自民党の憲法改正推進本部は、16日に参院選「合区」解消に向けた改憲案条文を、21日に教育分野に関する改憲案条文を了承した。しかし、いずれも粗雑なやっつけ仕事で、何のための改憲なのか意味不明の代物である。ただ見えるてくるのは、「本丸」とする「9条改憲」に道をひらくための党略のみである。意味不明な改憲に多大な労力と資金を費やすのはやめるべきだ。
合区解消に向けた自民党案は、憲法47条に「参院選は広域の地方公共団体(都道府県)を選挙区とする場合、改選ごとに少なくとも1人を選挙」と規定する。しかし、もともと合区は、憲法14条に基づく投票価値の平等の要請を満たすために苦肉の策として導入したもの。改憲の前に選挙制度改革で議論し、結論を得るべきだものだ。
自民党の教育の充実に関する改憲条文案は、教育を受ける権利を定めた26条に3項を新設し、国に教育環境を整備する努力義務を課すのが柱だ。「経済的理由で教育上差別されない」との趣旨も盛り込んだ。しかし、この程度のことなら、わざわざ憲法を改正する意味がどこにあるのか。既に憲法や教育基本法で要請されている内容にすぎない。但し、安倍国権主義者にふさわしく、教育の目的について「国の未来を切り拓(ひら)く上で極めて重要な役割を担う」と明記した。『国民の教育権』ではなく、『国家の教育権』――国策のための教育という命題を入れたのだ。
自民は今回の条文案に維新案の一部を採用した(「経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない」)。本丸である9条改憲をにらみ、「教育は(維新の)協力取り付けの結節点」とみているためだ。しかし、「幼児期の教育から高等教育に至るまで無償とする」は外した。財源問題で惧れをなしたからだ。いよいよ何のための改憲か意味不明である。