緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医療用麻薬の耐薬症状は(脳ではなく)腸管だけでも起こる。

2019年03月31日 | 医療

末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
ナルデメジン(一般名)が
オピオイドの便秘に対し、
国内で投与が可能となって
随分とオピオイド誘発性便秘症の
コントロールがやりやすくなってきました。

ただし、今なお、
オピオイド開始後、随分たってから
便秘の管理にナルデメジンを開始するかどうか、
迷う場合もあります。





ナルデメジンは、
基本的に、中枢性にμ受容体を拮抗し、
耐薬症状を起こすことはありません。
(中枢のμを介する作用、つまり、
 拮抗して痛みを悪化させることはありません)

一方で、 末梢性にμ受容体を拮抗し、
末梢の耐薬症状を起こすことはあります。
(末梢のμを介する作用、つまり、
 拮抗して便秘から下痢にさせてしまうことがあります)

腸管のμ受容体に、ナルデメジンが結合したら、
末梢局所(つまり、腸管だけ)の
耐薬症状を起こすのです。

腸管の耐薬症状は下痢です。




え?でも、そもそも便秘に使う薬剤だから、
作用が強く出て、下痢になるのでは?
と思うかもしれませんが、

ちょっと違っていて、

最初、下痢になったと思ったら、
数日でその下痢が納まってくるような下痢です。

薬剤の効果との下痢なら、
飲んでいる間はずっと下痢になるのですが、
それが、数日くらいで下痢ではなくなってくるのです。

こうしたときの下痢は
耐薬症状による一時的な下痢の可能性を考えます。






基本的に、
ナルデメジンを投与する前の
オピオイドの量が多ければ多いほど、
また、期間も、長ければ長いほど
つまり、暴露量、暴露期間、暴露頻度が多いほど
身体依存が起こりやすく、
結果、耐薬症状が起こりやすいことが
分かっています。

HN Bhargava Psychopharmacology 52:55-62,1977
AE Takemori et al Eur J Pharmacol 221:223-6,1992


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「こちら側」と「あちら側」 | トップ | 阻害薬の特性を踏まえて »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事