緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

AYA世代(15歳~39歳)の”今を生きる”を考えよう

2022年11月06日 | 医療
AYA世代・・

A :adolescence 思春期
YA:young adult 若年成人

の略で、アヤ世代と呼びます。
15歳から39歳までを指すことが多いです。

TomによるPixabayからの画像

がん診療において、今、世代別のサポートのあり方が議論されています。
小児、AYA、壮年期、高齢者とそれぞれ抱える悩みは異なります。

AYA世代の支援は、就学、就労、妊娠・出産や妊孕性などの問題が挙げられます。

妊孕性(にんようせい)とは、妊娠する力に関すること。
男女共に関係します。
手術などの治療を受ける前に卵子や精子の凍結保存を行うなどで、妊孕性温存などの選択ができるようになってきました。

高齢とAYA世代とで癌に罹患することとは、悩みが異なります。




2017年第22回日本緩和医療学会学術大会の大会長を務めました。
市民公開講座のタイトルは・・・

拝啓 若者たちへ
~AYA世代(15歳~30代)の”今を生きる”を考えよう

横浜大会のAYAテーマでしたから、横須賀で同じ世代の小泉進次郎さんを招聘したく、ご登壇のお願いに議員会館で行きました。

2016年、丁度そのころ、高額治療費がかかるオブジーボをきっかけに、治療によっては年齢制限を検討すべきではという議論が河和田町の中でささやかれていました。

率直に聞かれました。

6000億円を超える厚労予算(当時)・・
どう思いますか。
高額な治療にある程度の条件を加えることについて・・


有効性や副作用による選択ではなく、年齢で制限を設けるということについてという質問でした。
答えました。
年齢に関係なく、誰でも治療を選択する権利があります。
その制限を制度として設けるべきではありません。
強制や制限ではなく、患者さんが自由意思で、適切な時に治療をやめる決断をすることができることが望ましい形です。
アメリカの研究で、進行性肺癌で早期から緩和ケアチームが介入した患者さんは、介入がなかった患者さんに比較して有意に長生きをしたという報告があります。これは、緩和ケアチームが介入した結果、適切な時期に治療を終了することができたことが理由として考察されています。
やりすぎの治療は生命予後によくない影響を及ぼします。
一方で、やめるという選択をすることは心情的にもたやすいことではありません。
しかし、緩和ケアチームが介入したことで、患者さんは視野を治療から生活や人生に広げて考え、支えられている中で重大な決断をすることができる、これが、緩和ケアなんです。



小泉さんは答えてくださいました。
今まで厚生にはあまり関わってきていなかったので、実は、今回はお断りしようと思っていました。
でも、今の話を聞いて、緩和ケアのことをもっと知りたいと思いました。
登壇しましょう。
ただ、私から皆さんに質問して学ぶ場とさせて欲しいのです。
ですから、講演という形ではなく、お願いできますか。



そして来てくださった時のWebサイトがまだ残っていました・・


懐かしいなあ・・



この市民公開講座で
小泉さんが医療スタッフに開口一番にした質問は・・

タイトルになっているAYA世代って何ですか?

でした。



最後に、
私は今日は政治家として参加してきたわけではありませんが、ただ、立場として皆さんから何かご要望があれば、お伺いしたいと思うのです。


壇上に一緒に上がってくれていたAYA世代の時にがんを治療した経験があるサバイバーの方から発言がありました。

AYA世代の患者は、介護保険が使えないのです。
40歳以上になれば、がんの進行状態によっては介護保険が使えます。
39歳は使えないんです。


これは、2号被保険者として40~65歳までは、進行性のがんと主治医が判断した場合は、抗がん治療中であっても、介護保険が適応されますが、40歳未満は使えないという現状を伝えたものになります。


小泉さんはおっしゃいました。
介護保険の徴収をしていない年齢に適応するのは難しいという背景があります。
でも、AYA世代の患者さんが抱える問題として介護保険のことがあるという現実まずは、ここで受け止めました。


そうか・・
保険料を払っていない年齢には適応できないという理由だったのか・・
やっと理由を知ることができました。



あれから5年が経ちました。
来年の4月に第3期から第4期となるがん対策推進基本計画の議論が繰り返されています。
まちがいなく、ライフステージ別の支援の在り方はさらに具体的に盛り込まれていくことでしょう。
その中に、AYA世代という言葉も含まれると思います。
2017年当時は、一部の人しかしらない言葉でしたが、AYAという言葉は市中に広がっていくことでしょう。

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