江戸前ネギ巻き寿司

オタク一匹の日常を綴る。
※各種作品のネタバレを含みます。
※最近は多肉植物・サボテンの観察日記的な要素も。

プルトニウムと半月。

2006年07月09日 14時43分57秒 | ラノベ
 さて、今日は特に書く事も無いので、我がバイブルについて語りましょうか。
 以前、『猫と地球儀』が我がバイブルと書きましたが、一番は沙藤一樹先生の『プルトニウムと半月(角川ホラー文庫)』です。
 この作品は、原子力発電所の事故を切っ掛けにして運命を狂わされた双子の姉妹の物語ですが、これがもう「悲劇」としか言いようのないものでして……つдT)。一人は双子の片割れを裏切ってしまった事を後悔しつつ、普通の日常の中を生き。もう一人は、罪を犯したが為に放射能に汚染された地区に身を隠し、名を変え、成長を止めて性別を偽り、それでもささやかな生活を手に入れて送っている。
 だけど、結局二人ともその悲劇的な運命の渦からは逃れられず、飲み込まれていくのです。そんな姉妹の再会シーンは号泣物。
「夢を見ていたんだ。イルカが尾頭つきで売っていた。40円だった」
 この一見ファンタジックにも見える一連のセリフは、涙無しでは語れません。そして、このセリフが、まさか衝撃のラストへの伏線になっていたとは想像も出来ませんでした。この結末は、軽い気持ちで読んでいると確実に打ちのめされます。また、少々のグロ耐性も必要でしょう。ともかく、決して読後の後味が良い話ではありませんが、私がここまで心を揺さぶられたのは、後にも先にもこの作品だけだと思います。
 また、この作品は、その表現力の凄さもただ者ではありません。とにかくその文章からは、恐ろしいまでに明確なイメージを連想させられるのです。正直、漫画か実写ドラマとして再現してみたくなるほどインスピレーションを受けましたし、文章書きとしては最高のお手本だと思っています。
 ともかく、出来ればたくさんの人に読んで貰いたい作品ではあります(ただし、ある程度の残酷描写に耐性のある人のみ)。ただ、現在は絶版していると思うので、興味がある人は古本屋でさがしてみて下さい。読めば、良くも悪くも、確実に衝撃を受けるであろう作品です。
コメント
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