プロメテウスの政治経済コラム

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クラスター爆弾禁止へ有志国の取り組み     背を向ける日本政府

2007-02-25 18:26:26 | 政治経済
クラスター爆弾は劣化ウラン弾とならんで、1996年国連人権小委員会で非人道兵器・大量破壊兵器と決議された。この時、唯一決議に反対したのがアメリカである。アメリカは今回のオスロ会議にも参加しなかった(イスラエル、中国も会議に代表を送らなかった)。日本はこの時「棄権」した。何故棄権したのか。いつものように単にアメリカの顔色を伺ったのだろうか。
ところが驚くべきことに、航空自衛隊がクラスター爆弾を総額約148億円分購入し、現在も保有しているのだ。
クラスター爆弾は、車両や人を対象とする無差別兵器である。アメリカ軍によってアフガニスタンでもイラクでも大量に使用され、多数の民間人を殺傷したし、今もしている。代表的なクラスター爆弾は、投下高度にもよるが、投下されると200個以上の子爆弾が約200×400メートルの範囲に飛散する。子爆弾が爆発すると、鉄の破片が空中を埋め尽くし、車両を破壊し人を殺傷する。広範囲にばらまかれるため、あらゆる方角から爆風が襲い、逃れることはほとんど不可能である。さらに問題は、子爆弾の10%―40%が不発のまま残り、地雷原となって、戦後も長期にわたって何の関係もない人を殺したり傷つけるのだ。イスラエル軍が昨年7、8月のレバノン・シーア派民兵組織ヒズボラとの戦闘で大量に使用したクラスター爆弾は、破壊処理しなければならない子爆弾が百二十万発もあるといわれている。

自衛隊が保有しているクラスター爆弾は、米軍と同型で、航空自衛隊のF2戦闘機やF15戦闘機などに搭載することが可能である。しかし、保有する数量については、一切明らかにしていない。クラスター爆弾という兵器の構造と特質そのものが「侵略兵器」であるから、『専守防衛』を掲げる自衛隊が、なぜ保有する必要があるのか――広範囲を無差別に攻撃・制圧する目的のクラスター爆弾を国内で爆破させることは、事実上不可能である。米軍産複合体の商売と朝鮮有事でアメリカとともに戦うときのものであることは明らかである。
しかし政府は、自ら保有することについて、「敵の着上陸侵攻に対処するため、通常爆弾では撃破できないような 広範囲に展開した侵攻部隊の車両等を撃破し得る能力を持つことを目的としてクラスター爆弾を保有している」(小泉親司共産党参議院議員提出のクラスター爆弾に関する質問に対する政府答弁書)、つまり敵が日本に上陸したときに使う、あくまで防衛のための保有だといい続けている。


保有目的がなんであれ、残虐兵器違法化の先頭に立つべき日本が、そして紛争解決の手段として武力行使を認めないはずの日本が、これほど批判の高い非人道的な兵器保有に固執することは、世界における日本の道徳的権威を台無しにするものである。米軍産複合体にのめり込む道は、世界でアメリカとともに孤立し、いずれ没落への道を歩むことである。自主的平和外交の道を歩むためにもアメリカとどのような距離をとるか日本国民は重大な岐路にたっている。有志国の取り組みが条約の締結に結実するよう努力することこそ、いま日本政府に求められているのだ。

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