていたため関係者の評価は失墜していた。

 こんなバレー界の主流から外れてしまった3人を柳本は抜擢した。
 バレー関係者は彼女らの本当の実力を見抜けず、年齢、身長。性格といった選手の本質とはかけ離れた部分で判断を下していたのだが、柳本はそれと対決したのである。
 会議ではこんな会話が飛びかったという。
「まさか高橋を使おうなんて思っちゃいないだろうね。確かに得点力は高いしレシーブやサーブでは1位だけど、全日本のメンバーに選ぶには背が低すぎる」
「竹下はだめだよ。セッターとしてはうないかもしれないけど、身長が低いのはどうしようもない」

 しかし、柳本は突っぱねた。
 吉原、竹下、高橋の3本の矢が組み合わされば、大山加奈、栗原恵の19歳コンビも実践で使えるという読みもあった。
 大山は筋肉質の身体をボールに乗せパワーで打ち込むバズーカ砲。
 栗原はエッジの利いた動きで宙を切り裂く機関銃。
 タイプは違うがその威力は十分で、彼女たちの荒削りな部分は高橋たちがカバーしてくれると柳本は読んだのだ。

 そして、ワールドカップバレー、初戦アルゼンチン戦。
 開幕戦で大山、栗原を使おうとした柳本を協会は反対した。
 協会は「若手を育ててくれ」と柳本に要請したが、いきなり彼女たちを使っても勝てないと判断したのだ。
 しかし、柳本は突っぱねる。
「試合に出て勝つことで若手は急速に伸びるんです。もちろんアルゼンチンには勝てると思っていた」

 柳本の抜擢もこの様に型破りだったが、試合の内容も従来と違うものだった。
 竹下はプレイが不確実な選手や自信のない選手にはトスアップしなかったのだが、ミスをしても大山や栗原にトスを上げた。4ヶ月前から練習を始めたという大山のバックアタックも何度も打たせた。
 そして修羅場をくぐり抜けて来た吉原は「夜叉のような形相で」敵選手を睨みつけ、自軍には「大丈夫だから大丈夫だから」と「慈母の様な笑み」を向けた。
 高橋も自分を前に出すことなく、栗原や大山のミスをカバーしようとリベロの佐野と共にレシーブを拾いまくった。
 また、ひ弱だった杉山祥子もネット際を走り回り、ブロックをしクイックを決めた。

 そして韓国戦。
 全日本は新しいチームカラーを出して打ち勝った。
 センターに吉原と杉山、セッター竹下、ライト高橋、リベロ佐野、レフト大山と栗原。
 高さとパワー、そして機動力を駆使した攻撃バレーを展開したのである。
 それまでの日本は、韓国と同じ拾って繋ぐバレーであった。そんなバレーを攻撃力が粉砕した。
 韓国はよく拾い、栗原らは自分たちの攻撃バレーは通用しないのかと思ったが、吉原が声をかける。
「私たちがやって来たことを信じよう」
 そして佐々木みきの投入。
 佐々木は日本一のパワーアタッカーであったが、その人見知りの性格からこれまでの全日本の空気に馴染まず、ウェイトトレーニングを重視する佐々木と練習方針が合わず、溝を深めていったのである。
 そんな彼女が爆発した。
 佐々木の攻撃はボディブローの様に利いてくる。
 韓国のミスは11、日本のミスは28であったが、それを攻撃力が上回った。
 柳本の描いた攻撃バレーが花開いた試合であった。

 こうしたチームを作る中で柳本は選手の精神力も育てていった。
 韓国戦の後、高橋らはこんな感想をもらしたそうである。
「もっと早く仕留められた」
 精神力が強くなり、フルセットになれば必ずセットを取られていたチームが粘り取れる様になった。
「ピンチになればなるほど力を発揮するチーム」に生まれ変わったのである。

 そしてワールドカップバレーは高視聴率を取って日本中の話題をさらった。
 1ヶ月にわたってゴールデンタイプを使うことはフジテレビにとっては冒険であった。しかし、数字を取った。
 フジテレビのプロデューサー川口哲生は言う。
「選手達の戦う姿と諦めない精神が視聴者を惹きつけたんだと思います。選手達が星なら僕等はその周りの土星の輪の様なもの。選手達がどんな輝きを見せるかわからなかったので、せめて舞台だけでも豪華にと思え、いろんな仕掛けをしてきましたけど、星が輝き始めたら土星の輪は霞んでもいいと思っています」

★研究ポイント
 ドラマ
 物語の作り方
 対立を乗り越えて勝利する。
 個人が自分の力を発揮する。
 荒削りと洗練。
 チームワーク。
 監督との信頼関係。
 勝ちたいという気迫。
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