プロメテウスの政治経済コラム

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中国毒入りギョーザ  真相の解明なくして誰も納得しない 政治経済の問題ではなくて科学の問題

2008-03-10 18:09:27 | 政治経済
1月末に中国毒入りギョーザ問題が公式に発覚して40日になろうとしている。中毒の原因となった農薬が、どこで混入したのか。この重要な点をめぐり、ギョーザをつくった中国と被害が起きた日本の捜査当局とが言い合いをしている。しかし、いつ、どこで、誰が、なにをどのようにして、なぜ冷凍ギョーザに農薬が混ざったのかの真相の解明なくして誰も納得しない。これは、お互いが自己主張しあう政治経済の問題ではなくて客観的事実を解明する科学の問題である

中国製冷凍ギョーザ中毒事件を巡り、最も冷静であるはずの捜査当局同士が対立を深めている。日中の捜査当局が有機リン系殺虫剤メタミドホスの混入について「自国での可能性は極めて低い」と主張し合い、互いに不信を募らせても何も解決しない。
違いを鮮明にしたのが、2月28日に中国公安省が開いた記者会見である。ギョーザの製造工場で働く従業員らの聴取結果を踏まえて、「中国で混入した可能性はきわめて低い」とし、捜査に必要な物証や鑑定結果の提供をめぐって、日本側は非協力的だと批判した。 福田首相と先に来日した唐家璇国務委員(副首相級)とは、真相究明のため緊密な協力が重要だとの認識で一致したはずではなかったのか。警察庁次長も25―27日に訪中し、公安省と「緊密な捜査連携」で合意したばかりだった。その翌日、公安省幹部が警察庁に予告もなく記者会見に臨んだ。
中国側が、この問題を客観的事実を解明する科学の問題ではなく、政治経済問題として決着を図る決定をしたと思われても仕方がない。

今回の問題の背景に、工業製品だけではなく、食料品も中国を製造工場化する、日本多国籍企業の開発輸入の問題があることはいうまでもない。その限りでは、政治経済問題である。中国側に、中国商品なくして日本の国民の暮らしが成り立たないクセに、偉そうにするなという気持ちがあるのかもしれない。しかし、製造・出荷、流通のどの段階で農薬が混入したのか、それは過失だったのか故意によるものだったのかなど、真相を突き止めることは、日中両国民にとって避けて通れない問題である。
これを政治問題化し、中国メディアが主に中国当局の見解を報道することで、インターネットには「日本に謝罪を要求する」などと対日非難の書き込みが急増しているという。こうした相互不信は両国民にとって決して利益にならない(「日経」社説3月1日)。

今回の問題の冷凍ギョーザは、日本の商社「双日」と食品事業を拡大している「JT」(日本たばこ産業)のそれぞれの子会社が企画、中国の企業に製造を委託したものである。両社は、凍ギョーザの製造元、中国河北省の「天洋食品」の操業指導と管理監督にどう関わったのか。中国側から見て、日本向け商品の品質にどれだけの責任感をもっていたのか。
佐藤優氏(起訴休職外務省事務官)が意味深い示唆をしている(週刊金曜日2・8)。 彼がモスクワに勤務していた80年代は中ソ対立。物不足の市場に中国物品が流れてきたが、質が悪くて市民の対中感情はさらに悪くなった。だが、ソ連圏の中でも中国と関係良好だったリトアニアでは中国品が良質で、市民の評判も良かった。輸出産品の良否は、生産者や輸出業者の対消費者感情を反映する……というのだ(「毒餃子で日中戦争を煽るな」 週刊誌JCJ2008.2.25より孫引き)。

互いに「向こうで混入した」と言い合うだけでは、解決は遠ざかるばかりだ。ここは冷静にボタンをかけ直し、あらためて両国で捜査を尽くす必要がある。中国側に求めたいのは、さらなる捜査だ。このまま原因がわからないままでは、日本の消費者は納得できない。両国の捜査当局は、うまく連携して粘り強く真相解明の努力を続けてもらいたい。日本で農薬が混入した可能性も含めて冷静で科学的な捜査を期待したいものだ。

[付記]:明日から、1週間の予定で、北京・上海を訪問の予定です。しばらく更新は、お休みです。

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