プロメテウスの政治経済コラム

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NHK受信料義務化  ますます国営放送=権力側に軸足を移すことにならないか

2007-02-12 19:13:18 | 政治経済
放送法が定める受信料制度は、NHKが政府や財界、CM料などによって特定の団体の干渉を受けずに放送を維持していくことを目指している。放送法は国民がNHKと受信契約をすることを定めているが、受信料支払いについてはふれていない。放送法が受信契約は義務付けながら、受信料の支払いを義務付けていないのは、公共放送は国民との相互の信頼関係にもとづく自由な契約で成り立つという精神からである。もし支払い義務を放送法で定めることになれば国民だけに一方的な義務が課せられることになり、信頼関係が根本から崩れることになるだろう(「しんぶん赤旗」2007年2月6日)。

もとはといえば受信料の未払いが増えているのは、NHK自身が引き起こした問題に起因している。職員による制作費流用など数々の不祥事、自民党幹部の政治介入を受けての番組改変と続き、視聴者の信頼が揺らぎ未払いが急増した。NHKはまずこれらの問題を真剣に受け止め、改めるべきである。昨年来NHKは、未払い者に督促状を発行し、一部は裁判に訴えている。受信料制度への理解を求めるより、支払い義務化を先取りするような動きではないか(「しんぶん赤旗」同上)。

NHKの相次ぐ不祥事で激増した受信料不払い問題に乗じて、政府が矢継ぎ早に受信料問題へ干渉を強めているのに、肝心のNHKは後手に回り、毅然と異議を申し立てることもなく、NHKがこのまま政府の言いなりになり、政府改正案への明確な見解を示すこともしないで、視聴者への説明を怠れば、公共放送としての当事者能力を問われ、国民の信頼を失うだけである。自ら当然に解決を図らなければならない課題を政府の法律改正で一気に片づけようなどとNHKが考えているとすれば、政府に大きな借りを作るばかりである(桜木七郎JanJan2007/01/16)。

とりわけ重大なのは、政府がNHKへの関与を強めてきていることである。菅総務相は昨年、NHKに拉致問題での国際放送に命令を出した。それに続く受信料支払い義務化への介入である。NHKを思うままの放送局に変えようという狙いは明白である。NHK番組の一方的な改ざんが争われた裁判で東京高裁は、NHKが自民党幹部の発言を過剰に受けいれて改変したのは公共放送としての使命に反すると、つい最近、断罪したばかりである。このまま政府の言いなりでは、視聴者の受信料で維持する国民の放送が、着々と国営放送化への道へ近づいていくことになるのではないか。
国民の理解を前提に、権力に距離を置くことを行動原則とする公共放送NHKが、国民の側にかろうじて軸足を置くことができている現行の受信料制度の受信者の理解と任意性を重んじるタテマエが、「支払い義務明文化」でNHKを、権力的体質に、そして政府権力の側に、追いやるおそれはないか。その結果、「受信料制度」を基盤とするNHKと視聴者の信頼関係や、言論機関としての独立性が、脅かされることにならないか。「支払い義務明文化」「受信料値下げ」は、NHKの自立性を脅かし、まさに、角を矯めて牛を殺すことになるだろう(桜木七郎 同上)。

NHK受信料の支払い義務化を盛り込んだ放送法改定案については、かつて1966年と80年に政府によって国会に提出されたが、国民の批判によって廃案になった経緯がある。こうした経過も考えると、現在の制度のもとで、NHKが国民の信頼を回復する良心的番組の制作に精を出すべきことこそ、国民の意思といってよい。
NHKは政府の放送法改悪の狙いを受け入れるのではなく、国民の立場に立ち、公共放送として受信料制度を維持した道をすすむべきである。国民は決して、政府の「NHK値下げセール」(桜木七郎 同上)に騙されないことだ。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-02-12 19:26:08
ここの動画サイト面白いよ!http://www.ganzis.jp
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