プロメテウスの政治経済コラム

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小沢裁判控訴と東電事業計画  消費税増税と原発再稼働にかける支配階級の強い意思をみる

2012-05-10 20:20:23 | 政治経済

消費税増税と原発再稼働が国民の強い反対で、どちらに向かうか正念場のたたかいが続いている。そのようななかで、東京地裁で「無罪」とされた小沢一郎民主党元代表を検察官役の指定弁護士が控訴を決定し、小沢氏は引き続き刑事被告人の立場に立たされることとなった。言うまでもなく小沢氏は、民主党内で支配階級の忠実な僕である野田一派と消費税増税を巡ってもっとも鋭く対立してきた。

一方、枝野経済産業相は9日、関係閣僚会合で、東京電力と原子力損害賠償支援機構が提出した総合特別事業計画を認定した。この事業計画では、2013年4月から順次、柏崎刈羽原発を再稼働させることを明記している。そして政府は10日、関西電力が大飯原発3、4号機を再稼働すれば、今夏の供給力は2988万キロワットで、ピーク時の需要(2987万キロワット)をわずかに上回るとの見通しを政府の需給検証委員会に提示したのを受け、関電大飯原発3、4号機が再稼働すれば、電力不足がほぼ解消されると言いだした。
何が何でも、消費税増税と原発再稼働の実現にかける支配階級の強い意思をみる思いである。

 

一審無罪の小沢民主党元代表を検察官役の指定弁護士が控訴する背景には何があるのか。単純に判決に納得できないからということではなさそうだ
天木直人さんは、「税理士が国税庁の官僚支配から逃れられないように、医者が厚生官僚の支配から逃れられないように、犯罪人が警察官僚支配から逃れられないように、弁護士もまた司法官僚から逃れられない」という(天木直人ブログ「この国を不幸の奈落に突き落とした3弁護士の控訴決定」)。

司法官僚の背後に米国の強い意思があったことは、マイケル・グリーンが、鳩山、小沢両氏がそろって退陣させられた直後の2010年7月の日経新聞で、政権交代の何が問題か―その第1番目に過剰な反官僚姿勢をあげていたことからも明らかである。東京地検特捜部による本件強制捜査は、「アメリカいいなり、財界中心」の自公政権に代わる政権交代を主導した小沢氏への支配階級からの報復であった(小沢氏が「政治とカネ」で問題があることが逆手にとられた)。
新しい検察審制度で、小沢元代表が強制起訴されたのは、市民が「白か黒かを法廷で決着させたい」という結果だった。「白」という決着がすでについているのに裁判を長引かせるのは、小沢氏が目障りで仕方ない勢力からの別の意図が働いていると思わざるをえない。これで、9月の代表選に小沢氏が出馬することが非常に難しくなった。「国会審議の中で、野田政権が自民党などからの修正を丸のみする形で消費税10%増税法案を成立させる」という財界筋が描くシナリオに一歩近づいたというわけだ。

 

原発再稼働にかける経産省や電力会社などの原発利益共同体の執念には、凄まじいものがある。福島原発事故による放射能被害が今後どれだけ続くかわかない段階で、そしていつ大地震が勃発するかわからない日本で、まともな神経の持ち主なら、原発依存ゼロから、電力不足にどう対処するべきか、今後のエネルギー計画をどうすべきかを考えるのが真っ当な道筋である。しかし、原発利益共同体には、端から原発依存ゼロの気持ちなど持ち合わせていない。東電の広瀬直己次期社長は8日の記者会見で「(原発再稼働なしは)もったいない」と公然と言い放った
発電に占める原発依存度について検討する経産省の『総合資源エネルギー調査会基本問題委員会』がこれまたひどい。委員25人のうち大半が原発推進派で固められているうえに、委員長の三村明夫氏(新日鉄会長)の議事進行が出鱈目である

「原発依存度を0%に」とする委員が8人いてもあしらう一方で、たった1人の委員が主張する「依存度35%」を重要視するのである(田中龍作ジャーナル「超党派議員が抗議した『経産省エネ調』 原発新設の不思議」2012年5月8日)。この“エネルギー調査会” 事務局制作のレジュメは、2030年段階での原発依存度の選択肢を「0%」「20%」「25%」「35%」としている。「0%」の選択肢以外は、既存の原発の耐用命数を考えたら、原発新設しかありえない。こんなバカげたことが、経産省内で進められているのである。
 

消費税増税と原発再稼働にかける支配階級の意思は固い。これを阻止する国民の側の反対運動も一層の奮起が必要だ。


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