プロメテウスの政治経済コラム

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最低時給1000円への賃金引き上げによる日本経済への波及効果について

2007-02-27 18:14:22 | 政治経済
日本共産党の志位和夫委員長は13日の衆院予算委員会の総括質疑で安倍首相に対し、「最低賃金で働いても貧困にならない社会を目標にし、最低賃金を労働者の平均的所得の五割にすることを目標に掲げるべきだ」と質した。これに対し安倍首相は「中小企業を中心に事業経営が圧迫され、雇用が失われる可能性が高い」と答弁、最低賃金の抜本的な引き上げに抵抗した。

「ふつう労働の賃金がどのようなものであるかは、どこでも、利害関心がけっして同じでないこれら両当事者のあいだで通常結ばれる契約による。職人はできるかぎり多く手にいれることを、親方はできるかぎり少なく与えることを望む。・・・ しかし通常のすべてのばあいに、・・・このような紛争のすべてにおいて、親方たちははるかに長くもちこたえることができる。雇用されずに一週間生きていける職人は多くない・・・。 親方たちは、いつどこでも、一種の暗黙の、しかし恒常的かつ一様の団結を結んで、労働の賃金を実際の率以上に上昇させまいとしている。・・・たしかに、われわれはこのような団結をめったに耳にしないが、それというのも、だれもが耳にしないほどそれが通常の、ものごとの自然の状態といっていいものだからである。」(アダム・スミス(『国富論』第1編第8章「労働の賃金について」――日本総研調査部 経済・社会政策研究センター 主席研究員 新美一正「わが国の最低賃金制度についての一考察-最低賃金は厳格な運用が必要-」Japan Research Review 2002年11月号より孫引き)。
労働市場における売り手(労働者)と買い手(企業)が対等の立場にあるとして、賃金率によって雇用の弾力性を議論するのは、現実を知らない机上の空論である。労働者は雇用されなければ生活できないが、使用者はいつでも労働者を雇うことができる。労働者は生きて行くために、できる限り雇用されるように行動しなければならず、強制されずとも資本家の言い値で労働供給を差し出さざるを得ない。もともと労働市場には需要供給曲線など存在しないのだ。だからこそ、どこの資本主義国でも国が賃金の最低額を定め、使用者はすべての働く者に対し、その金額以上の賃金を支払わなければならないとして、労働条件の下支えをしているのである。

「時給1000円」は、生計費の最低水準ラインの年収二百万円に相当する時間給である。労働総研の今回の試算は、厚労省の2006年賃金構造基本調査などをもとに計算。時給1000円になれば、パート(一日6時間、月20日勤務)の77・9%(374万人)が月額2・5万円、一般労働者(一日8時間、月22日勤務)の13・6%(309万人)が2・9万円、それぞれ賃金が増加。賃金総額は年間2兆1856億円増加。このうち1兆3230億円が消費支出に回り、これが各産業に波及(2000年産業連関表使用)して、国内生産額を2兆6425億円拡大する(「しんぶん赤旗」同上)。
低所得者は、一般に収入増を消費に回す傾向が強い。低所得者の賃金増は中小・零細企業が多い食料、繊維、自動車などの分野で消費増が予想され、中小企業を潤すことにもなる。ただ、最賃引き上げによるコスト増が中小企業の経営を圧迫することも予想される。大企業の下請け単価の引き上げ指導など中小企業の経営支援を同時に実施する必要がある(大企業のぼろ儲けを少し吐き出させる)。

取引単価の引き上げとともに最低賃金の引き上げをおこなうことは消費購買力を高め、国民経済の健全な発展に寄与する国民的大義を持っている。貧困からの脱出をかけて最低「時給1000円」を実現する世論を結集しよう。

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