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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

SP 革命篇~国民と向き合って、国民に詫びを入れろ!

2012年02月21日 | 邦画
 占拠された国会でテロリストたちを撃ち倒すべく暗躍する井上(岡田准一)たちSP。
 これは『ダイハード』ですね。
 占拠されたビルで次々とテロリストを倒していったブルース・ウィリスのマクレーン刑事と同じ。

 さて、国会を占拠した尾形(堤真一)たちテロリストの目的とは、政府の閣僚に自分がやってきた不正を語らせること。
 尾形は閣僚たちに叫ぶ。
 「汚職と派閥争い、失政のツケを国民にまわしてきたことを認めろ!」
 「この国をあやしくしているのは貴様らだということを認めろ!」
 「最後に国民と向き合って、国民に詫びを入れろ!」
 これって、何となくわれわれが政治家に対して思っていることですよね。
 「尾形さん、よく言ってくれた」という感じ。
 なので、尾形たちのしたことって、もしかしたら<正しいこと>ではないかと思えてしまう。
 もちろん、国会占拠・クーデターという手段は市民感覚からはかけ離れているし、間違っている。
 しかし、政治家がしてきた不正を明らかにすることは間違っていない。
 ただ手段が強引であっただけ。
 あるいは多少、強引でなければ世の中は変えられない。
 そうなると、逆にSPの井上たちはただの<国家の犬>で、井上たちの戦いこそ違うのではないかと思えてくる。
 このように何が<善>で、何が<悪>かって、相対的なもので、状況が変われば、<悪>も<善>になり得るんですね。
 ちなみに尾形が、閣僚を守ろうとする井上に問いかけた言葉は、「この連中に命をかける価値があるのか?」
 これに対する井上の返事は「SPの職務と名誉には命をかける価値がある」というもの。
 ちょっと理由としては弱い。

 そして、このテロ事件の黒幕。
 それは霞ヶ関の若手官僚たちだった。
 彼らはこの占拠事件をテレビを見ながら観戦している。
 霞ヶ関の官僚が悪で、背後で糸を引いているというのは、使い古された図式だが、彼らが発した言葉はなかなか面白い。
 事件の解決に動き始めた各省庁については「彼らは結局何もしないよ。やっているふりをして、動きまわっているだけだ」
 事件によって与党幹事長の伊達(香川照之)をヒーローにし、伊達を傀儡にして自分たちの手で国を動かそうとすることには「壊すことは愉しく、支配することはもっと愉しい」
 描かれている官僚の姿は類型的だが、こういうせりふを言わせることでリアリティが出て来る。いいせりふだと思う。

 いいせりふと言えば、こんなものも。
 尾形たちの占拠に対し、「こんなことはやめろ!」と叫ぶ国会議員に対し、尾形は言う。
 「それは本物の勇気か? それとも腐った虚栄心か?」
 国民に対して尾形は「覚醒せよ! 自分の頭で考えて立ち上がれ!」

 尾形の言葉は妙に突き刺さる。
 これは要するに、現在のどうしようもない政治に対する怒り・諦め、<政治不信>ということなのですが……。


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SP 野望篇~単純明快の心地よさ!

2012年02月14日 | 邦画
 この作品はひたすらアクションである。
 冒頭の傘に爆弾を仕込んだテロリストの追跡。
 街の中を走り、車の上を乗り越え、歩道橋でもつれ合い、トラックの荷台では警棒で格闘。
 そして地下鉄。線路に落ちて電車がやって来て……。
 この間、井上薫(岡田准一)はほとんどしゃべらない。
 肉体のみで見せている。
 この吹っ切れたわりきり方が心地いい。
 映画に下手なドラマはいらない、アクションだけでこんなに楽しいじゃないか、と言っているようだ。

 なのでストーリーも単純明快。
 係長・尾形総一郎(堤真一)や与党幹事長・伊達國雄(香川照之)が事件の黒幕であるらしいことを簡単にネタバレさせてしまう。
 普通なら黒幕を謎の人物にして、謎要素を作る所だが、そんな面倒くさいことはしない。
 ストーリーは脇役的なもので、主役はあくまでアクション。
 ストーリーはアクションを面白く見せるための道具でしかないようだ。

 そしてクライマックスの与党・幹事長の首相官邸への移送。
 ここはツッコミ所、満載だ。
 家を出て、テロリストに襲われれば、普通、家に戻って待機。援軍を待つのが普通。
 首相官邸には「こういう事情で遅れます」という電話を一本入れればいいだけ。
 あるいは電話を一本入れて、車をまわしてもらった方が走って移動するより断然速い。
 また、いかに夜明け前の深夜とはいえ、都会のど真ん中で、タクシーを拾えないのもおかしい。車一台走っていないのもおかしい。
 途中、ホテルに立ち寄ろうとするが、官房長官はホテルや宿泊客に迷惑をかけるからと言って、ホテルに立ち寄るのを拒否する。
 でも、そのホテルがある場所にたどり着くまでに3度テロリストに襲われているのだから、いくら何でも外を走って移動するのはヤバいと考えるのが普通。

 というわけで、後半はツッコミ所がいっぱいだが、制作スタッフはそんなことよりもアクションを重要視したようだ。
 実際、アクションシーンが面白いので、見ているとストーリーの矛盾、疑問点などが払拭されてしまう。
 ここはツッコミ所だけど、まあいいか、と許せてしまう。
 アクションで、関節技などの総合格闘技の要素を取り入れているのもいい。
 goo映画の解説に拠れば、主人公・井上が敵との格闘で行っているのは、FBIが訓練に正式導入しているフィリピン武術「カリ」や「修斗(USA SHOOTO)」、「ジークンドー(Jeet Kune Do)」であるらしい。

 というわけで、この作品では、アクションシーンだけで作品が成り立つこと、単純明快の心地よさを教えてもらった。
 単純明快こそが素晴らしい!


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愛のむきだし~真実は股間にあり!

2011年07月28日 | 邦画
 盗撮、女装、レズビアン……。
 軽快に描かれる変態の世界。
 でもね、変態だからといって目を背けてはいけない。
 人間誰しも、多かれ少なかれ壊れていて、変態の要素があると思うんですよ。

 主人公ユウ(西島隆弘)にとって、盗撮は<愛>を探し求める行為。
 愛情表現が、盗撮という屈折した形でなされただけ。
 純粋な愛の行為。愛のむきだし。
 だから、それが徹底して行われると、彼の不良仲間が感動した様に崇高なものになる。

 一方、そんな愛を求める行為を阻害するものが、世間の常識であり、道徳を説く宗教。
 ユウが闘うことになる宗教団体・ゼロ教会はその象徴。
 ゼロ教会は、愛を求めるユウを去勢しようとする。
 あたかも世間が<変態>というレッテルを貼って、ユウを変態行為から脱却させようとした様に。

 だが、宗教とは何か?
 ゼロ教会の信者たちが虚ろな目で妄信している様に、ただの幻想でしかない。
 信じる者にはリアリティのある世界だが、信じない者にはデタラメな砂上の楼閣。
 アタマの中で作られた世界。
 作品はそんな幻想に縛られて去勢されている人間を糾弾する。
 もっと自由になって、むきだしの愛情表現をしろと語る。
 それは世間から変態と後ろ指を指されるものであってもいい。

 すべての真実は股間にあり!
 男も女も股間を熱くすることこそが生きることだと作品は語る。
 つまり、愛のむきだし。

 この作品は下半身にこだわる。
 頭の中だけで完結する世界を拒絶する。
 そして、下半身の形而下の世界を形而上まで高める。

 作品のヒロイン・ヨーコ(満島ひかり)とコイケ(安藤サクラ)については、まだまだ掘り下げて考えてみる必要がある様に思う。
 男への嫌悪、世界を破壊し尽くしたい衝動。原罪。
 彼女たちは男を求めている? 愛を求めている?
 その屈折した思いが、たとえば男性のペニスを切り取る行為に繋がっている?

 ハードな世界だ。
 4時間という作品の長さもあるが、見終わるとヘトヘトになる。


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亀は意外と早く泳ぐ~生きている実感を取り戻すには?

2011年06月25日 | 邦画
 片倉スズメ(上野樹里)は平凡な主婦、夫は海外赴任中で、自分を唯一必要としてくれるのはペットの亀。
 そんな生活ゆえ、スズメは自分の<存在の希薄さ>を感じている。
 誰にも必要とされないこと、誰にも気に掛けられないこと、これは存在していないのと同じことなのだ。
 他人の中にあって、泣いたり笑ったり、心配されたり心配したり、何かを与えられたり与えたり、こららのことで人は自分が生きていると実感できる。
 しかし、スズメにはそんな生きている手応えがない。亀にエサをやるだけの単調な毎日が延々と続くだけである。

 この作品は、そんな現代人が感じている<存在の希薄さ>を描いている。
 こう書くと、この作品は深刻な難しい映画の様に思われるかもしれない。だが、そんなことはない。
 見事なコメディになっている。

 さて、そんなスズメに転機が訪れる。
 何とスパイになってしまうのだ。
 もっともスパイとはいっても、007・ジェイムス・ボンドの様な派手なアクションをするわけではない。
 命令が来るまで、目立たない普通の生活を送ることを要求される。自分がスパイであることを公安にさとられてはいけないからだ。
 だからスズメは商店街のくじ引きでも一等が当たらない様に祈る。ティッシュが当たって大喜びする。
 スーパーの買い物でも主婦らしい買い物を要求される。アーティチョークなどという珍しい野菜を決して買ってはならない。
 公安の存在を意識して、運転していても落ち着かない。
 川で溺れている子供を助けても、名前も名乗らず去っていく。
 スパイ仲間もラーメン屋もすごい腕を持ちながら、店に行列が出来ることを避けるため、美味しくも不味くもない<そこそこのラーメン>を作っている(笑)。

 そんなスズメのスパイ生活は、今までのスズメの生活と何ら変わりがない。ほとんど同じ生活。
 だが、心は<ザワザワ>している。日々が充実している。
 この違いの理由は何だろう?
 スパイとしての使命・役割を与えられているからだ。
 ラーメン屋や豆腐屋など他のスパイたちに仲間だと認められているからだ。
 スズメの<存在の希薄さ>は、役割を与えられること(=誰かに必要とされること)、存在を認められることで解消される。

 上手いですね。<存在の希薄さ>というテーマを見事な隠喩で描いている。
 自分が生きていると実感したかったら何かになろう。
 スズメの場合はスパイだったが、他にもきっと何かがあるはずだ。


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大日本人~いいなぁ、このペーソスな笑い

2011年06月19日 | 邦画
 冒頭から始まる大佐藤さん(松本人志)へのインタビュー。
 大佐藤さんは挑発でうらぶれた感じの中年男。
 野良猫に餌をやり、庭に雑草が生い茂る古い一軒家に一人住まい。
 月収は変動はあるが50万ぐらい。
 壁には「死ね」と書かれ、インタビューの途中で石が外から投げ入れられ、ガラスが割れる。
 
 この男は一体何者か? 「大日本人」とは?
 観ている方はメチャクチャ気になる。
 そして明かされる大佐藤さんの正体!
 彼は、電気によって巨大化し、獣(怪獣)と戦う巨人戦士だったのだ!

 この冒頭の掴みは鮮やか。
 予想もつかない飛躍で、見事に観客を裏切っている。ここで笑いが爆発する。
 巨大化した大佐藤さんは、パンツ一枚で腹が出ている。体には刺青と企業広告。
 大日本人が戦う獣のシルエットはどこか「エヴァンゲリオン」の使徒に似ている。
 そして戦い方はウダウダでルーズ。「ひょうきん族」のタケちゃんマンの雰囲気。

 この鮮やかな掴みの後、物語は大佐藤さんの日常と苦悩が描かれる。
 大佐藤さんは戦いの中で、ビルを破壊したりするので、周囲から迷惑がられていること。
 大佐藤さんと獣の戦いはテレビ中継されているが、あまり人気がなく、オンエアは深夜で視聴率もイマイチであること。
 離婚して、半年に1回娘と会うのが楽しみであること。
 名古屋での戦いの後には、キャバクラに行くこと。
 体に着ける広告の場所についてマネージャーともめていること。

 およそ正義のヒーローとはかけ離れた日常と苦悩だ。
 いいなぁ、このうらぶれた感じ。ナンセンスでペーソスな笑い。

 そしてクライマックスは、アメリカの巨大ヒーロー家族・スーパージャスティスと力を合わせての戦い。
 スーパージャスティスは5人組で、最新兵器を使い、ひとりの獣をこてんぱんにやっつける。
 大佐藤さんは、その戦いにちょっとだけ手を貸す。
 これは、現在の日米関係の隠喩か? パロディか?

 この作品は<ペーソスな笑い>というものを思い出させてくれた。
 今度、アメリカでリメイクされるそうだが、どんなふうに作られるんだろう?
 それが逆に楽しみだ。


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夜のピクニック~青春の貴重な時間

2011年06月18日 | 邦画
 物語の舞台となる「歩行祭」。
 これは夜を徹して80キロを歩き通す高校生活最大のイベントだ。
 参加するのは、生徒の甲田貴子(多部未華子)、西脇融(石田卓也)、貴子の親友の美和子(西原亜希)、梨香(貫地谷しおり)、戸田(郭智博)、高見(柄本佑)たち。

 この「歩行祭」、これは青春の縮図ですね。
 「ここにゴジラが現れたらどうする?」といった、どうでもいい下らないことを喋りながら友達と歩いていくのも青春。
 「あきらめるな」と言って、励まし合い、助け合って歩いていくのも青春。
 歩きながら、好きな子にアプローチして彼氏、彼女になろうとするのも青春。
 「ひたすら夜、みんなで歩く」。ただ、それだけのことを無意味だなぁと感じながら、何となく貴重な時間に思えてしまうのも青春。(オトナになれば、意味のないことなんて、なかなかしようとしませんから)

 そして、「歩行祭」は人を哲学者にする。
 戸田は立ち止まってつぶやく。
 「時間が見える。この一瞬一瞬はどんどん過去になって、後戻り出来ないんだなぁ」
 「もう一生、こんなアングルでこんな景色を眺めることはないんだなぁ」
 あるいは夜を徹して80キロ歩く苦行は、日常生活で付いた心の澱を取り除いてくれる。
 わだかまりが消えて、素直になる。
 素直に自分の思いをぶつけられる様になる。

 物語は貴子と西脇の心の葛藤をメインに描かれるが、脇役達も個性豊かだ。
 梨香役の貫地谷しおりさん、高見役の柄本佑さん。
 このふたりが出て来ると、コメディになる。
 梨香は、「記念写真に幽霊が写っている。こんな珍しい写真はない」と言って写真を買いまくるし、高見は昼間はギブアップ寸前でヨロヨロ歩くが、夜になると俄然元気になる吸血鬼の様な男。貴子と西脇の恋の仲立ちをしようとする。
 それから高部あいさんが演じる内堀亮子。
 野球部、サッカー部のイケメンなど、亮子の浮き名は数知れない。
 そして、この「歩行祭」では西脇くんを狙っている。甘えて、タオルのプレゼントをして何とか口説き落とそうとする。この小悪魔的な感じが可愛い。

 見事な青春映画ですね。この作品は。
 「歩行祭」で考えたことなどを通して、貴子たちはこれからを生きていくのであろう。


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東野圭吾・手紙~人と繋がるということ

2011年05月26日 | 邦画
 強盗殺人で服役中の兄(玉山鉄ニ)のために、「殺人犯の弟」というレッテルを貼られた武島直貴(山田孝之)。
 直貴は様々な迫害を受ける。
 アパートのドアには「人殺し」の落書き、工場では差別、コメディアンとして成功するが、「殺人犯の弟」ということがマスコミに暴露されるのを怖れて引退。大好きで結婚したいと思っていた女性とも破局。
 「すべては兄さんのせい」と恨むようになった直貴は、刑務所から送られてくる兄からの手紙に返事を出さず、兄との関わりを断とうとする。
 そして……。

 原作は東野圭吾。
 犯罪者の家族というテーマを扱った作品だが、底流に流れるのは<人との絆>ということ。
 直貴は現実がうまく行かず、兄ばかりでなく周囲の人間との関係をどんどん切っていく。
 しかし、そこに救いはない。
 孤立した人間にとって、世界は自分を脅かす<恐怖>であり、倒すべき<敵>でしかない。
 そんな世界と和解する方法は、人と繋がることだ。
 繋がるは誰かといっしょにいるということだけではない。
 この作品の兄と直貴の関係の様に<手紙>で繋がる方法もある。
 繋がりたいと思っていた人から寄せられた手紙の束は、もらった人にとって生きる糧になる。

 だから直貴から絶縁状の様な手紙を送られた兄は絶望するし、この作品のラストシーンの兄の姿は見ている者の胸に迫る。

 どんな形でもいいから人と繋がること。
 電線で繋がっていない電柱はとても寂しい。
 

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ぼくたちと駐在さんの700日戦争~いたずらのススメ!

2011年05月21日 | 邦画
 1979年、とある平和な田舎町で繰り広げられる僕たちと駐在さんのいたずら合戦。

 出演は、高校生のママチャリ役に市原隼人さん。
 ママチャリの仲間達は、喧嘩の強いエロガッパ・西条(石田卓也)、偏差値0の男・孝昭(加治将樹)、恋する星の王子様・グレート井上(加来賢人)、一食2000kcalの食いしん坊・千葉くん(脇知弘)、女装もキュートな後輩・ジェミー(冨浦智嗣)、ダブリ1年目の留年大王・辻村さん(小柳友)。
 そして彼らのいたずらと戦う駐在さんが佐々木蔵之介さん。
 みんな旬の若手俳優さんばかりですね。
 佐々木蔵之介さんもいい味を出している。

 この作品のポイントは<いたずら>。
 子供とオトナを分けるものって、<いたずら>が出来るかどうかだと思う。
 落とし穴を作ったり、スピード違反を取り締まりスピード測定器に自転車で挑戦したり、エロマンガを駐在所に置いて駐在さんの所有物に見せかけたり。
 その行為には特に意味があるわけではなく、ただ駐在さんを怒らせて楽しむだけなのだが、この意味がないことを出来ることが、子供。
 オトナになると、自分がすることに意味があるかないか、特か損かを考えてしまいますからね。
 主人公達が仕掛ける様々ないたずらを見ているだけで楽しくなる。
 それは人がオトナになる前の一瞬の輝き。
 この話は実話で、いたずら合戦は700日続いたらしい。
 きっと主人公達にとって実に充実した700日だっただろう。人生をふり返って、あの時は楽しかったなぁと思える日々だっただろう。

 その他、好きになった憧れの女性が駐在さんの奥さんだったり、自転車に乗りながら道を歩く女子のミニスカートに見とれて崖から転落したり、思春期特有の爆笑話もいっぱい。

 この作品を見ていると、あの頃に戻りたいと思うし、どうしてもっといろいろなことをしておかなかったんだろうと思ってしまう。


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長い散歩~人生には同行者が必要。

2011年05月19日 | 邦画
 『人生は長い散歩。愛がなければ歩けない』
 これがこの作品の宣伝コピー。
 これはこうも言い換えることが出来ると思う。

 『人生は長い散歩。歩いて行くには同行者が必要だ』
 こんなことを考えさせてくれる作品。

 物語は次の様なもの。(goo映画より)

 定年まで高校の校長を務めた松太郎(緒形拳)は、妻をアルコール依存症で亡くし、ひとり娘とも絶縁状態。家庭を顧みなかった過去の自分を後悔しながら、安アパートでひっそりと暮らし始めた松太郎は、隣室の女が幼い娘・幸(杉浦花菜)を虐待していることに気がつく。それ以来、何かと少女を気にかけていたが、ある日ついに惨状を見かね、彼女をアパートから連れ出してしまう。旅に出た二人の間に、少しずつ生まれていく絆。しかし世間は“誘拐”と見なし…。

 当初、幸は孤独な松太郎に心を開かない。
 虐待により、まわりの大人に対して警戒心が強いのだ。
 一方、松太郎も見ず知らずの幸をどう扱っていいかわからない。
 鳥の雛(ひな)のお墓をいっしょに作った時は心を通じ合わせたかに見えたが、すぐに心を閉ざしてしまう。
 ファミレスで幸のために<鉄板のハンバーグライス>を注文した時は、「熱い!」と鉄板をひっくり返されてしまう。
 だが、この<ひっくり返し>には理由があった。
 虐待で火傷を負わされていた幸は熱いものが怖かったのだ。
 こうして少しずつ心を通わせていくふたり。
 しかし、一方で誘拐事件として警察の手が迫る。

 松太郎にとって幸は<同行者>だったんですね。
 いっしょにご飯を食べて、笑って泣いて、愛情を注げる存在。
 それは他人のどんな小さな子供であっても関係ない。
 当初、松太郎は幸の手を引いて歩いていくが、作品のクライマックスでは、幸が松太郎の手を引いて歩いていく。
 虐待から幸を救ったはずの松太郎が、最後には幸に救われているのだ。
 そう言えば、幸は幼稚園の学芸会で使った天使の羽根を背中にいつも着けていたが、もしかしたら松太郎にとって救いの<天使>であったかもしれない。

 人生は長い散歩。
 ひとりで歩いていくのもいいが、同行者と共に歩いていくのも悪くない。
 いや、きっと散歩を豊かなものにしてくれる。

 そしてラストシーン。
 ネタバレになるので書きませんが、あのラストにはいろいろ考えさせられる。
 あのラストが作品にさらなる深みを与えている。


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川の底からこんにちは~中の下から始めよう!

2011年05月12日 | 邦画
 主人公・木村佐和子(満島ひかり)は言う。
 「あたしって中の下だから」
 不況の時代が続き、閉塞感が漂う中、われわれ、特に若者の意識は<中の下>なんですね。
 これが高度経済成長、あるいはバブルの時代なら違っていた。
 一億総中流、「がんばれば報われる」という言葉を素直に信じることが出来て上を向いて歩けていた。
 バブルの時などは、<JAPAN AS NO.1>だった。
 だが、現在は違う。
 みんなが行き詰まって、<中の下>意識。

 この作品、前半1時間は、主人公・佐和子の<中の下>意識がダラダラと語られる。
 「中の下だから派遣社員で、不当な扱いを受けても仕方がない」
 「中の下だから、バツイチ、子持ちの情けない中年男とつき合っていても仕方がない」
 「中の下だから、実家の工場のおばさんたちに<男に失敗したバカ女>と悪口を言われても仕方がない」

 こんな佐和子が後半大きく変わる。
 たくましく開き直る。
 彼女は言う。
 「中の下のどこが悪いの!」
 「あんたたちだって、中の下じゃない!」
 「中の下なんだから、がんばらなくちゃ!」

 今まで
 <中の下>→「仕方がない」     と考えていた佐和子が
 <中の下>→「がんばるかしかない」 と大きく変化するのだ。

 これが佐和子のたどり着いた境地。
 たくましい自己認識だ。
 そして現代のこの国も、ここからスタートしなければいけない様な気がする。


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