桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2005・7・5

2005年07月06日 | Weblog
近所の常連Mちゃんが入ってくるなり「ねェ、『Lちゃんの店』って六時開店だっけ?」と聞く声が厨房に届く。Lちゃんも何のためらいもなく「六時ですけど」と答える。聞き逃せばなんてことのない会話なのに、俺はオムライスを作っていた手を一瞬止めた。桃井の店じゃなくて、Lちゃんの店なのね?普通なら傷ついてもおかしくないのに、俺はしてやったりと北叟笑む。電話が鳴る。俺が出る。「Lちゃんいます?」声で分かる。女優IさんのマネージャーSさんだ。俺が出ているのに彼女はLちゃん指名だ。MちゃんもSさんも別にLちゃんの友達と云う訳じゃない。Lちゃんがウチのスタッフになる前からのお客さんだ。その彼女が無意識に『Lちゃんの店』と思ってしまっている程、店にLちゃんの香りが漂っていると云うことだ。昨日から働き始めたTちゃんに仕事の指示をする彼女の姿も堂に入っている。そんな彼女を見ていたプロデューサーのAさんが「Lちゃんに店を任せて桃井さんは引退したら?」と追い打ちをかける。Aさんは冗談で云ったのかも知れないが、そんな日が来るのはそう遠くないと思っている。いや、そうでなくちゃ俺の年齢的にもコレドは十年後には存在しない。でも、今はまだ……スタッフ一人分の人件費を省く為にも俺が働かなくちゃ。