国内で使用できるオピオイドには、
μ受容体作動薬とデュアルアクティングオピオイドの
2タイプがあります。
デュアルアクティングオピオイドには、
μとSE(セロトニン)、NE(ノルエピネフリン)に関与するトラマドール
μとNET(ノルエピネフリントランスポーター)に関与するタペンタドール
があります。
タペンタドールは、今年、使用可能となりました。
鎮痛補助薬様な作用が期待され、
SEはどちらかというと情動系
NEはどちらかというと鎮痛に関与しますから、
トラマドールより、より鎮痛ターゲットを絞って、
効果が期待できるのではないかと考えられています。
また、タペンタドールは、オキシコドンと
5:1で同等の効果が認められており、
副作用の便秘は少ないという結果のようです。
(J Pharmacol Exp Ther. 2007; 323:267-276)
(Current Medical Research &Opinion 2013;29(109),1399-1409)
興味深い薬剤です。
ただ、どうしても、気になるのが、
有効限界の存在と、
NETに関連した副作用なのです。
悪性骨髄腫を大腿骨に移植したマウスの骨がん疼痛モデルを用いた
オキシコドン、モルヒネ、トラマドール、タペンタドールの
鎮痛比較をみると、
後者2剤は副作用でED80である鎮痛効果が到達していませんでした。
(副作用は、Rota-rod testによる異常行動)
μをβ‐FNA、、α1をプラゾシン、α2をヨヒンビンで
ブロックすることで見た実験では、
この骨がん疼痛モデルの鎮痛は、
オキシコドン、タペンタドールともにμのみによるもので、
副作用は、オキシコドンはμ、タペンタドールはμとα1の
可能性が示唆されていました。
座骨神経を50%まで結紮した神経障害性疼痛モデルでは、
鎮痛は、オキシコドン、タペンタドールともに、μのみ
オキザリプラチン投与後の神経障害性疼痛モデルでは、
鎮痛は、オキシコドンはμ、タペンタドールはμとα2でした。
(J Pharmacol Sci. 2014;125,264-273)
つまり、用量や条件によっては、
タペンタドールに特徴的な
NET(ノルエピネフリントランスポーター)阻害作用による
鎮痛補助薬的な効果は認められない場合もあり、
副作用として、α作動性のものが関与する可能性も否定はできないこと、
鎮痛用量に達する前に、副作用が出る可能性もあることが、
上記のマウスの実験で報告されています。
最少量25㎎、一日2回となると、一日50㎎
オキシコドンに換算すると、1:5から10㎎相当。
つまり、オキシコドン最少量で開始することと、
ほぼ同等で開始することになります。
α作動性鎮痛は思ったより著効的なものではなさそうですし、
副作用がオキシコドンより極めて少ないというわけでもないようです。
明確な優位性が、今の私の知識の範囲では
見つからないため、もう少し、勉強をし、
成り行きをみていきたいと思っています。
また、今回のマウスの論文は、
用量設定やデザインには批判的な吟味も必要ですし、
マウスが人の鎮痛と同じというわけではありませんから、
慎重な読み解きが必要とも思っています。
よい論文や情報がありましたら、
是非、ご教示お願いいたします。