緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

緩和ケア病棟に到達した患者さんは・・

2017年03月26日 | 医療

あくまでも主観ですが・・

緩和ケア病棟の患者さん達を見ていて思うこと。

がん患者さんのエリートだなあ・・と。



緩和ケア病棟に移動されてきた患者さん達は、
自己決定や家族との話合いを経て、
ご自身たちなりの決定をし、
そこに至った方々です。

ご自身なりに決めることができた方々。

・・・これはけして、緩和ケア病棟に移動されなかった方が
自己決定ができていないという意味ではありません。
一般病棟にはそうした方も、そうしなかった方も
そうしたくても情報が届かなかった方も
混在しているということを意味しています。
一方、緩和ケア病棟に移動された方は、
ずべての方が、考え、意思表出をされた方々です。




ところで、メンデルの法則を思い出していただくと、
遺伝子の多様な状況はヘテロジーニアスといい、
これは、ヘテロと略します。
一方、均一な状況をホモジーニアス、ホモと略します。
そのことから、多様な集団をヘテロと表現して議論することもあります。
言葉としては、ダイバーシティの方が
多様性という文学的な要素も含んではいるのでしょうが、
対比しやすいヘテロとホモを口語的に使うことがあります。

そういう意味では、
一般病棟の患者さんのヘテロ(多様)さに比較すると
緩和ケア病棟の患者さんはは意識や自己決定力は
よりホモ(均一)であるといえましょう。






ところで、専門的緩和ケアとしての提供体制には
緩和ケア病棟、緩和ケアチーム、
在宅緩和ケア、緩和ケア外来と
4つの形態があります。



緩和ケアチームは、
今後どのように治療選択を考えて行こうかという
患者さんの自己決定プロセスに関わりますから、
潜在的な想いの整理や
新たな気づきの支援など
多彩な患者さん背景に対応できるトレーニングが
日頃の診療を通して積まれている状況にあります。

一方、緩和ケア病棟で働くスタッフは、
実は、こうした多様な患者さんに対処することに
不慣れなのではないかと最近思うようになりました。

ただし、緩和ケア病棟の入り口を担当している医師や看護師、
つまり、病棟入棟のための外来に出ている医師や看護師は、
そうしたスキルは高いです。
しかし、転床してきた後の患者さんのケアをするスタッフ
-つまり、緩和ケア病棟の看護師さん達-は、
ホモ(均一)な患者さんを日常的にケアしているため、
いざ、病棟から緩和ケアチームに配置転換されると
ヘテロ(多様)な患者さんに対応しきれないのではないかと思うのです。

また、緩和ケア病棟の看護師さんから
患者さんは、
緩和ケア病棟のことをご理解されていないようですとか
抗がん治療が諦めきれないようですとか
聞くことがあります。

理解しきった患者さん、治療方針に揺れない患者さんが
当たり前を思ってしまっているのではないかと
大丈夫かな・・?と思うような場面もあります。





思い返せば、私が15年ほど前。
国内では緩和ケアチームはなく
意思決定支援を緩和ケアスタッフが行うという意識はあまりないころ、
緩和ケア病棟に勤務していて、
私自身、同じようなことを言っていたなあと思いだします。

特に、国立の緩和ケア病棟に勤務していましたので、
そのネームバリューに助けられていました。
その楽な感覚に、これは違うな・・と感じ、
本来のがん治療現場にもう一度所属して、
治療現場でこそ緩和ケアの必要性を考えてみたいと
思ったこともそこにありました。

その結果、とても大変でしたが、
あらためて、大変な葛藤を潜り抜けた後に
緩和ケア病棟に移っていく患者さんを
知ることができたように思います。



専門的緩和ケアと一言で括ってしまいがちなこの頃、
それまでの経験した提供体制によって、
スキルアップが必要な点が異なっていることを意識し、
勤務の場を変えた時は、弱いところを見つめて行くこと。

患者さん側から見た時、
緩和ケア病棟に到達された患者さんやご家族は
葛藤を潜り抜け、到達されており、
決めることができている強さに
実は、医療者は随分と助けられていることも
忘れてはいけないことではないかと思います。

本当に、緩和ケアとは奥が深いケアだと思います。



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