プロメテウスの政治経済コラム

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首相年頭会見  「大義」なき消費税増税と大手「全国紙」の退廃

2012-01-05 21:18:50 | 政治経済

野田佳彦首相が年頭の記者会見で、あらためて消費税増税に強い決意を表明した。野党と協議し、3月末までに関連法案を国会に提出するという。
それでも消費税を増税するというのか! 2012年度予算案を見た多くの国民は強い怒りを感じたはずである。1メートル1億円の東京外環道、水が余っている首都圏に、総工費9000億円もかけて建設する八ツ場ダム、「小沢ダム」と称される岩手・胆沢ダムの建設費、原発推進の予算はそのまま温存…。不要不急・財政浪費のオンパレードだ。財政危機の折、米軍「思いやり」予算も昨年度より増えた。そして問題は、不要不急・財政浪費だけではない。復興臨時増税により、13年1月から25年間は所得税額に2・1%が上乗せされるほか、14年6月からは個人住民税も年1000円が増税される。片や、法人税率を恒久的に5%引き下げて(3年間だけは約2%の引き下げ)、証券優遇税制も温存する。消費税増税前から、庶民は増税、企業・金持ちは減税の恩恵を享受する構図である。そこに消費税が増税されれば、中小零細企業を含めて庶民の暮らしは破壊され、国民経済も今以上の景気悪化に苦しむことになる。

消費税増税には、まったく大義がない。多国籍大企業と金持ちが負担すべき税金を庶民に押し付けることができるのは、政治家・官僚・御用学者・大手マスコミを財力で買収しているからだ。

 

「朝日」や「毎日」などの大手全国紙は、政府・与党そして野党、とりわけ自民党に消費税増税をけしかける。

『毎日新聞』は1229日、マニフェスト違反に抗議して9名の民主党議員が離党に踏み切った行動を「次期衆院選での逆風をおそれ、党に見切りをつけた自己保身」と難癖をつけ、野田首相に対して「時期や税率も含めた意見集約と法案化への作業をひるまず断行すべきである」と激励した。『朝日新聞』は1231日、「首相と増税――豹変して進むしかない」という社説を掲載し、マニフェスト違反など気にすることなく、覚悟を決めて消費税増税を断行するよう迫った。年が明けて、『朝日』は、「任期中の消費増税を否定して政権に就いた民主党に増税を提唱する資格はない」と消費税増税協議に応じない自民党・谷垣総裁にテーブルにつけと迫る。「野党、とりわけ2大政党の一角として責任を負う自民党は、話し合いに応じるべきだ」(201215日付社説)。『読売』も負けていない。「現役世代の負担に頼る現行制度では高齢者を支え切れなくなるのは明らかだ。すべての世代が負担を分かち合う消費税で財源を賄わないと、欧州のような財政危機さえ現実味を帯びてくる。それなのに、小沢一郎元代表や鳩山元首相ら民主党議員の一部は、消費税率の引き上げに公然と反旗を翻している。『世論受けしない政策を掲げると選挙で勝てな』という保身の論理が見え隠れする。破綻した政権公約(マニフェスト)の墨守をいまだに主張するのは、国民を欺く行為にほかならない」(2012年1月5日)。

 

政府・与党そして野党、とりわけ自民党に大義なき消費税増税をけしかけ、マニフェストを捨てよと煽る。財界に買収された大手「全国紙」の退廃の極みだ。

日本の財政状況を見れば、増税が必要なことは、誰でもわかる。しかし、増税というだけでなぜ、それが即、消費税増税となるのか。増税=消費増税というまやかしは、財界の政治代理人である自民党政権時代からの政府・財務省の世論誘導のなし崩し手法である。増税が消費税増税である限り、大企業と金持ちは安泰である。貧乏人同士が傷をなめ合って、自分たちは高みの見物をできるからだ。大手全国紙が、増税といえば消費税増税を指すというのであれば、大手全国紙は、財界の広告紙と同じだということだこれでは、時の政府与党の財政運営の批判的オブザーバーであるべきメディアの使命放棄と言わざるをえない。まともなメディアであるなら増税=消費税増税という論理の飛躍に待ったをかけ、それとは異なる歳入確保の選択肢を国民に指し示すことこそ求められる。時の政権が推し進めようとする「なし崩しの現実に流されない」理知と知見を世論に提示することこそ、政治ジャーナリズムに課される最大の使命である。

 

消費税増税をめぐる情勢は予断を許さない。現代日本の支配階級である財界にとって、自己の利益を守るために、そして自己の政治代理人の政権を維持するために消費税増税は、待ったなしの課題であるからだ。このままでは、民主党も自民党も予算を組めない。すでに、2012年予算では、基礎年金の国庫負担を2分の1に維持するための財源(2・6兆円)を、すぐには歳出に計上しないで済む交付国債で処理することで、将来の消費増税を財源に充てるという前借りをした。今のところ、消費税増税協議に応じないとする自民党・谷垣総裁が財界の圧力に落ちるのは、時間の問題である。

私たちが、自分の暮らしの破滅を防ぎたいと真剣に思うなら、これまでの政治と経済を根本的に転換することに立ち上がらなければならい。大企業と金持ちが大事だという大手「全国紙」のイデオロギー操作から覚醒しなければならない

 

 


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