緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

抗がん剤の嘔吐に、臨床試験を経ることなく適応拡大されたデカドロン

2008年06月22日 | 医療

ステロイドの話題をもう一つ。
デカドロンが、平成17年に臨床試験を行うことなく
抗悪性腫瘍剤の消化器症状(悪心・嘔吐)に適応拡大
されたことをご存知でしょうか。

その根拠とされたものの一つが
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)の臨床診療ガイドラインでした。
デカドロンは、ランダム化比較試験で抗腫瘍剤の制吐効果が証明され
世界の標準治療となっています。

国内での、用量・用法は、経口、静注ともに
4mg~20mgです。
(20mgまで、可なのですよ!!!)

ある患者さんから、化学療法中の嘔気が激しく
悪夢をみてしまうと言われたことがありました。
投与内容を確認したところ
嘔吐対策がまったくなされておりませんでした。
使われていた抗腫瘍剤は、消化器症状のリスクが
中等度の分類にあたりました。
当時(かなり以前の話です)、高度なものはデカドロン8mg、
低いものは4mg程度という感覚でしたので、
6mgを前投与することを主治医に提案しました。
患者さんからは、「こんなに楽に治療が受けられたなんて
今までのは、なんだったのでしょう」
と、大変感謝されたことを思い出します。

この保険適応となった用量を考えても
症状が強い場合には、20mgまで増量が可能です。
ASCOでは低リスクですら、デカドロン8mgとしていますので・・
(ただ、日本人の体型を考えると、この量は、ちょっと多いなあと思いますが・・)

ステロイドというと、アレルギーや自己免疫疾患での長期投与を思い描き、
副作用から差し控える医療者も、
差し控えて欲しいと希望される患者さんもいらっしゃることでしょう。

でも、高用量を単回投与することと少量長期投与することとは
異なります。

がん治療が予定した最後まで実施できるよう、
ステロイドを上手に使っていってほしいと思います。
こうしたことも、「早期からの緩和ケア」の一例です。


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5 コメント

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Unknown (shino)
2008-06-28 11:44:45
呼吸器病棟を担当している薬剤師です。
肺癌の化学療法ではシスプラチンがkey Drugですが
以前はなかなかステロイドを使用していただけず
患者さんの嘔吐・嘔気コントロールに苦難しました。

今は抗癌剤投与は全てレジメン管理となったので
ASCOガイドラインに基づき、しっかりしっかり
急性期遅発性両方にステロイドを使っていただけるようになりました!
最近はかなり吐き気で苦労する患者さんは減ってきて嬉しい限りです。

毎回毎回ステロイドの追加処方をDrにお願いしていたころに比べると、今は非常に安心して化学療法を見守ることができますが、そうやってDrに処方を依頼したり、自分で必死に勉強していたことはよい経験になったと思います。

化学療法の副作用コントロールも緩和ケアですよね?
患者さんたちが少しでも副作用でつらい思いをしないように、これからも頑張ろうと思いました。

先生のブログは本当に勉強になります。
またいろいろな情報をよろしくお願いいたします!
返信する
shinoさん (aruga)
2008-06-28 22:55:30
薬剤師さんの専門性が感じられるコメントに、分担型の古いチーム医療ではなく、重なり合うところを補完したり、強化するようなチーム医療機能を感じました。何とか患者さんが楽に治療できるようにという心意気が伝わってきて、私も頂いたコメントから刺激を受けました。
今後とも、よろしくお願いいたします。
返信する
化学療法の嘔吐 (TK)
2008-07-01 23:20:00
いきなりで申し訳ありませんが…
化学療法中のデカドロンの具体的な処方方法を教えて下さい

精巣腫瘍でBEP3クール目になります 30才 体重は現在60Kg 身長178cm 5日間シスプラチンが20mg入ります
1・2クールでは主に4日目から シスプラチン後に顕著な嘔吐があり 7日目ぐらいまで 続きます
治療当初は炎症反応が高く デカドロンの嘔吐予防的 投与を主治医にお願いしましたが…上記の理由で却下でした
2クール目からは カイトリルが2回/day与薬され
今回も同様ですが…

精神的にも一杯々で…
嘔気・嘔吐だけでも軽減をと思い 再度主治医に上申したいと思うのですが…
具体的な処方方法を教えていただけないでしょ~か

補液は生食2Lとラクテック500ml/day ケモ輸液総量は2200mlです
よろしくお願いします
返信する
デカドロン (aruga)
2008-07-01 23:38:46
シスプラチンは、嘔吐リスク高度群になります。ASCOレジメにはデカドロンの用量は書かれなくなりました。嘔吐リスク低いもので 8mgと記載されています。一例として、シス投与の前ボトルに、デカドロン8mg(以上)をいれて投与するだけでも違います。通常、数日のステロイド投与は免疫応答をすり抜けるとも言われ、エビデンスレベルの高い文献を私自身が確認したわけではないので強くはいえないのですが、血液内科の医師に聞くと、2日間程度は問題にならない(医師によっては4,5日は問題ないと答えるものもおります)シス投与前に8mgを投与し、その翌日、翌々日に半量程度を追加投与することもあります。
(院内には、化学療法の専門医はいらっしゃいませんか?このあたり、医師間でディスカッションしなければ、中々難しいような気もしますが・・)
返信する
ありがとうございます (TK)
2008-07-02 00:07:56
さっそくの解答ありがとう ございます
当院には化学療法専門医はおりません(泣)
化学療法に於いては レジメンは有りますが… 副作用対策は主治医の裁量に任されており… 悲しいかな 嘔気・嘔吐にたいする予防的処方は愚か 食事が全く取れなかったり 血液データの変化を認めれば 補液で持続点滴のみ…が現状です(悲)

さっそく 明日 主治医に掛け合ってみたいと思っています。

緩和ケアも含め 若いスタッフにも 理解と協力 そして スキルアップ をすすめて行きたいと…考えています

スキルミクス 先生が書いておられた
医師の指示正確に行う事
看護師としての誇りや醍醐味 やり甲斐はどこに有るのでしょ~か?

ペインコントロールもまさに さじ加減
ある一定の範囲の指示で 自分の裁量で患者さんの痛みが緩和 できた時の嬉しさ 喜び そして 何より 患者さんの 楽になった の一言 また 穏やかな表情! あ~看護婦やっててよかったぁ~ って 思える僅かな一時を…

でも でも 先生!
今や 悲しいかな その指示さえ 正確に出来ないのが現状なんです(悲)

看護婦としての誇りはどこに有るのやら…
せっかく 医師 が 任せてくれてるのに…

医師には 悪いけど 私はあなたのロボットじゃナイ! 24時間患者さんを観てるのは私達看護婦です(笑)

あ~そんなチームで働きたい
でも でも そんなチームに造りあげて 行きたい!そのためにも 日々患者さんの元に足を運び 心と耳を傾けて 行きたい!

先生! ありがとうございました。

また よろしくお願いします TK
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