μ受容体阻害薬は
競合的阻害を示すものと
非競合的阻害を示すものとがあり、
現在、国内で投与が可能な
オピオイド誘発性便秘に用いることができる
末梢性μ受容体阻害薬は
非競合的阻害であることがわかっています。
非競合的阻害というのは
受容体への結合が席取りゲーム(一つの席を二人で取り合う)ではなく、
別のところに結合し、受容体に影響を与えることで
阻害するといったものです。
ですから、ある程度十分な薬剤の量であれば、
それ以上は増やさなくても
効果はあるため、
オピオイドの投与量によらず、
増量しなくてもよいことになります。
例えば
席取りゲームだと
席分、取り合う人を増やしていかないと
負けてしまいますが、
別の場所に座って、
席を倒していくような阻害をするなら、
一人で複数の席も倒せるので、
人の数を増やさなくてもよいわけです。
とはいえ、ある程度の人数は必要になります。
10席ちょっとの椅子があるところで
一人で7席倒せていて、
二人で10席倒せて、
三人になると10席で
それ以上増えてもそのままといったイメージです。
末梢性の耐薬症状って
イメージできないと
言われることがあります。
あくまでもイメージすぎないことを
前提に・・
それまで、立ててあった席で、
流れ出すものがせき止められていたところ、
速やかに席が倒されたので、
急に流れがよくなるところを想像してみてください。
その後、段々と
倒れた席と流れが落ち着いてバランスを取り戻していきます。
これが、耐薬症状からの回復です。
すでに一か月以上、オピオイドを内服していて、
便秘になっていた患者さんでした。
末梢性μ受容体阻害薬を検討しましたが、
末梢性の耐薬症状を起こす可能性は
否定はできないと考えました。
そこで、
席取りゲームで倒す人を
少なくしてみることを考えました。
急に、椅子を倒すと
一気に流れてしまうため
二人で10席を倒してしまうのではなく
一人で7席を倒したとします。
一気に・・ではなく、流れは
影響を受け切っていない席(倒れていない席)に
遮られてよりやや緩やかな流れとなることが予測されます。
つまり、薬剤を少ない量にすることは
耐薬症状の下痢を
少しでも抑えられる可能性があることを意味します。
しかしながら、
薬剤を1錠から0.5錠にしたとしても、
本当にどこまで7席、5席分の強さになるかは
わかりません。
10席のままかもしれませんが、
少なくともそれより少なくなる可能性はあります。
一方で、薬剤として十分効かないかもしれませんから、
反応を見たのちに1錠にしなくてはいけません。
初回は0.5錠内服としたところ、
6時間で排便がありました。
腹痛も悪心もなく、
患者さんからはバナナ数本分のお通じが出たと
言われました。
その後、ほぼ連日排便を認めていましたが、
1週間程度したころ、出ない日が出てきたため
1錠にしてまたほぼ毎日のお通じとなりました。
(あくまでも、これは孤発的な反応にすぎません)
一般論として、阻害薬の耐薬症状をできるだけ少なくするためには、
減量、投与間隔をあけることなどが薬理的には考えられるところです。
臨床現場でどのようにしていくのがよいかは
今後、臨床的な結果を集積し、
慎重に考えていく必要があります。
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