緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

在宅訪問診療の思い出(3)

2007年11月06日 | 医療

高カロリー輸液を
12,000mlから1,500mlにして
3日間様子を見た後
さらに1,200mlまで減量しました。
それで、嘔吐は5分に1回から
2時間に1回になりました。

でも、嘔吐がとまっているわけではありませんので
あきさんに尋ねました。

「点滴をもう少し減らしてみますか?
 それとも、この程度で様子をみましょうか。
 吐き気止めも使うことはできると思います。」

あきさんはこのようにおっしゃいました。

「先生。2時間に一回
 夜は結構5時間くらい
 まとめて寝られるようになりました。
 本当に楽になりました。
 痛みもなくなりました。
 これで、ちょっと様子を
 みてみたいと思います。
 外科病棟にいたときから考えると夢のようです。
 外科の先生からも、看護師さんからも
 あなたは自宅に帰れば、苦しくて
 1週間もしないうちに病院に帰ってきますよって
 言われていたんです。
 これなら病院よりも楽ですから
 このまま家にいられます。
 吐き気止めも今はなくて、大丈夫だと思います」

それからも、ちょっとした治療でも
その目的と得られるメリット
そして、副作用をキチンと説明して
あきさんと選択していきました。
あきさんは、いつも穏やかに
でも、ご自分の気持ちを正直に伝えてくださいました。
自己選択ができること。
これは、症状緩和をする上でとても大切なことなのです。
納得しながら、治療をともに進めていくことができると
症状の悪化があっても、心は踏ん張れるものです。
疑問を持ちながら、予想を超えたことが起こると
誰しも大変不安になることは想像できると思います。
大学病院で、積極的な治療がなかったあきさんは
身体状況を包み隠さず聞き
自ら自宅に帰るという選択をなさっただけあって
モルヒネを投与していることも
ご自身に時間があまりないことも了解なさっていました。

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