プロメテウスの政治経済コラム

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証券優遇税制 大富豪の減税額の大きさにびっくり仰天

2007-03-15 18:41:20 | 政治経済
証券優遇税制は、東京株式市場の日経平均株価が7607円88銭(4月28日の終値)まで下落した03年の税制改正で、なにがなんでも株価反転のきっかけをつかみたい証券業界の強い要求を受けて導入された。上場株式等の売却益にかかる税率は、2002年までは、本則26%であったが、政府は、これを03年から本則20%(国15%、地方5%)に引き下げ、さらに02年から03年にかけて低迷する株価対策として、いっそうの証券優遇税制を実施したのだ。具体的には、03年から07年まで、上場株式等の売却益にかかる税率を10%(国7%、地方3%)に半減。また、上場株式等の配当金についても、本来、20%(国15%、地方5%)の税率を、03年度から07年度まで10%(国7%、地方3%)に引き下げた。5年間の暫定措置であったから、譲渡益課税は07年12月末、配当課税は08年3月末に期限を迎える予定であった。

株価が反転した以上、「株式市場を浮揚させる役割は終えた」わけだし、預貯金や公社債など他の金融商品の利子にかかる税率は20%であり、株式を特別扱いする理由はない。財務省によると、個人の金融資産に占める株式や投資信託の割合は全体では12%であるが、金融資産が1億円以上5億円未満の「富裕層」では39%、5億円以上の「超富裕層」では56%に達し、減税措置の恩恵は富裕層ほど大きい。明らかに「金持ち優遇」税制であり、予定通りに廃止すべきであった。

ところが、政府は07年度税制改正でこの優遇税制をさらに一年間延長することを決め、現在参院で審議中である。 14日の参院予算委員会での日本共産党の大門実紀史議員の質問に対し、尾身幸次財務相は、一つの試算として、証券優遇税制で国税の株式配当分で2400百億円、株式譲渡益分で3600百億円の合計6000千億円の減税となることをはじめて明らかにした。地方税分の1500百億円、別に減税となる申告課税分(源泉分離の特定口座取引以外)を含めると7500百億円以上の減税となる(「しんぶん赤旗」2007年3月15日)。

05年分の申告所得税標本調査(国税庁)をもとに日本共産党の佐々木憲昭衆院議員が試算したところによると、株式等譲渡益にかかる税率を本則20%を10%に軽減している証券優遇税制による減税総額は年約2652億円(申告所得分のみ)。前年と比べ約1295億円の増加であった。このうち申告所得の合計が五千万円を超える階層(1万2298人、全体の3・9%)の証券優遇税制による減税規模は、同約1730億円(減税総額の約65%)であり、同階層は、一人あたり同約1407万円の減税を受けていることになるのだ。
さらに申告所得の合計が百億円を超える階層はわずか7人(全体の0・002%)にすぎないが、この階層の減税規模は同約200百億円に達した。一人当たり同約28億6千万円もの減税を享受しているのだ(「しんぶん赤旗」2007年2月28日)。
2006年は、株式取引の拡大や株価の上昇によって、株式譲渡益や配当収入が大幅に増加しており、一握りの富裕層の減税効果はいっそう激増することが予想される。

自民・公明が証券優遇税制を一年延長した背景には、日本経団連が「来年度税制改正要望」で証券優遇税制の延長を強く求めたことがある。日本の証券優遇税制の金持ち優遇ぶりは、諸外国とくらべても、きわだっている。株式の譲渡益課税は、アメリカ(国15%、地方7―10・5%)、イギリス(10―40%)、ドイツ(15・8―44・3%、短期保有分)、フランス(27%)となっており、いずれも日本の優遇税率10%を上回っている(「しんぶん赤旗」2007年3月8日)。さらに、大金持ちに対して、分離課税は余りにも不公平である。総合課税を是非検討すべきだ。
個人投資家を株取引に引き入れ、「貯蓄から投資へ」の流れを加速するという思惑が透けて見える。ごく少数の大金持ちに何千万円も減税するくらいなら、困っている母子家庭や子どものいる貧困な家庭への支援を増やすことこそいま必要なことである。自公による政治がいかに支配層の利益に奉仕するもであるかここでも明瞭だ。

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1 コメント

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Unknown (消費者金融)
2007-03-16 13:03:46
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